買い物行くかとドアを開けたら、
でっかい虫が居た。
ワームじゃなくてインセクトなので叫ばなかったが、甲虫や蟋蟀のような、一寸硬めな質感の虫だ。 びっくりしたので、家の中にデジカメを取りに戻り、写真を撮った。
スーパーに行ったら、入り口前にもいた。 先ほど玄関で観掛けたのと、寸分違わぬ同じ虫が。 鳩山さんのムクドリだかヒヨドリだかの話を思い出したが、済州島と東京よりは距離が近いので、この虫の方が同一個体の可能性は高いだろう。 しかし、その隣りにも同じ虫がいたので、多分別の個体だと思われる。 つまり、1日で3匹に遭遇か……。 うわ、大きい!と私は思ったのだが、スーパーを出入りする客は、誰も騒がなかった。 という事は、この土地では、この虫はこの大きさが普通なのか。 山が近い訳でもないのだが、やはり田舎だから大きいのか。
後で主人に写真を見せたら、カミキリムシだと言われた。 カミキリなら子供の頃に見た事あるけれど、もっと小さかったなあ。 本当にカミキリ?と思ってネットで調べてみると、シロスジカミキリムシというのが出て来た。 ざっと説明を読んだところ、日本の中では最大種で、南方系に生息するのだとか……南方!? ここは北方だとばかり思っていたが、地球温暖化が進んだせいなのか? いやしかし、地元住民も驚いた様子は無かったから、昔から生息しているのかも。 というか、ここが北方であるという私の認識がそもそも間違っているのかも知れない。 だってこんなに暑いんだもん……もう引っ越したい(早)。
暑い。 今からこんなに暑かったら、夏はどうなるんだろう。
今住んでいる所は、鉄筋マンション。 引っ越した当時から、外気との温度差が大きいとは思っていた。 一歩外に出ると肌寒いが、部屋の中は暖房無しでも暖かく、これは灯油代が浮くのではないかと期待された。 しかしその反面、夏は冷房無しでは生きられないだろうとも思った。 その予想は当たり、今年は既に冷房を稼動させている。 暑いと言えば西日だが、我が家は西日の影響を受けない。 日光が入るは東側の窓で、朝日がじりじりと照り付ける。 1日の始まりからして暑いのだ。 少しでも涼しい風を入れようと窓を開けると、朝の7時前だと言うのに、年寄りの話し声がする。 隣りの病院が繁盛しているため、開院前からジジババが列を成し、通院仲間同士で談笑しているのだ。 エンジンを掛けっ放しにして車内で待たれるよりはマシだが、話し声が煩くて二度寝も出来ない。 夜は夜で、冷気を求めて窓を開けると、風に乗ってほんのりとドブの匂いが運ばれて来る。 風向きによっては平気なのだろうが、そんな事は殆ど無く、ものの1分もしないうちに、たまらず窓を閉めてしまった。 駅前通りのドブの匂いは引っ越した当時から酷いと思っていたが、匂いが上にあがって来るとはげんなり。 市には是非、豪華市報に金を掛けるより、ドブ掃除に税金を回して貰いたいのだが。 そして最近知ったのだが、越して来たこの土地、
県内で1番暑いんだって……!
主人の同僚によると、 「県内で唯一残暑を感じられる場所」 なのだそうで。 知っていたら絶対来なかったよ。 というか、越して来て3箇月だが、既に脱出したい(涙)。 このところは、ネットで以前住んでいた都市のマンション情報ばっかり見ている。 東京だったら「死んだらまた生まれて、人生3回ぐらい繰り返さないと買えないぐらいの価格」(友人談)だけれど、田舎なので手の届きそうな範囲の中古マンションが売りに出ているのだ。 姉歯事件のせいで以前は断然一戸建て派だったが、梅雨時のヤスデで発狂しかけたため、マンション派に宗旨替えしたのだ。 ヤスデは壁を伝って5階にも這って来るらしいが、それでも1階ほど酷くは無いだろう。 高い所なら小さな羽虫はやって来ないし、マンションなら庭の手入れも必要無いし。 という訳で、只今気温と共に、マンション購入熱が高まっている。
でもまあ実際、長距離通勤も別居も事も出来ないだろうから、サイトを見ては溜息を吐くしかないんだけれどさ。 ああもうこんな所嫌(涙)。
わうわうで、アメリカの番組「プロジェクト・ランウェイ」というのをやっていた。 主人と私が見たのは、第5シーズン。 デザイナー達の勝ち抜き、というか、篩い落とし番組で、最後に残った者が優勝という仕組みになっている。 1度も最優秀を獲得出来なかったデザイナー(の卵?)がいて、彼がプロのデザイナーに酷評される場面があった。 「これは酷い。まるで布のウンコだ!」 それは確かにそんな感じで、色とりどりの布をごちゃっと縫い付けた、素人目にも一寸どうなのこれは……という作品であった。 彼はその回で姿を消したが、寧ろそこまで残ったのが凄いと思ってみていた。 噛ませ犬だったのだろうな。
ところで、先日聴いたツィマーマンのショパンが余りに感動的だったので、折角電子ピアノを居間の隣りに移動させた事だし、自分でも楽譜をさらってみた。 勿論、目で音符を追ってゆっくり弾くだけで精一杯である。 嗚呼でも舟歌はいいねえ、この曲が弾けたらなあ……と思いつつさらっていると、主人が帰宅した。 「あっシオンがピアノ弾いてる〜。そうだ、これ弾いてみてよ!」 と彼が本棚から持って来た楽譜は、
プロコフィエフ作曲ピアノソナタ第9番Op.103
……プロコかよう。 聴いた事すらないんですけれど。(あったとしても覚えていない。興味無いんだもん) 楽譜を捲ってみると、音符がスカスカで一見簡単そうだが、実際弾いてみると、全く予想外の所に音が飛ぶので難しい。 次の音の予測がつかず、自分が押さえている鍵盤が果たして正しいのか、耳だけではまるで判断がつかない。 1頁目で匙を投げた。 「なんじゃこりゃ! 弾いていてちっとも楽しくないよ。 まるで音のウンコだ!」 私がそう言って楽譜を突き返すと、彼はショックを受けた顔で、 「ウンコだなんて、酷い。綺麗な曲なのに……」 としょげていた。 ごめん、貴方の大好きなプロコの事をそんな風に言っちゃって。 でも私には現代曲なんて、どれもこれもウンコにしか思えん。
最近、物への執着を断ち、捨ててスッキリする事が、一部の人達の間で持て囃されているらしい。 要らない物を片付けるのはいい事だと思うが、何でもかんでも捨てちゃって、後で困らないのだろうか。
昨日、手芸用品を捨ててスッキリした!というブログを見てしまった。 何故か読んだこちらがズッシリ重くなった。 欲しくて買った筈の物なのに、要らなくなったら捨てちゃうの? まだ使える物をそのまま捨てるなんて、勿体無い。 物って、ただじゃないんだよ。 それが出来るまでの間に、色んな人の手を通っているんだよ。 幼い頃から貧乏家庭で、物を大切にしなさいと言われ続けて育った私には、その神経が理解出来ない。 しかも、その人が捨てたというのは、そこそこ価値のある物ばかり。 それが無駄に捨てられたかと思うと、心が痛くなる。 捨てるぐらいなら、私が買い取りたかったよ。
考えてみた。 私は、好きに物を買えるその人が羨ましいのか? 多分、私が宝籤長者(成金とも言う)で左団扇だったとしても、その行為には気持ちが沈んだだろう。 つまり私は、生まれながらの貧乏性という訳か……一寸悲しくなった。
まあ、面識も無い他人の話だから、私には関係無いのだけれど。 その人が、断捨離する事で心が軽くなったというのなら、それで良かったのだろう。 一方シーソーのように私の心は重くなり、そう思えるようになるまで数日を要した訳だが。 それでも、形にならずにごみに埋もれてしまった物達の事を思うと、私の心は痛むのだ。 棘はまだ抜けていないらしい。
同窓会のお知らせが来た。 「お誘い合わせの上、是非ご参加下さい」と定型文が書いてある。 会費が結構高いのでどうしようかなと思ったが、折角だから行っておいでよと主人が言ってくれた。
しかし問題がひとつ。 それは煙草である。 都会の会場ならいざ知らず、田舎の同窓会だ。 場内禁煙は余り期待出来ない。 この日記で何度も書いているように、私は煙草の匂いが嫌いだ。 昔は平気だったが、今あの匂いの中に1時間居れば、確実に頭痛を起こす。 そして2時間以上寝込む。 いっそ欠席に○をつけて投函しようかとも思ったが、万が一禁煙という可能性も無くは無い。 というのも、数年前に妹の大学の謝恩会に親代わりとして出席した時に(因みに両親は健在。単に遠出が面倒だった模様…)、会場内は禁煙だったからである。ブラボー! 妹の大学だって、首都圏からは遠く離れた田舎の大学である。 なので、希望を捨て切れなかった訳だ。
そこで、同窓会窓口に連絡してみた。 電話の相手は同学年の元男子生徒。現在は母校の職員をやっているらしい。 いきなり、名前を間違えられた。下も上も。 同級生じゃないから仕方ないか。 (最近は、同級じゃなくても同級生と言う人がいるが、あれは紛らわしいから止めて欲しい。同級ってのは同じ学級即ちクラスメイトという事である) そして窓口曰く、 「会場内全面禁煙という縛りを設けるのは、一寸難しいかな……」 と。 えええ、今時そんな喫煙者天国にするとか、病気持ちに配慮が足りねーだろ、と思いつつ、 「ああそう、じゃあ行かない。欠席という事で宜しく」 と答えて電話を切った。 会いたい友達がいない訳じゃないけれど、1万円近い参加費を支払ってまで頭痛になりに行くほどマゾじゃないんで。
主人の用事に付き合って、3月まで住んでいた都市に行って来た。 昼前に出掛けて、途中で昼食を摂って、運転は主人に任せて目的地までずっと寝ていた私。 おかしいな、朝は10時まで寝ていた筈なのに、まだ眠いなんて。
用事を済ませて、帰る前に、よく行っていたスーパーに立ち寄った。 商品券が期限切れ寸前だったので、使いたかったのだ。たった100円分だけれど! ここは飲み物が安いので、それだけ買って帰ろうと思っていたのに、案の定うろうろとあちこち見回る主人。 そして氷菓子売り場の前で立ち止まる。 「アイス食べたいなー」 「でもおうちに着くまでに融けちゃうよ。アイスはまた今度ね」 さっさと帰るぞオーラを出すものの、ごねる主人。 「車の中で食べるからいいの」 「……わかった、じゃあ小さいの1つだけね」 などとやり取りしていると、少し先の乳製品売り場の商品が眼に入った。 「あ、見て。ほら」 私は指差して、主人の注意を促した。 「何?」 「あの容器、貴方が欲しがっていたヨーグルトじゃない?」 それは、昨年の忘年会だか今年の送別会だかの会場で、初めて食べて大層美味しかったと主人が絶賛したヨーグルトであった。 早速そちらの売り場に飛んで確認する主人。 「ね、そうだよね?」 と声を掛けると、じとーっとした目でこちらを見て、明らかに拗ねていた……。 「どうして、僕が引っ越しちゃってから商品入れるんだよ……タイミング悪過ぎだろ」 「さあねえ。意地悪されてるんじゃないのー?」 その後、主人がどうしてもと言うので、ヨーグルトも買ったのだった。
帰宅していそいそとヨーグルトを冷蔵庫に入れる主人。 「シオン、また来月病院に行くんだよね? 帰りにこれも買って来てくれるといいなあ♪」 あーハイハイ、買って来てあげますよ。 でもさ、地元のスーパーに一言要望入れてみるのもいいかと思うよ。一縷の望みを掛けてさ。
主人とショッピング・センターに行った。 似合う服を買って貰い、上機嫌でトイレから出て来ると、主人がお店の前で手招きした。 「シオン、こっちこっち!」 と言うのでなあに?と駆け寄ると、 「これ、聴いてご覧」 と店先のラジカセを指差した。 ?と思って耳を寄せると、男の声がなにやらぼそぼそと歌っている。
「シオンの歌に似ているでしょ。親近感湧いた?」 私の歌というのは、これまで私が作って主人に披露した自作自演ソングである。 3曲あるが、そのうちの1つに似ているというのだ。 前奏もシメも「ずんちゃずんちゃ」で済ませてしまうところや、緩いテンポ感まで。 確かに似ている。 「似ているけれど、親近感は湧かない。寧ろ、悔しい〜!」 「何が悔しいんだよ……」 「だって! 私の歌はこうやって、一般に披露する機会は無いんだもん! これだけ似ているのに!」 と私が悔しがると、主人は明らかに引いていた。 「でもシオン、似ているけれど、『麗しのももんちょ』の方が歌として成立しているよ。シオンの歌は精々8小節だけれど、ももんちょは16小節。これは曲として最低限必要な長さだ。つまり、ロドリゲス谷の方が、シオンより才能があるという事」 「何よ! 貴方は私の歌が気に入らないって言うの!? そこまで私の歌を貶すなんて酷過ぎる! 愛が無いわねっ」 私が気に入って作った主人のための歌を酷評され、一転、険悪ムードになってしまったのであった。
先日、クリスチャン・ツィマーマン(クリスティアン・ツィメルマン)のリサイタルを聴いて来た。 今年はショパン・イヤーという事もあり、「次はいつあるかわかりません!」(※後述)のオール・ショパン・プログラムだったので、ずっと前から楽しみにしていたのだ。 しかし転勤で演奏会場から遠い所に引っ越してしまったため、予定が立たずに券を買うのが出遅れたものの、悪くない席を買う事が出来た。 当日は早目に仕事を切り上げて来る事を主人に厳命し、遠路2人で会場へゴー。 中に入って吃驚、昨年は半分も入っていなかったのに、今年はほぼ満員御礼……チケット取れて良かったー! のだめ効果か、それとも単にショパンが昨年のシマノフスキーよりメジャーなだけか判らないが、こんなに人が入るとは。 昨年より人が多くて良かったと思うと同時に、これだけ人がいるとマナーの悪いのもいるんだろうなという不安も。 私の隣りは、年配のご婦人であったが、膝の上にスーパーのレジ袋を抱えていた。 少し身動きを取るだけでも、袋がわしゃわしゃ言うのだ。 これは、確実に鑑賞の妨げになる。 数年前、稲川淳二の怪談ナイトに行った時にも、女性客が持っていたスーパー袋が煩くて仕方なかった。 開演前に何とかしてくれるといいなあと思って静観していたが、チャイムが鳴ってもそのままだったので、私の堪忍袋の緒が切れた。 ツィマーマンを舞台に迎える拍手に紛れて、私はご婦人の耳元で、低い声で囁いた。 「音がしますから、その袋、椅子の下にお置きになった方が宜しいですよ」 ご婦人が素直にその通りにしてくれたので、ストレス無く演奏に集中する事が出来た。
演奏は、どれも素晴らしかった。 しょっぱなのノクターンから、ガンガン飛ばす飛ばす。 2曲目はソナタ2番、3楽章の「葬送」は超低速。レントを通り越していたが、あれぐらいが葬式っぽくていいのかも。 中間部の繰り返しの所で躊躇したように見えたのは、もしかして、リピート回数を忘れてしまったのだろうか。 スケルツォ2番では、あまりの美しさに中間部で泣きそうになった。 前半も後半も3連符が全く重ならない、濁らない正確さ。最後は怒涛のように駆け抜けて、脱線するんじゃないかと怖くなったけれど。 主人は、ムソルグスキーの展覧会の絵かと思うぐらい色彩的なショパンだった、と驚いていた。彼にとってショパンは白黒の世界らしいので。 拍手も凄かった。えっもう演奏会終わり?と一瞬思ってしまったほど。
休憩を挟んで後半は、ソナタ3番と舟歌。 どちらも大好きな曲で、演奏が終わってしまうのが惜しいぐらいだった。 ずっと聴いていたい。 今年もアンコールは無かったけれど、満足。 至福のひと時を過ごす事が出来て、付き合ってくれた主人にも感謝。 嗚呼もう本当に幸せ。聴きに来て良かった!
ロビーでCDやDVDの販売をしていたけれど、どれもこれも昔の演奏なのよね……。 これは是非、新しい録音を出して貰わないと!! お願いしますよ、ツィマーマン様。ライブも勿論いいけれど、そう毎度毎度聴きに来れる訳じゃないし、これは人類のためにも、後世に残さないと! という訳で、新しいCD発売を切に願うのであった。 出たら絶対買いますよ、私は。
※註釈「次はいつあるかわかりません!」 美輪明宏音楽会のCMで最後に流れていた、地元のTV局アナウンサーによる決め台詞。 この言い方だと、単に次回開催未定と言うより、美輪さんもそろそろお迎えでごんすというようにも取れてしまうので、これってどうなの?と主人と顔を見合わせて爆笑してしまった。
浄水器が欲しいなと思ったのは、今までのように飲み水が手に入らなくなったからである。 以前住んでいた所も、今の住まいも、水道水が美味しくない。 ここの水道に至っては、引っ越して暫くは錆が混じっていた。 それも使ううちに出なくなったが、やはり不味い。 それでも以前の所なら、近所のスーパーで水を汲めた。 専用ボトルを買えば、あとは無料で飲料水を汲めるシステムである。 しかしここには、同じ系列のスーパーが無い。 同じようなシステムを取っている店はあるが、ボトルの種類が違うのだ。 しかも形が格好悪い。 あれを冷蔵庫で保管するのは、無駄に場所を取るのではないかと思って、手が出せない。 それで浄水器を買いたいと思った次第である。
インターネット上の地図で探してみたら、バイパスの向こうに、3月まで通っていたスーパーと同じ店名があった。 少し遠いが、あの店は安く売っているから、水以外にも行く価値はある。 よーし、行くぞ!とボトルを持って車で出掛けた。 バイパスを通り過ぎて、かなり通り過ぎて……無いよ? おかしいな、見逃したかな、と車をUターンさせて引き返す。 確か地図ではこの辺りにあった筈だが……またバイパスに戻ってしまった。 まさか、潰れたのか?と思ってまた引き返すと、今度こそその店らしきものがあった。 しかし、どう見ても、スーパーにしては小さい。 よくよく見ると、
「ラーメン○○」
と、古い屋根に書いてあった……。 同名のラーメン屋かよ!! 確認するまでも無く、水は汲めないだろう。
私は空のボトルを持って、泣く泣く家に戻ったのであった。 浄水器、やっぱり買おうかな……また出費かよ。
今日の晩御飯は豚しゃぶ! 野菜を洗って切る。メインは水菜。 豚肉はお湯の中に泳がせて、白くなったら引き揚げる。 肉の作業が終わったので、さて野菜を盛り付けようと笊に目を遣ると、
笊の縁に青虫がもぞもぞ。
いやああああああ 私の叫び声を聞いて、主人が駆け付けた。 「どうした?」 「ざ、笊にむしむしが……うう」 「ああ、これはちょうちょになる青虫だね。外に放してやるよ?」 こくこくと頷く私。勿論涙目である。 先に水菜をボウルに移して、虫付きの笊を持って主人は出て行った。
「外に捨てて来たよ。無駄な殺生をせずに、いい事したねシオン」 「だって、仮令屍骸でも、次のごみの日まで虫と一緒に過ごすなんて嫌なんだもん。私の買った野菜について来るなんて許せん。お外で鳥の餌になっちゃえばいいのに!」 「……折角外に放して来たんだから、無事な成長を祈ってやろうよう」 嗚呼でも、庖丁で真っ二つに切らなくて良かった! もしそうだったら、きっと水菜と一緒に食べちゃっていただろう。 生のまま。 「う……」 あとは盛り付けるだけだった筈の水菜を見た。 一応ちゃんと水洗いしたのに、青虫はそれだけでは取れなかったのだ。 2匹目や、1匹目の糞が着いていないとは言い切れない。 水洗いでは不充分だ。煮沸消毒しかない! 肉を茹でたお湯を沸かし直し、灰汁を掬って水菜を投入した。 火が通り過ぎないうちに引き揚げ、水で冷やして盛り付けると、ぺったりとして当初のボリュームがなくなってしまった。 でもいいの。消毒したから。
結婚前はしゃぶしゃぶと言えば、牛肉だったな。 豚しゃぶがあるなんて、大学に入るまで知らなかったし。 どんだけ贅沢な暮らししてたんだ?と主人には言われるが、暮らしは質素だったぞ。 愚妹に至っては、貧乏で大学に行かせて貰えるか心配していたらしいし。 なんかずれてんのかね、うちの実家って。
父の日、母の日、敬老の日……。 私が子供の頃は幼稚園や小学校で、「お父さんの絵を描きましょう」「お母さんの絵を(以下同文)」というのはあったけれど、「お祖父さん、お祖母さんの(以下同文)」は無かったように思う。 大体、離れて暮らしているから、顔なんてよく覚えていないし。 更に言えば、近所のスーパーマーケットで園児の絵を展示なんていうのも無かった。 何年前からか、父の日母の日敬老の日の1、2週間前から、スーパー・マーケットの壁に、名前入りで園児達の絵を貼り付けて展示するようになった。 今時は、個人情報がどうのと言う割りに、うちの子の素晴らしい絵を見て!上手でしょ?という親が増えてるいるのだろうか。 こんなの貼り付けるなんて、園もスーパーも大変だな。 正直興味無いんだけれど、他所の子供の絵なんて、大体同じようなもんだし。
しかし暇潰しにはなる。 主人と買い物に行って、買い忘れを買って来るのを待っている間、私は絵の前に立つ。 私が見るのは絵ではない、子供達の名前である。 就学前の子供でも自分の名前を見つけられるよう、平仮名で書いてあるのだ。 それを、頭の中で組み替える。 例えば、
はとやまくにお→お国は富山
といった感じで。 「○○しおり」「○○ゆいか」と、双子か姉妹らしい同姓の名前が並んでいたので、名前だけで並び替えてみた。
しおりゆいか→おしりかゆい
……これは酷い。親は知らずに付けたのか。 しかし今までで1番酷かったのは、こんのたまきちゃん。
こんのたまき→キンタマの子
ぶははは、ひでえ〜と1人でこっそりウケていた。 戻って来た主人に報告すると、その発想は無かったという目で見られた。 「シオンはそうやって、クラスメイトを苛めていたんだな」 「しないよ! だって名前は本人のせいじゃないし」 私は寧ろ、いじめられっ子だったけれどな。 他の子供達とは毛色が違うから。
妹の職場に泥棒が入ったらしい。
その時妹は残業中だったが、いつもいる筈のその部屋にはおらず、別の部屋にいたらしい。 その話を聞いて、私が言った台詞は次の通りだった。 「どうしてそこにいなかったの。アンタがいれば抑止力になって、何も盗られずに済んだかも知れないのに。あわよくば、泥棒を捕まえる事だって出来たかも知れないじゃん!」 それを聞いて、ごにょごにょ言う妹。 「えっ……でも職場の人達は皆、『泥棒と鉢合わせしなくて良かったね。襲われて怪我でもしてたら大変だったよ』って言ってくれたよ」 ハッ。 そうか、普通はそっちを心配するのか。 「良かったね、皆優しくて」 「ウン」
主人に訊いてみた。 「斯々然々で、私って、もしかして人でなし?」 「まあそうかな。でもその話はあまり外でしない方がいいよ。普通の人はドン引きするだろうから」 そうか、世間ではドン引きされるほどの事なのか。 主人がむっつり押し黙ってしまったので、また訊いてみた。 「ね、怒ったの?」 「ううん」 「もしかして、今ので私の事嫌いになった?」 「ううん、シオンがそういう人だって事は、もう判っているから大丈夫」 そうか、ならいいや。 じゃあ私の事は人でなしって呼んでもいいよ。略してヒトデで。
木の芽時はとうに過ぎたが、そんな話を。
知り合いの近所に、不審者が出たらしい。 というか、近所の住人が不審者。 それも夕方ではなく、朝。 普通は下校時間を狙う事例が多いと思うが、その変態は中高生の登校時間帯を狙って、空き地で待ち構えていた。 肌色のパンツ一丁で。 身に着けているとは言え肌色なので、ぱっと見は素っ裸。 通報で駆けつけた警官は、 「また貴方ですか。いい加減にして下さい」 とうんざりした顔で言ったらしい。常連さんなのかよ! そして変態の主張は以下の通り。 「自分の土地で日光浴しても何が悪い!」 ……その空き地は、確かにその変態の所有であった。 他人の土地だったら不法侵入で逮捕できるものの、正真正銘本人の土地なので、被害生徒がトラウマになったと言って民事訴訟を起こすのなら兎も角、こういう時の警察は無力である。 結局、注意だけで終わったそうで、その後も同じ事が繰り返されるだけなのだろう。 学校側としても、「件の土地に面した道を、通学路から外す」という非常に消極的な手段を取るしか無かったと言う。
その話を聞いて、私が思ったのは、 「すげーな変態、そんな事のために早起きするとは、やるじゃん」 であった。 早起き嫌いな私には、到底無理である。 「でもさ、見せたくて見せてんでしょ。そうだ、見物に行こうよ! カメラ持って行くから連れて行ってくれ」 と言ったら断られたが。ちぇっ。 しかしイマドキの子供なら、動画機能付きの携帯電話ぐらい持っているだろうに、何やってんだか。 ムービー録って、動画サイトに投稿したらいいのに! 逆切れして変態が殴りかかって来たら、それこそ傷害で逮捕出来るじゃん★
引っ越して間も無い4月のある日、年配の女性が訪問して来た。 なんでもその人は総務省の遣いで、家計消費調査とやらをやるので、協力して欲しいとの事だった。 5月分の出費を教えて欲しいから、レシート捨てないでおいて下さいねと言われ、紙と封筒を渡されたのだった。
というのを前日になって思い出した。 というか、郵便受けに「回収に来ましたがお留守でしたので、明日の朝9時に伺います」とのメモが入っていたのだった。 慌ててレシートをかき集める。 家計簿をつけるために取っておいたのだが、引越しのごたごたと引越し疲れとその他諸々で、レシートばかりが溜まっていたのだ。 いいですよと受け取ったものの、面倒臭いしブッチしちゃおうかなあ〜と思って調べてみたら、これ、拒否したら罰せられるのね? なんだよ畜生、コンピューターで当たったからってタダでこんな事させられて、謝礼も出ないとか馬鹿らし過ぎ! 税金遣ってこんな調査やる意味あるの? ったく政治家も役人も馬鹿ばっかり! 私に大統領やらせろよ、歳出抑えてやんよ。戦争になるかも知れないが。
と毒づきながら、何とか纏め上げた。 途中、説明には「税金は除く」と書いてあるが、消費税とガソリン税はどうするんだ!?と気付いて、慌てて問合せ先に電話したり。 係員も把握していなかったようで、電話口で待たされたけれど、消費税とガソリン税は除外しなくてもいいらしい。 我が家の家計簿は消費税込価格で付ける習慣があるので、今更除外と言われても困るんだけれどね。 で、合計したら、凄い事になっていた。
5月分の支出:55万円
うわあ……1箇月の収入を軽く超えちゃっているよ(汗)。 黄金週間の帰省費用やら、引越し後の家具の買い替えやらがあったので、大変な事になっとる。 毎月この調子だと破産するが、一過性のものだと信じたい。 本当の我が家は、もっとしみったれてるのよー!>総務省
妹から電話があった。 7月の連休辺りで休みを取れるから、皆で温泉に行きたいんだと。 去年は両親と3人で行ったらしい。 「どうして私を仲間外れにしたのよ!」 と私が怒ったら、妹は 「だってお姉ちゃん、クソ暑いのに温泉なんて嫌だって言ってたから……」 とボソボソ返答した。 ああもう記憶が薄いが、そう言えばそんな事言ったかも。 「じゃあ今年はお姉ちゃんも行こうよ! お金は私が出すから」 とお大尽発言キター。 一応姉として遠慮発言をすると、 「いいよ、去年のお父さんお母さんの旅費も私が出したんだ。だって夏だし、私の誕生日だし、一緒にお祝いして欲しいし」 「一寸待て。そんな自分の誕生日パーティーを自分でお金を出して祝って貰うような真似って、何だか虚しくないか」 「う……でもいいの! 私が行きたいからいいの!」 そうか、そこまで言うならお姉ちゃんは止めはしないぞ。 「で、お姉ちゃん、お宿の予約してえ〜」 とくねくねした声を出すので、自分でやれと言ったら、 「だってえ、忙しいんだもん……それに、お姉ちゃん、こういうの上手でしょ。お願い〜☆」 お前はそういうお願いが上手だよな……まあ旅費がそっち持ちなら、手配ぐらいはやってやってもいいか。 という訳で、連休は温泉に決定。
主人を置いて行くのも気が引けたので、一応予定を訊いてみた。 「という訳で温泉に行くんだけれど、貴方も一緒に如何?」 「その辺りだと、直前にならないと予定がわからないなー。僕はいいよ。お父さん達と楽しんでおいで」 来年からはまた「連休? それって美味しいの?」な生活に戻るだろうから、今年は2人でカレンダー通りの休みを満喫しようと思っていたのに……ごめんね。 しかし主人の許可は下りたので、早速ネットでリサーチ。 実家と我が家の立地を考慮して、ルートを組み立て、良さそうなお宿をチェック。 私よりは温泉に詳しい主人にも意見を聞いてみたが、彼の好みはうちの実家とは合わないと判ったため、結局キキナガスクジラ。 だってー、主人は大きい旅館やホテルが苦手で、鄙びたを通り越して萎びた温泉宿が好きなのだが、私と実家メンバーは設備が整ってサービスも行き届いた綺麗な所が好きなのよ。 昔、主人の一押し旅館に連れて行って貰って、酷い目に遭った事があったな。 彼は味があっていいと言うが、どう見ても薄汚れた旅館で、何と言っても硫黄の匂いが凄かった。 私は茹で卵の匂いだけでお腹一杯になってしまい、折角の夕食も碌に食べられず、お腹が痛くて横になっていたっけ……。 そんな私を見て主人はしょげ返り、 「ごめんね、こんな所に連れて来て。シオンは駄目なんだね、僕はこういう所、好きなんだけれど……もうここには来られないんだろうなあ」 と、本人はそういうつもりではないのかも知れないが、結局私が悪いのか?と思わせるような言い方をするのがムカつく。と今思い出して書いていたら気が付いた。
まあ今回は主人抜きで、好みの合う実家メンバーで行くからいいか。 2箇所で泊まる事にしたので、それぞれ2つずつ候補の宿を挙げ、どちらがいいか実家に訊いてみたら、父がある旅館について「この宿は良かったぞ」と言うので、1泊はそこに決定。 何だか高級そうなお宿なんだけれど、お父さん行った事あるんだ、すげー!と妹と吃驚した。流石、いい所行ってんな……。 お値段だけでなく、評判も良いので、今度貴方も行こうね、と主人に言うと、 「立派過ぎるなあ……僕は鄙びた温泉宿の方がいいなあ」 あーハイハイ。 貴方は通を気取って喘息の出そうな安宿にでも行くといいよ。但しおひとりでどうぞ。
亀田製菓に、サラダホープというお菓子がある。 うちの主人はこれが大好きなのだが、現在では新潟県内でしか売られていないと言う。 同業他社の類似品は出回っているのだが、スーパーで買って食べる度に、 「胡麻が邪魔なんだよなあ」 と毎回ぼやかれるのが、いい加減うざくなって来た。 そんなに食べたいなら、新潟在住の親戚に頼んで送って貰う?と訊いたら、そこまでするほどの事ではないと言う。 なのに類似品を食べては、胡麻が……とまたぼやく。
そうだ、ネットで売ってないかな?と思い、探してみたらあったよ! 早速、主人に内緒で注文した。 ふふっ、家に現物があるのを見たら驚くぞー♪とわくわくして到着を待っていると、宅配便が届くより先に、何故か主人がこう言った。 「シオン、サラダホープ注文してくれたの!? 有難うね!」 えっ……何故それを?と訊くと、 「楽天からメールが届いてたよ☆」 と。 どうやら、主人のIDで注文していたらしい……しまったああああ これじゃあサプライズにならないじゃん! 私の間抜け!
翌日、無事に現物が届いた。
ご当地限定品がネットで買えるなんて、便利な時代になったものねえ。 「ね、開けてもいい?」 と目をキラキラさせながら訊く主人。可愛いのう。 「どうぞー、貴方のですから。でもカッターで開けてね。ガムテープが散らかるのは嫌だから」 開封して、サラダホープを胸に抱く主人。 「有難うシオン……嬉しいよ。でも、技のこだ割りまで入っているのは何故?」 「ああ、それはね、送料無料になるように調整するため」 「ふうん……全部サラダホープでも良かったのにな」 「私が食べたかったの! 送料無料なら、スーパーで買うより安かったんだもん」 という訳で、暫くお菓子は買わずに済みそう。
月に2回、広報が来る。 発行回数は昨年度まで住んでいた自治体と同じだが、所変われば品変わるというやつか、色々と違う。 まず、配布方法。 以前の所は役員がポスティングしてくれたので楽だったが、ここだと回覧板形式で、自分で1部取って次へ回すというやり方。 我が家はどん詰まりなので、その「次に回す」が面倒臭い。 世帯数少ないんだから、ポスティングしてくれたら有難いのだが、仕方が無い。
次に、サイズが違う。 前の所はA3版だった(かな?)のに、今度はA4版。 これでは小さ過ぎて、ごみ袋の中敷に使えないではないか。 しかも、目を通したらただの紙ごみになってしまう物なのに、無駄に豪華。 全頁オールカラーなのだ。 人口流出の止まらない貧乏自治体なのに、なんでこんな所に無駄金遣っているのさ……。 市民の血税をこんな下らない所に遣う位なら、橋でも架けて欲しいわ。 向こう岸へ行くのに、橋が少なくて不便なのよ!
広報を裏返してみると、地元の新聞社が印刷を請け負っている模様。 色々と利権が絡んでいるのだろうか。 何でもいいけれど、住み易い街にしたいのなら、本気で何とかして欲しいわ。
我が家は基本米食だが、時々パンも食べたくなる。 食パンは余り買わない。余るからだ。 最初から味の付いた惣菜パンがいい。 甘くないのが望ましい。
そう言えば、近所にパン屋ってあるのか? 儲かっているかは兎も角、歯医者も写真屋も沢山あるのに、パン屋だけは見掛けない。 徒歩圏内じゃなくてもいいから、遠くない所にあるといいのだが。 そう話していたら、主人が職場で情報を仕入れて来てくれた。 どうやら、駅の向こうに人気のパン屋があるらしい。 歩いて行ける場所なので、散歩がてら行ってみようという事になった。
駅の反対側は、うちの周辺よりも閑散としていた。 目的のパン屋は開いていた。 夕方だったので、商品は殆ど売り切れていたが、残っていた惣菜パンを幾つか買った。 気になったのは、売られていたキャラクター・パン。 「著作権的に、あれは大丈夫なんだろうか」 帰り道、主人にそう訊いてみた。 「大丈夫だから売ってるんじゃないの?」 「いやいや、こないだ道の駅で見掛けたあみぐるミッフィーもそうだったけれど、田舎の年寄りって、知的所有権の概念が無いのよ。これじゃ中国人の事、馬鹿に出来ないわ」 と私が嘆くと、主人は馬鹿にしたように言った。 「へえ〜、シオンが知的なものに興味を示すとはねえ」 「む。これでも一応、学校で習ったんだけれど、私」 「そうか、そう言えばシオンは名門の出だったんだよね。名門中の名門、難関と言われる……」 「ヤメテ。聞いていて恥ずかしくなるから止めて」 と私が頼んでも、尚続ける。 「いやいやご謙遜を。私など身分が違い過ぎて、直に御手を取る事も出来ずに、紐を使わないと脈も取れませんから」 身分違いと言えば、イエス様の靴紐の話かと思ったら、そうではなかった。 何の事かと訊いてみたら、昔は医者と言えど帝の体に手を触れる事は叶わず、帝の腕に巻き付けた紐を通して脈を取ったのだと言う。 「へえ〜知らなかった。触っちゃ駄目なんて、インドのカーストみたいだね。直に触れなくてもわかるものなの? 脈って」 「さあどうだろ。無理なんじゃないのー?」 なるほど道理で昔の帝は早死にだった訳だ、という事で話が落ち着いた。
因みに、私の母校は別に名門でも何でもない。 昔、偶然見た番組で、とある私立高校の合格垂れ幕に「何の誰某、難関○○大学××学部合格」とでかでかと書いてあり、何故難関?と主人と大笑いしたのだった。 それ以来、主人がネタとして「名門」と言っているだけである……。
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