ちゃんちゃん☆のショート創作

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銀英伝コメディーパロ ひとりで・・・できるもん!(笑)
2001年11月14日(水)

※・・・えーと、とある幼児番組を見ているうちに、出来心でこんなの書いちゃいました。「はさむ」も「包む」も良く似てる、ってことで。
フレデリカFanの方、お許し下さいませ(汗)。

****************

銀英伝コメディーパロ ひとりで・・・できるもん!(笑)


 フレデリカ・グリーンヒル・ヤンは料理が不得意だった。
 長年の夢であった、ヤン・ウェンリーとの結婚生活に入るに辺り、その苦手方面を何とかしようとしてみたのだが、努力は不発に終わった。
 仕方がなくフレデリカは、他人に食べさせても差し障りのないであろう、だが「料理」と言うにはあまりにささやかな食べ物を、食卓の上に乗せることにしたのである。
 それはサンドイッチだったり、クレープだったり、ハンバーガーだったりしたわけだが、夫曰く「はさむものばかりだね」と言う指摘は密かに、彼女の矜持に火をつけた。
 握り拳も力強く、彼女は決意する。
「このままではいけないわ。何とかしないと・・・」

 ・・・が、救いの手は思いも寄らないところから現われた。キャゼルヌの娘・シャロット・フィリスである。
 ヤン家とキャゼルヌ家の交流は同盟敗北後も、逃亡者たりえてダヤン・ハーン基地にとどまっている間も、途絶えることはない。そのためヤン夫妻は時々、キャゼルヌ夫人の夕餉をごちそうになったのだが、その夜は少々、趣が違った。
 ヤンがメルカッツらと戦隊の調整に出かけていて、フレデリカだけが夕食に呼ばれた夜、シャルロットが無邪気な笑みと共に差し出してきたのである。

「フレデリカお姉ちゃま、これシャルロットが作ったの。食べてみて」
 それは、コンビーフとマッシュポテトを中身につめたロールキャベツで、シャルロットがほぼ自分だけで料理したのだと言う。
「自分だけでって・・・危なくないの?」
「ううん、あのね、電子レンジだけで作ることが出来るの。このTV番組で言っていた通りにしただけ」
 そう言って見せてくれたのは、フレデリカには見慣れない幼児番組「ひとりで●きるもん」(笑)。
 遥か昔に、ヤンの御先祖の出身国近くで放映されていて好評を博したものを、リメイクした番組らしい。今週は「包む」のテーマに沿って、子供にも手軽に作ることが出来る料理を紹介していた。

「包む・・・か。そうだわ、はさむことと包むことは、そんなに違いはないはず。だったら私にも、何とか取得できるはずだわっ!」
 やる気という炎をメラメラと燃え上がらせて、フレデリカは会心の笑みを浮かべた。



 数時間後・・・。
「フレデリカ、そんなに気にしないで。それより火傷はしなかったかい?」
「でもあなた、せっかくの食材をこんなに無駄にしちゃって・・・」
 しょげ返ったフレデリカの傍らには、消し炭と化したキャベツと、ガチガチに硬くなってしまったマッシュポテトが、鎮座していたのだった。


 ───それから幾度もの失敗を経験した後、フレデリカは主婦としての立場に固執することをやめ、デスクワークの達人としての自分のありように、力を発揮することを心に決めたらしい。
 彼女の料理の腕前が上がったかどうかは、歴史は何も告げてはいない。

 銀河の歴史がまた1ページ・・・なんちゃって☆

《終》


************
イヤ、だから出来心なんですってば☆
たまたま今週の「ひとりでできるもん!」が包む料理だったもんだから・・・(汗)


そして始まる日々(5)JOJO 広瀬康一
2001年11月12日(月)

そして始まる日々(5)JOJO 広瀬康一

*とりあえず、最終章です。
 こう言ったことを考えつつイタリアへ旅立った康一ですけど、ジョルノに出会ってしまったことははっきり言って、トラブル以外の何者でもなかったでしょうねえ。
 ・・・・ちゃんと日本に帰りつけたんだろうなあ・・・原作じゃ何も書いてないらしいけど(汗)。今度はその辺り、勝手に妄想してみようかなあ。
 ちなみに。康一の公式設定での恋人である由花子ちゃんが出なかったのは、ちゃんちゃん☆ の主義です(きっぱし!)。どうにも納得できないんですよお、康一に誰でもない、由花子って彼女がいるってのはあ!(涙)

 ところで、あちこちのJOJOのHPを見て回った時、気になることが。
「何で承太郎は仗助じゃなく、康一にイタリア行きを頼んだんだ?」って如何にも不本意っぽく、如何にも訳が分かりませんって感じで書かれていたサイトさんが、どうしてこうも多いんでしょうか?
 仗助の性格やスタンド能力云々でなく、承太郎が「ジョースター一族とは何の関係もない」康一に頼まざるを得なかったのは、ちゃんとした深刻な理由があったはずなんですけどねえ。確かに、文字としては全然説明されていないんですけど。
 原作の第3部をきちんと最初から読めよ、そう言いたくなります(汗)。
********************

 杜王グランドホテルでの会合があった、翌日の放課後。
 僕は岸部露伴先生の家へと向かっていた。手には杜王町でもおいしいって評判の、ケーキを持って。
 いきなり訪ねてもよくないと思ったから、露伴先生には昨日のうちにあらかじめ電話で連絡をしておいた。「露伴先生を見込んで、ぜひとも頼みたいことがあるんですけど」って。
 露伴先生はそれは機嫌よさそうな声で、即座に訪問を了承してくれたんだけど、その後ろで「先生、明日は締め切りが・・・」とか何とか言う声が聞こえたのは・・・気のせいじゃないよね?
 ・・・後で、何か手伝えることがあったら手伝った方がいいかもしれないなあ・・・。


 露伴先生の家に到着して、早速チャイムを鳴らそうとしたら、いきなりドアが開いた。
「し、失礼しました〜!!」
 ほとんど転がるように出てきたのは、サラリーマン風の男の人。
 あれ? この声って、昨日かけた電話で聞き覚えがあるような・・・。
 からくもドアの直撃だけは避けて、彼が大慌てで走り去っていくのをただ呆然として見ていた僕に、静かな声がかけられたのはその時。
「やあ、康一くん。待ってたよ」

 すこーし不機嫌そうな顔を、無理やり我慢しているような笑みの露伴先生が、登場だ。
 何だかこういう顔って、変に迫力があって恐いんだけど。
「・・・こんにちわ。一体、何があったんですか? 今の人は?」
「たいしたことはない。連載雑誌の担当者だよ。締め切り間際だからって、僕が君に招こうとするのを止めようとしたから、ちょっとね」
「何ですかああ! その『ちょっと』って言うのはあ!」
 いきなり胃が痛くなるようなこと、してほしくないんだけど。今度から僕まで、担当の人に恨まれかねないじゃないか。
「・・・どうも誤解があるようだね。大したことはやっていないよ。向こう1か月分の原稿を全部カンペキに仕上げて、丁重に叩き出しただけだから」
 ───一応平和的な解決を見たみたいで、僕は心底ホッとした。
 しかし・・・1か月分を一晩で仕上げるなんて・・・さぞやあの担当者の人、驚いただろうなあ。それともビビリまくったかも。僕も一度見たことあるんだけど、仕事中の露伴先生って、鬼気迫るものがあるんだよねえ・・・。

「それで、一体僕にどんな用があって来たんだい? 君の方からご指名なんて、珍しいじゃないか。僕としては嬉しいけどね」
 場所は変わって、家の中。露伴先生は持ってきたケーキをお皿に盛り、香りのいい紅茶を僕に煎れてくれながら、早速切り出してくる。
「えーと、それはですね・・・」
 何と話を始めようかと考えていたら、何時の間にか彼もソファーの向かい側に腰掛け、おもむろに言った。
「ま、大体の事情は分かってるよ。昨日君は承太郎さんに杜王グランドホテルへ呼び出されて、何事かを頼まれたんだろう? 『それ』関連だってね」
「え、ええ、そうなんですけど、何で・・・・」
「『何で分かったのか』かい? 昨日、あのくそったれ仗助が、あほの億泰にぶつぶつ愚痴っていたのを、たまたま聞いただけだよ」
 露伴先生・・・相変わらず口が悪いなあ・・・☆

「僕としては、あいつの不機嫌そうな顔を見ているだけで溜飲が落ちたけどね。・・・しかし、それで把握したのは、承太郎さんの用件とやらは意外に平和的で、しかし一般人にはできそうにない秘密裏なことだってことだ。彼の性格上、危ない用件なら他人に任せるよりは、自分でやるだろうし。そして、あのくそったれ仗助の『クレイジーダイヤモンド』の能力は確かに脅威だが、髪型のことをけなされるとキレるような性格では、行く先々でトラブルを起こしかねない。それに比べれば、君の穏やかな性格なら、どこへ行っても通用しそうだ。『エコーズ』なら、射程距離も長いからね。さすがは僕の親友だ、と言うところだろう」

 これって・・・僕のことを褒めてるのか、仗助くんのことをけなしたいのか、あるいは露伴先生自身が自慢したいのかよく分からないよ。・・・全部、かも知れないけど。
「だが、さすがの僕も分かったのはそこまでだ。僕としては直接君から正確な情報を得て、一刻も早く知的好奇心を満足させたくて、うずうずしてたんだ。そしてそれに、どのような形で僕が関わるかも、ね。───康一くん、僕に頼みたいことと言うのはどんなことなんだい?」
 ああ・・・また変にわくわくしちゃってるよ、露伴先生。
 僕が先生に頼みたいことって、彼の言う『知的好奇心』を満足させてくれるのかなあ?

 とはいえ、仕方がないから僕は昨日承太郎さんに頼まれたことを全部、露伴先生に話すことにした。もちろん他言無用だと、前置きした上でだけど。
 こうやって露伴先生に説明することは、実は承太郎さんにも了承済みだ。下手に隠し事をしたらヒネて協力してくれないか、ものすごい彼の行動力で余計なことまで探られるのが、明白だったから。ちなみに、今日こうやって持ってきたケーキの代金も、承太郎さんもちだったりするんだよね。
 露伴先生は珍しく、最後まで口を挟まないで僕の話を聞き終えた。
「・・・なるほど。つまり君は、僕の『ヘブンズドア』で、イタリア近辺の言語を理解できるようにしてほしい、ということか」
 だけど、僕が用件を切り出す前にさっさと結論を出してしまうのは、いつもの露伴先生らしいよね。
 推理は見事あたってるけど、さ。
「しかし・・・承太郎さんもどうせなら、僕に頼んでくれたらよかったのに。イタリアなら僕はよく旅行に行ったことがあるし、日常会話程度なら言葉も理解できるんだよ。もちろん『ヘブンズドア』に頼らなくてもね」
 ───それは初耳だ。
 でも言われてみれば部屋の本棚には、イタリアに関する本が結構ある。中には英語読みじゃ読めないタイトルの本まで。あれって、イタリア語で書かれてたりするのかな?
「もっとも、僕は他人とコミュニケーションしろ、なんて死んでも嫌だからね。・・・よく分かったよ。ほかならぬ親友の頼みだ。僕の『ヘブンズドア』で、イタリア近辺の言葉を理解できるようにしてあげよう」
 ・・・何だかあっさり引き下がったなあ、と思ったのは考えすぎだろうか??

 でも、せっかく引き受けてくれたんだから、早速書いてもらった方が良いに決まってる。
「じゃあ、お願いします」
 再度頼むと露伴先生は小さく頷いて、紅茶のカップをテーブルに置いた僕に向かって、スタンド能力を発揮させた。

「ヘブンズ・ドア!!」

 『ピンクダークの少年』に似た少年が、目の前に現われたかと思うと同時に、すうっ、っと意識が薄れ。
 ───気がついたら僕は、ソファーで寝そべっているところを露伴先生に真上から覗き込まれていた。
「終わったよ。とりあえず、イタリア語の理解度を試してみるかい?」
 言って彼が差し出したのは、さっき見た『英語じゃないタイトルの』本。
 露伴先生のスタンド能力を疑うわけじゃないけど、何となく恐る恐ると言う感じで僕は本に目を落とす。
「う・・・うわあ・・・」
 読める。さっきまで分からなかった文字が、ちゃんと理解できるよ。露伴先生の『ヘブンズドア』ってすごい!
「それはイタリア語がかなり分かる人間じゃないと、読みこなせない原書なんだ。どうやら成功したようだね」
「ありがとうございます!!」
 僕は本を露伴先生に返す。

 その本を戸棚に戻してから、露伴先生は僕の方を振り向いたかと思うとにんまり、って感じで笑いかけて来た。
「さて。僕のスタンド能力を利用させてやったんだから、君にも僕に協力する義務が出来ってわけだな」
 ・・・そら来た。
 ケーキを持ってきたぐらいで、露伴先生が納得するわけがないなって分かってはいたけど、ちょっと腰が引けちゃうな。だって、何を頼まれるか、予想が出来ないんだもの。
「別に大したことじゃあないさ。これを読んでもらえないか、って思ってね」
 そう言って差し出されたのは、1束の書類らしきもの。僕は拍子抜けしたような気分になって、何のためらいもなく目を通したんだけど。
 ───その「書類」の正体に気づいた時、僕は正直言ってドキドキ言ってる自分の心臓を静めることに躍起にならずにはいられなくなったんだ。
 何でって・・・。

「露伴先生・・・これ『ピンクダークの少年』の原稿ですよね・・・?」
「ああ」
「だけど僕・・・この話まだ、雑誌で読んだことないんですけど・・・」
「そうだろうね。担当者にもまだ渡してない、2ヶ月先に掲載予定の原稿だから」
「ちょっと待てええっ! そんな大切なもの、ポンポン他人に見せていいんですかあああっ!?」

 ───つまり、僕が見せられたのは門外不出、担当者さえ読んだことがない超・最新作なわけで。
 極端な話、日本中・・・いや世界中どこを探してもこのストーリー展開を知っているのは原作者である露伴先生と僕だけ、ってことになるんだ。
 ・・・とんでもないもの、見せてくれちゃってるよこの人・・・☆

「他人じゃあないだろう。君は僕の親友なわけだし。それに君の性格上、他人にバラすとも思えないしね」
「そ、そりゃあ誰にも話すつもりはないですけどお・・・」
「・・・まあめったにあるわけじゃないが、僕の原稿に誤字脱字があってはならないからね。君にはそのためのチェックをしてもらいたいんだ」
 露伴先生のそのもっともらしい言い草が、だけどその時僕の心にすとん、と落ちた。


 ・・・誤字脱字、だって?
 これ以上ってないほどの完璧主義のはずの、露伴先生が?
 そりゃあ露伴先生だって人間だから、失敗ぐらいあるだろうけど・・・そう簡単に他人に対して、そう言う「弱み」にもなりかねないものを、この人が見せたがるだろうか? まあそれでも僕に対しては、「親友」呼ばわりするだけあって他人に対するよりは、色々な表情を見せてるみたいなんだけどさ・・・。
 そんな先生が、言葉を変えれば「屈辱的」とも思えることを僕に頼んで、何の得があるって言うんだろう? 以前、生原稿を盗み読み「させられた」時は、単に「ヘブンズ・ドア」で僕らのデーターを読みたかったからだったけど。
 まあ僕にとっては、すごく「ラッキー♪」って気はするけどさ・・・。

 ───その時、ふいっと僕の心によぎった1つの考え。
「露伴先生・・・ひょっとして僕の昨日の行動、読んだんですか?」
 無言。
 だけどそれは、肯定と同意語で。
「・・・僕が変に悩んでて、承太郎さん相手に愚痴ったの、知ってたってわけですか・・・」
「別に、読もうとして読んだわけじゃないよ。つい目に入ったって、ただそれだけなんだ。僕が意識して、君のプライバシーを読むはずないだろ? 君がそういう行為が大嫌いだってことは、僕が一番良く知ってるんだから」
 珍しくおたおたと言い訳をする露伴先生に、僕はやっと納得できた。

 誰よりも早く未発表の生原稿を、チェックと偽って僕に見せてくれようとしたその理由。
 ちょっとだけくすぐったい気がするけど・・・露伴先生なりに、僕を励ましてくれようとした、ってことなんじゃないだろうか。
 露伴先生の性格云々はともかくも僕が、彼のマンガの大ファンだってことを知っていたから。そして、それ以外での励まし方を、きっと知らないだろうから・・・。
 ・・・まさかとは思うけどこの原稿、僕が「ヘブンズ・ドア」をかけられて意識を取り戻すまでのわずかな間に、描き上げたとか言わないよね? だけど、『向こう1か月分の原稿を全部カンペキに仕上げて』って言ってたしなあ。


「・・・じゃ、そういうことにしておいて・・・でもいいのかなあ? 間田さんが聞いたら、羨ましがること請け合いだと思うけど」
 それ以上考えるのが恐くて、この話をこんな言い方で打ち切ったら、露伴先生はいつもの自信満々な表情に戻ってのたまった。
「羨ましがる奴は勝手に羨ましがらせておくがいいさ。康一くんは仮にもこの僕の親友なんだ、このくらいの特権は当然だよ」
 特権ねえ・・・いつもは災難の方が、多いように思えるけど。
 けれど、彼独特の照れ隠しだって何となく分かるから、僕は苦笑とも、照れ笑いともつかない表情をするのが、精一杯だった。


 その後。
 露伴先生は以前海外旅行へ行った時の思い出を、あれこれと話してくれた。
 ちょっと眉つばな「奇妙な物語」もあったけど、暖かい紅茶の入ったカップを片手に聞く話は、結構面白かった。
「まあ君みたいな現代っ子が楽しむなら、フランスのディズニーランド辺りがお似合いだろう」ってコメントを付け加えて。
 こうして聞いてると、露伴先生は人と話をするのが嫌いとは、そんなに思えない。どちらかと言うと喋りたがりなような気がする。仲が悪いって自他共に認めてる仗助くんとかを、それこそけちょんけちょんに言い負かすのが好きみたいだし。
 人付き合いが嫌いって理由で、ずっと1人でいた露伴先生。そんな彼の聞き役になってる僕は、そういう意味では役に立ってるのかな? 
 ・・・ちょっとだけ、そんなことを考えた。



「よいしょっと」
 誰にともなく、僕はそう気合いを入れて、大きな旅行用カバンを持ち上げて搭乗ロビーへと急ぐ。
 僕がこうしてイタリアへ行くことで、何か今までとは違った出会いが待っていたりするんだろうか?
 僕でなければ解決できない事件があったり、するんだろうか?(こっちは出来れば遠慮したいけど)
 とりあえず、僕は今日、イタリアへと旅立つ。期待と不安、その両方を胸の中にしまい込んで。

《終》



銀英伝パロ オーディンの空の下(1)
2001年11月05日(月)

この物語は以前、某有名サークルさんが銀英伝の小説を同人誌掲載用に募集していた時に応募しようとして・・・・・見事頓挫したものであります(汗)。まあ今にしてみれば、それで良かったような気がしますが。何せ原作中、キャラクター的には結構目立っていたにもかかわらず、同人界ではどちらかと言うとマイナーか、お笑い役に回る事の多いキャラが主役だったのですから。それに文体も合いそうにないし・・・。
こういうレンタル日記を借りたこともあり、こーなったら過去の恥は掻き捨て! とばかりに発表させて行きたいと思います。ちなみに、一応はシリアスでありますが、原作至上主義の方々に言わせれば、「パラレルワールド」と受け取られても仕方ない設定になっております。何せ、同盟の人間と帝国軍人が、オーディンで知り合うと言う無茶な話ですから・・・(苦笑)。
***********************

 少年は、父が好きだった。
 遠い戦地から戻って来た彼を出迎えた時、満面の笑顔と共にそのたくましい両腕で抱きしめられるのが、たまらなく大好きだったのだ・・・。


銀英伝パロ オーディンの空の下(1)



「・・・いいですか、閣下。何度も言いましたが、お相手は怪我人なのですから、あまり気を使わせることはございませんよう」
 病院へ向かう車中、心配性の副官にそう囁かれながら、男は不機嫌な表情を隠しきれずにいた。それも、珍しく黙りこんで。
 同僚が戦地で思わぬ大怪我をし、このオーディンに帰って来たのである。皇帝陛下から帯びた任務は何とか果たし終えはしたが、彼は2度と取り戻せないものを失ってしまった。軍人としては決して避けることの出来ない事態ではあるものの、将官としての日々が永くなってしまった今では、その認識を忘れそうになる───そんな矢先での事件だったのだ。

「くれぐれも、『自分が志願したのを横取りしたバチが当たった』などと言う事はおっしゃられますな」
「・・・ほう、その手があったか」
 やっと話し出したかと思うと、その口調には常になく毒が混ざっている。
「閣下・・・」
「心配するな。これでも俺はデリカシーはある方だ。間違っても『今は義手の良いのが出回ってるから腕の1本や2本、なくしたところで気に病むな』とは言わんさ」
 まるで、見舞いに行く前に言いたいことを全部吐き出してしまおう、と言わんばかりの暴言だ。
 だが男の部下達はそれらの言葉が、決して相手を傷つけるために発せられたものだとは思っていない。変に気を使った方がかえって、相手を追い詰める事があるのだ。彼なりに、怪我人のことを慮っているのだと、ここに同乗している幕僚たちには分かっている。
 ちなみに、男が先ほどから黙っていたのは、怪我をした同僚に思いをはせていたからでも、かけるべき言葉を考えていたからでも、決してない。
「どうも、病院って奴は性に合わん・・・」
 銀河帝国でも並ぶ者がないくらい戦火の中に身を投じて来ていながら、1度として大怪我に見舞われたことがない男。その彼が、まさか病院嫌いとは。いや、注射嫌いか。
 ・・・あまりにそぐわぬ事実に、つい微笑ましさを感じずにはいられない、幕僚たちであった。


 車は何の支障もなく、軍病院に到着した。
 静かに正面玄関前につけられた車内から運転手がすばやく走り出て、主たちのためにドアを開ける。
 次々に車外へ降りる部下達を尻目に、男はまだ車内に留まっていた。少しでも病院にいる時間を短くしよう、という子供っぽさの現われなのだったのだが・・・。
「?」
 その時、彼の目に不可解な風景が映る。
 1人の男が、泣き叫ぶ少年を抱きかかえて走り去ったような気がしたのだ。
「病院嫌いはどこでも変わらんようだな・・・」
 そう呟いて、ふと首を傾げる。これが病院へ駈け込んだと言うのなら、別におかしくも何ともない。だが男は、病院から外へと走って行ったのである。
 それに───なにより彼には、泣いていた少年の方に見覚えがあったから。
 一体何が起きているのか、と怪訝に思っていた時だった。

「き、貴様何をする!?」
「悪いね、緊急事態なんだよ」
 外で部下達がもめている声がしたかと思うと、いきなりドアから1人の男が飛び込んで来た。
 緑色の目をした、なかなか精悍な顔つきのその男は、だが見覚えのない人物である。着ているのがラフなジャンパーと言う辺り、どうやら軍人でもなさそうだ。
「ありゃ、まだ人がいたのか」
 そして、彼が口にしたのは明らかに帝国語ではなかった。
「・・・悪いけど、あんたを降ろしてる暇はないんだ。そのまま乗っててくれ」
 言うが早いか男はドアを中から閉めると、いきなり車を急発進させてしまったのである。
「閣下ーー!」
 残された部下が悲痛な悲鳴を上げるのを、だが男は他人事のように愉快な気持ちで見送った。


 言わば車ごと埒されたにもかかわらず、軍人である男は動じる事なく相手に尋ねた。
「・・・何なんだお前は。軍人の車をカージャックとは、あまり利口なやり口じゃないぞ」
 それも、仮にも上級大将の車をだ。鋭利目的の誘拐か、単に車を拝借したかっただけなのかは知らないが、このままではただで済むはずもない。
 もっとも、それほどの地位の者があっさり車を奪われたとなると、いい笑い者になるのも否めないが。
「用が済めばすぐに返すって。別にあんた、急ぎの用でもなかったようだし」
 道路を猛スピードで走らせながら、緑色の目をした青年はニヤリと笑う。どうやら男が降りるのに躊躇していた事は、お見通しらしい。
「急ぎ? 一体何があったって言うんだ?」
「・・・知り合いの坊主が、誘拐されちまったんだよ。だから後を追ってる真っ最中さ」
 その言葉に、男はやっと思い出した。先ほど見かけた少年が、誰の息子であったかを。
「じゃあさっきのは、やっぱりワーレンの息子か!?」
 それからの男の行動は迅速だった。手元にあった電話で、どこかへと連絡をとり始める。
「・・・憲兵本部か? 緊急事態だ、お前らのボスを呼べ。今すぐだ。・・・そうだ、ケスラーをだ、とっととしろ!」


 ───緑色の目をした青年の表情に、困惑の色が浮かぶ。
 手っ取り早く子供を取り戻そうと、この車を掻っ攫ったまでは良かったが、乗っていた軍人はどうやらとんでもない人物のようだ。帝国軍の上級大将であるはずのワーレンとケスラー憲兵長官を、こともあろうに呼び捨てにするとは、普通ありえない。よほど肝が据わっているか、それとも彼らと同等の地位を手中にしているかの、どちらかでない限り。
 ものすごく、イヤな予感がする・・・。
 一見、粗野で乱暴な下士官風のこの男の正体を計りかねて───ローエングラム新王朝になってからの新しい軍服の判別法を彼はまだ知らなかったから───青年は結局、直接聞くことにした。
「聞き忘れていたんだが・・・あんた何者なんだ?」
「ビッテンフェルト。フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトだ。お前こそ何者なんだ。何でワーレンの息子を知っている?」


 ビッテンフェルト上級大将・・・!? 良くも悪くも猛将と称えられる、臆病とは無縁の、ローエングラム新王朝の重鎮中の重鎮───!?

「・・・俺はフェザーン商人・イワン・マリネスクと言う者だ・・・」
 冷静を装ってそう応えた青年であったが、心の中は困惑の嵐が吹きあれている。
 何故なら、彼の本名はイワン・マリネスクなどというものではなく。
 書類上では戦死扱いとなっている同盟軍元中佐オリビエ・ポプランこそが、それであったからだ。


≪続≫


Darling(5)SD・流×彩?
2001年11月02日(金)

 1ヶ月まともにあいてしまいましたねえ(汗)。お久しぶりの更新です。少しはラブコメみたいな展開にしたいんですけど、さてどんなことになるやら。
 ところで、先日「流川と承太郎は無言実行型」と書きましたが、他にも共通点がありましたね、この2人。
「女性にはミョーに冷たいところ」・・・まあ、必要最低限の礼儀は知ってるみたいですが、承太郎なんて「実の娘に対する態度がなっちゃいねえ」ってどこかのHPで読んだ記憶があるし(第5部から読んでないんですってば☆)、流川の女嫌いっぽいところは、言うまでもないです。でも、そーゆーところが逆にトキメキを感じる、とか言ったら・・・もはや重症ですな(汗)。

********************

 試合も後半戦に差し掛かる頃には、既に富ヶ岡中の勝利は確定的になっていた。
 それほどの点数差を稼ぎ出したスーパールーキー・流川楓。彼のプレイの1つ1つが、自分たちの視線を釘付けにしてしまっていることを、観客はみな気づいている。


「とはいえ・・・流川の奴、前半戦から比べればパワーが落ちたわね。それに、ディフェンスが今1つってところもあるし」
 スコアブックをつけながら、彩子は後輩の弱点をすばやく分析している。
 しかし、それはたいしたことではない。弱点は人間、誰にでもあることだし、既に完成され尽くしてしまった選手ほど、見ていて痛々しいものはない。
 流川は違う。これからの特訓如何で、どれだけでも伸びる可能性がある選手だ。
「ま、それには、あいつが自分の弱点を素直に認めるかどうか、にかかってるみたいだけど」
 自分の弱さを認めたがらず、無茶な練習をした挙句、故障したり挫折した選手が、一体何人いることか。
 流川には、そうはなってほしくないものだけれど・・・。彩子がそう、呟いた時である。

「メンバーチェンジ!」

 主審の声に、我に返る。
 チェンジアップを済ませた選手の代わりに、フラフラな足取りでベンチへ戻って来たのは・・・。
「流川!?」
「・・・・・」
 彩子は慌てて流川に駆け寄る。そして彼が目で、ふ、と、彩子を認めるやいなや、膝からガクッと倒れ掛かる。
「危ない!」
 とっさに支えると、ずっしりとした重みを感じると共に肩の辺りで、流川の息遣いと囁きが聞こえた。
「・・・・・スミマセン・・・」
「! ああ、ああ、いいから! さっさとベンチに座る!」

 口調がぶっきらぼうになるのは、彼女らしからぬ挙動だ。が、彩子にしてみれば、流川に抱きつかれた格好になった自分を自覚するに、動揺せずにはいられないのだ。
「流川、後は俺たちに任せとけ」
 ベンチに座った流川に、二階堂がそう声をかける。
 ふ、と流川の意識がそちらへそれて、残念なような、ほっとしたような気持ちにさせられる彩子だった。

 男の子、なんだなあ・・・。
 あたしとそんなに身長とか、変わらないのに。
 手の大きさとか、肩幅とか、腕の筋肉とか全然違う・・・。
 ちょっとだけ・・・くやしいな。

 まるでバスケをやるために生まれてきたような彼の体に、少しどぎまぎしながらも、彩子は刹那、嫉妬も感ぜずにはいられない。

 ───だから尚更、この発展途上中の後輩にはこの先もずっと、伸びて行って欲しい。
 その思いが、彩子にキツイ口をきかせたのだろう。
「どうしてあんたが、交代させられたんだと思う? 流川」
 流川は即答しなかった。息を整える事で精一杯なのか、と思いきや、彼はこちらをじっと睨むように見つめ返して来ている。聞こえなかったわけではなさそうだ。
「・・・どうしてそんな分かりきった事を聞くんだ、って思ってるの?」
 何となく思い当たった考えに、頷く流川。
「だって、心の中でただ思ってることと、口に実際出してしまうって、全然違う事でしょ? 言葉にして吐き出すのって、それを自分の考えとして認めた上でないと、出来ない事じゃない。他人が聞いてるわけだしさ。・・・つまりあたしが言いたいのは、あんたが自分のプレイヤーとしての欠陥を、ちゃんと自分のこととして認めることが出来るのかしら、ってことなの」
「・・・体力が、ないってことスか」
 苦々しい流川のその口調は、常日頃彼が気にしていることの表れだろう。

「まあ、体力不足もその1つよね。でもまだまだ技術不足とか、ディフェンスがなってないとか、傍から見てると色々見えてくるものなのよ。ただ・・・今日の場合、あんた体力配分ってもの、してなかったように思えるのよね」
「?」
「・・・あんた、結構ムキになる性格でしょ?」
「!」
 何故か流川は目を見開いた。何で分かるんだ、と言いたげに。
「だってさ、向こうの3年にブロックされた時、後で自分にボールが渡ったらまたその選手に挑もうとしてたじゃない。あー言うのって、相手の思うつぼだと思うんだけど」
「・・・もう1回やれば負けねー、そう・・・思ったから・・・」
 負けず嫌いのセリフに、ついつい彩子も苦笑を誘われる。
「気持ちは分かるけどねえ。それじゃあ攻撃パターンが相手に読まれちゃうわよ。今度対戦する時にまで、リベンジはお預けにしておきなさい。必ずしも試合中に決着をつける必要は、ないと思うわ。・・・だからキャプテンも交代させたんじゃないかしら。あんたの頭を冷やすためにね」
「・・・そースか・・・」
 流川はそう応えただけだったが、多分彼の心の中にはいろいろな葛藤が入り混じっている最中なのだろう。そう思って彩子は、それ以上彼に話し掛けようとはしなかった。
 あとは、彼がどうするか、の問題なのだから。


 結局、富ヶ岡中は点差をあれ以上縮められることなく、競り勝つことができた。塚本が出場できないと分かった時は沈んでいた空気も、今は明るいものになっている。
 彼なしでも自分たちはやれるんだ───そう、自信づけられたから。
 そしてその最大の功労者は、と言うと、送迎バスの一番後ろの席で、こっくりこっくりと舟を漕いでいた。彩子の肩にもたれかけながら。

「・・・ご苦労さん」
 その屈託のない寝顔を見ているうちに、いつの間にか眠りに誘われてしまう自分を感じる彩子。

 ちょっとだけ、ね。
 またすぐに、起きるから・・・・。

 そのまま流川の肩に寄りかかるように、彩子は静かに目を閉じた。

≪続≫




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