紫陽花が真ん丸く、風にゆらゆらと揺れて。車椅子に座る彼の、坊主頭を思い出して。ベビーカーに子どもを乗せて散歩をするように、車椅子を押して歩いた6月を、思い出して。雨が降って、傘があってもさして歩けない彼のために、新しい傘を買っていたのはこの時期だった。あのとき、私はなにを願って買ったのだろう?そんなことすら忘れてしまった毎日忙しくて、私は充実した日々を過ごしている。雨降りの日にはその傘をさして通勤する。