正月はいつも暇だ。 公園でバスケの練習でもしたいと思っても、母から 「今日一日ぐらい家にいなさい!!」 と言われてしまっては、強くは出ることが出来ない。 ましてや今日は自分の誕生日で、おせち料理をちょっとコーディネイト(母談)した料理を出され、これを全部食べきるまでは絶対外へは出るな───そう厳命が下っているのだ。 「ただでさえ食が細いんだから、休みの時ぐらい栄養をつけてもらいますからね!! でなきゃその大きな図体を維持できるわけ、ないでしょ?」 という親心をつきつけられては、さしもの彼も強くは出られないのである。 舟を漕ぎそうになりながらも半分ぐらいの料理を腹に収め、さらに眠たくなる目をこすりこすり自室へ行こうと廊下を歩いていた、ちょうどその時である。 プルルルルル・・・。 電話の呼び出し音が鳴り響いた。 ちょうど母親も父親も出かけていて、今家には自分しかいない。 「・・・・ちっ」 渋々電話口に出る彼ではあったが、どうせだからこのまま向こうが電話を切ってくれないか、と内心思っていたのも事実である。 結果、不機嫌極まりない声になってしまうのは否めなくて。 「・・・・もしもし」 だが、受話器から聞こえてきたのは押し殺したようなクスクス笑い。 「あー、やっぱりだ。あんたのことだから正月、家に押し込められて面白くないんじゃないかと思ってたんだ」 ───途端に意識が覚醒する。 「・・・先輩?」 「やっほ〜、流川元気? 明けましておめでとーv」 「・・・おめでとー、ゴザイマス」 明らかに言い慣れていない挨拶を返すと、相手のクスクス笑いはもっと大きくなった。 「アンタの機嫌がこれ以上悪くなってもマズいからね。用件だけ伝えて電話終わらせるから、安心しなさいな」 「・・・用件?」 「そ。アンタ今日、誕生日なんでしょ?」 そして聞こえてくるのは、定番の「ハッピーバースデー」の歌声。 彼は心が和むのを感じながら、歌の最後まで何の邪魔も挟まず耳をすませて聞いていた。 「・・・たったこれだけのために、電話かけて来たんスか?」 「あら、迷惑だった?」 ちっともそうとは思っていない口調に、つい失笑がもれる。 「イエ。アリガトウゴザイマス」 ───思わず棒読みの言葉になってしまったが、感謝の気持ちは伝わったようで。 「どういたしまして。じゃ流川、また部活で会いましょ」 かけて来た時と同じくらい唐突に、彼女からの電話は静かに切れた。 ───もう少し声を聞いていたかったかな・・・。 彼は、口下手な自分の性分を、ほんの少しだけ後悔した。 ≪終≫ ************ *確か流川の誕生日が1月1日だったって思ったんですけど? とりあえず誕生日、おめでとーv
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