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2007年11月17日(土) めがね

● めがね
監督: 荻上直子
出演: 小林聡美/市川実日子/もたいまさこ/薬師丸ひろ子 


旅とは、たそがれること。

春の浅い頃、タエコはとある海辺の町の空港に降り立った。大きなトランクを一つ提げて、民宿「ハマダ」に宿をとった。観光する所もない田舎町だが、ハマダの近くには不思議な人々が集っていた。毎朝、浜辺で行われる「メルシー体操」、近所でぶらついている高校教師のハルナ、笑顔でカキ氷を振舞うサクラ。彼らのマイペースさに耐え切れないタエコは、ハマダを出て、町でもうひとつの民宿「マリン・パレス」に移ろうとするが…。

『かもめ食堂』の荻上監督が描いたのは「旅」。都会から一人旅でやってきた主人公が、海以外に何もない田舎町で、ちょっぴり奇妙な人々と交流する事で、自分を見つめていく。『バーバー吉野』など、どこにでもある町と人々を温かく見つめてきた荻上監督。本作では、「旅」をモチーフにして、本当の豊かな気持ちとは何なのかとメッセージを送っている。出演は、小林聡美、もたいまさこという、もはや荻上作品に欠かせない実力派女優に加え、本作から市川実日子、光石研、加瀬亮らが新しく迎えられた。中でも個性派、市川実日子の存在感は格別。この作品をもっと観ていたい気持ちにさせてくれる。キャスト全員、めがねというのもなかなかないかも。



2007年11月04日(日) 自虐の詩(じぎゃくのうた)

● 自虐の詩(じぎゃくのうた)
監督: 堤幸彦
出演: 中谷美紀/阿部寛/遠藤憲一/カルーセル麻紀/西田敏行 


そんなアンタを愛してる!悲劇のどん底ラブストーリー

ひなびたアパートに住むイサオと幸江。イサオは無口な乱暴者で、仕事もせずに酒とギャンブルに明け暮れる。内縁の妻の幸江がラーメン屋で働き生計を立てていた。少しでも気に入らないものが並ぶとちゃぶ台をひっくり返すイサオだが、幸江は彼を心から愛していた。幸江は幼い頃、母が家出し、父が銀行強盗で捕まったという過去があり、自分は不幸の星の下に生まれたのだと思い込んでいた。しかし、幸江が妊娠している事が分かり…。

連載開始以来、多くのファンに支持された業田良家のコミック、「自虐の詩」が映画に。監督は、「ケイゾク」、「トリック」の堤幸彦。酒飲みで無職のイサオと、ひたすら尽くす幸江の悲しくも愛しい愛の物語だ。無口で乱暴な、こんな男のどこを好きになったの?と思ってしまうが、後半でそれが逆転する。不幸を愛する自虐的な女を皮肉った作品ではなく、幸せとは何かと問いかける。主演は『嫌われ松子の一生』以来、薄幸のイメージがついた中谷美紀と、堤監督いわく、「日本一、ちゃぶ台返しがうまい男」の阿部寛。働かない、金はせびるのダメ男イサオだが、見れば見るほど愛おしくなってくる。これも、阿部寛の演技の妙だろう。


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