500文字のスポーツコラム(平日更新)
密かにスポーツライターを目指す「でんちゅ」の500字コラムです。

2004年04月02日(金) テコンドー両団体トップは総退陣せよ

 テコンドーのシドニー五輪銅メダリスト・岡本依子選手のアテネ五輪派遣をめぐってゴタゴタが続いている。

 テコンドーの国内統括団体は、日本テコンドー連合(森喬伸会長)と全日本テコンドー協会(衛藤征士郎会長)に分裂している。日本オリンピック委員会(JOC)の加盟団体審査委員会は「組織を一本化しなければ選手を派遣しない」と明言していて、岡本選手は女子67キロ以上級の出場枠を獲得しているにもかかわらず、両団体に歩み寄りが見られなければ五輪に出場できない。現実に、02年の釜山アジア大会では選手の派遣が見送られている。
 JOCは両団体に対し、3月31日までに組織を一本化して総会開催や役員の選任などの加盟条件をクリアするよう求めていたが、期限内に実現しなかった。岡本選手の所属する「ルネスかなざわ」と後援会の代表が路上やインターネットで集めた署名約9万5000名分を3月29日(月)にJOCへ直接提出したが、IOCの規定に関わる問題なので「かわいそう」といった感情論でどうにかなる問題でもない。
 JOCはきのうの会見で「一次エントリー締め切りの4月28日ギリギリまで個人参加などの道を探る」としているが、望みは極めて薄い。

 スポーツの競技団体には、様々な形で資金が集まる。武道の場合であれば、段位の認定試験一つでも莫大な金が動く。組織の統一に際しては、トップ同士の感情のもつれ以上に、この「利権」の調整が大きな障害になる。
 加えて、五輪競技の統括団体にはJOCから多額の資金が支給される。日本連合の森会長は「(協会の)衛藤会長の指導力に問題がある」としているが、結局は利権を手放したくないのだ。お互い、相手に1円でもカネが流れるのが面白くないのだ。
 しかし、そうした強欲な権力者同士のエゴで、選手の夢が断たれるというのはあまりにもむごい。既に岡本選手はテレビなどで何度も涙を見せて必死の訴えをしているが、守銭奴たちの心にその声は届かない。

 テコンドーという競技の名は、この騒動で多くの人に知られるようになった。しかし、この競技を子供にやらせたいと思う親の数は確実に減っただろう。私もその一人だ。武道は礼節を身に付けるにはいいと思うが、礼節どころか人倫をさえわきまえぬトップが仕切る組織に、誰が進んで我が子を預けるものか。テコンドー両団体の醜悪な争いは、自らのクビを確実に締めているのだということに気付くべきだ。私たちが見たいのは、試合場でのクリーンな戦いであり、団体同士の泥仕合ではない。

 ともあれ、かかる不祥事を引き起こした両団体の会長および幹部は即刻総退陣し、岡本選手のアテネ五輪出場という大同のために団結するのが人の道というものだろう。さもなくば、日本中の全所属選手が両団体を一斉に脱退して、選手主導の新団体を設立するしか残された道はない。



2004年04月01日(木) オーバーエイジよりアンダーエイジ

 サッカー・ワールドカップアジア一次予選が、昨夜行なわれた。
 日本の相手はシンガポール。FIFA(国際サッカー連盟)の最新のランキングは108位で、同27位の日本から見れば明らかに格下である。日本代表には海外のクラブで活躍中の選手たちも招集されていて、アウェーでのゲームということを割り引いても大勝は間違いないとみられていた。
 ところが、試合展開は全く予想に反したものになった。序盤こそ相手ゴール前で再三決定的なチャンスを作ったが、肝心の得点を奪うことができない。ようやく34分に高原のシュートが決まって先制したが、前半はこの1点だけ。
 後半に入ると、暑さと過密スケジュールの影響からか、欧州組を中心にパタッと脚が止まる。すると63分、一瞬の隙を突かれて相手に得点を許してしまう。1対1。まさかの同点。
 このまま終れば勝ち点1。他会場では、日本と同組のライバル、オマーンがインドに大差をつけてリードし、勝ち点3を加えるのは確実だ。もはや得失点差を云々している場合ではない。
 ジリジリした展開の中、途中交代で入った藤田が待望の勝ち越しゴールを挙げる。時間は82分。ロスタイムを加えても残り15分という際どい時間帯でのこの1点で日本は辛くも勝利を収めた。勝ち点6。グループトップ「かろうじて」堅持。
 試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、ピッチ上の選手にもベンチのジーコ監督にも笑顔は一切なし。表情は険しい。それにしてもなぜ、こんな綱渡りの展開になってしまったのか。

 一人の選手にその責を負わせるのはナンセンスだということを承知の上であえて言う。「柳沢よ、キミは本当にフォワードなのか」。
 圧倒的に押していた前半、柳沢が放ったシュートはわずか3本。うち、枠に飛んだのはわずか1本。その1本を見て、私は柳沢には完全に見切りをつけた。
 前半30分すぎ、ゴール左前わずか数メートル。こぼれ球を拾った中田からのパスは、柳沢の足元にピンポイント。並のFWなら、角度さえ変えてダイレクトではたいてやれば易々とゴールできた球だ。ところが…、あろうことか柳沢はこの絶好の位置でワントラップしてしまい、時間的余裕をプレゼントされた相手DFにシュートを弾き返されてしまった。
 後半、柳沢のシュートはゼロ。打てるチャンスがなかったわけではないが、ペナルティエリア正面でも彼はパスを選択していた。
 23分、鈴木と交代。いいところなし。彼に関して言えば、海外から召集されてコンディションが良くなかったというレベルの問題じゃない。FWとしてどこか根本的に間違っている。サッカーは得点を相手より1点でも多く取るゲーム。そのことを、点取り屋である彼は知らないのだ、きっと。
 柳沢にはサッカーの技術はあるのかもしれない。でも「上手」であることと、頼りになるということは違う。どんなに不恰好なゴールでも、得点を決めてくれるヤツの方が優秀なFWだ。いいサッカーなんてしなくても、点を決めてくれれば何も言わない。ディフェンスに殆ど興味を示さず、前線にベタ張りの「世界一のFW」ロナウドが、ここ一番で決めてくれるみたいに。

 柳沢より、もっとガツガツとゴールに向かうFWがこの国にはきっといる。もしこれまでの代表経験者に適任者がいないなら、若い世代から引っ張って来たっていい。オリンピック代表チームにオーバーエイジを入れる入れないといった議論をする前に、A代表の決定力不足の権化のような柳沢に代えて、アンダーエイジの選手投入を考えた方がよっぽど建設的だと私は思う。相手ゴール前で日本のチャンスの芽をことごとく摘んでいく柳沢は、もはやFWではなく敵のDFに他ならない。


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