オーストラリアの乾いた大地を疾走するトラックの車内。 「ところで相棒、バックミラーにかかってるこの銀色のメダルは何なんだ?」 「いや、ちょっとしたお守りみたいなもんさ」 「おい、ちょっと待てよ。これ、本物の銀じゃねえか!」 「そんな目で見るなよ。昔、あるスポーツの大会でもらったのさ。そう、俺はオリンピックに出たんだ」 「オリンピック? 冗談よしてくれ。あれは選びぬかれたスポーツエリートだけが出られる大会だろうが。お前みたいに一日中トラック転がしてる奴がどうやってオリンピックに出るんだ?」 「それもそうだよな、ハハハ。」 「わははは」 しかし、遠い地平線を見る運転手の青い瞳には、ある一日の光景が焼きついていた。ありあまる資金で高級ホテルに泊り、薄ら笑いを浮かべながら会場に現れる東洋人のチーム。彼らのほとんどが一年で百万ドルを稼ぐプロの選手だという。 若いオージー達は燃えた。そして、全力で立ち向かい、ぎりぎりの勝利を掴みとったのだ。ほとんどの人間が野球というものを知らないこの国では、誰も彼らを賞賛しなかった。しかし、胸の奥で今も燃え続ける小さな誇りとともに、今日も彼はハンドルを握り続ける。
人生の中で、最も過酷な一ヶ月だった。 こんなにも過酷な仕事があるとは予想もしていなかった。 本当に辛い。この仕事やっていけるのだろうか。 ま、なんとかなるか。
今日は北谷にラーメンを食べに行こうと思ってバイクを走らせたら、途中ですげえスコールに遭って全身びしょびしょになってしまった。なんてこった。しかも雨宿りするところが道中にないし。どこまで行っても森の中。やっと見つけたバス停に体を休めると、全身ががたがた震えた。結局ラーメンは食えず。雨が止んだ後に、生暖かい風に吹かれて帰宅。明日から新しいローテが始まるので勉強しておこうと思ったのだが、もはや無理だった。
帰りに恩納から眺めた海は相変わらずどうしようもないくらい美しかった。 なんだか一か月分のストレスが吹っ飛んだ気がした。
どろどろに疲れた身体を、スコールが洗い流してくれたのだろうか。 この一ヶ月で火照りきった身体を冷やそうとニライカナイの神様は考えたのに違いない。この一ヶ月は本当に辛かった。いつか自分の糧になるだろうと信じて過ごしたが、本当にその日は来るのだろうか。
最近涙もろい。なんでだろう。
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