:::排出系列:::




俺が明日死んだって、地球は回っているんだから。





2004年05月29日(土)  新月の夜

月が見えない夜は そっと唇を噛んで
暗い部屋の常夜燈の下で
崩れかけた 本当を歌う歌ばかり聞いてる
 
どうして私が泣いているのかが
私にもずっとわからないままなのに
わからないからなのか
泣いたままぼんやりを繰り返す
 
たまに思いついたように
煙草に火を着けて苦い笑いを吐き出している
ひとりで散らせられるような気がする夜
本当すぎる音楽が悲しいのか
寂しいのかわからないのに
 
今が嘘だとすべて空想だと
否定されたときの私は
それでも泣いたりしないだろうに
あの背中に似た堅さが本当なのか
 
思い出せなくなった事実が
こんな夜にはいくつもいくつも
歯止めなく浮かび上がってきている
 
止みそうにない雨
月が見えない夜
静寂に抱かれて眠っていいと
教えてくれたあの人がもう
思い出せなくなってしまった


2004年05月28日(金)  パズルのピース

伝えたかったことがあるよ
バラバラな断片は正しい方法で組み合わせれば
必ず一つになることを
 
パズルみたいにきちんとはまってしまう
人生は無限のパズル
生き延びた分だけ新しいピースが増えて
いつかパズルを作り上げることに
嫌気が射す日もくるだろう
 
でも必ず日溜まりはそこに残ってる
だからまだパズルはずっと続いていくだろう
バラバラな断片が組み合わさり
一つの大きなあたしになるまで
パズルは広がって
 
今日もまた新しいピースを
あたしは拾ったと気づく
その夜が消えて
朝が見えるまで ずっと


2004年05月27日(木)  消去して下さい

「ひとりにしないでよ」
と泣いていたのに
気がついたらいつもあたしはひとりぼっちだった
だからあたしは強いから大丈夫と
自分にさえ嘘を吐いていた
 
どうでもよくて
泣き叫ぶ声すらもう出なくて
喉も頭も眼も全部痛くて
どこにも行けなくなったから
 
死ねばよかったと感じて
感じ続けて逃げ出そうとしてた
 
暗いから嫌い
あたしが嫌い
嘘を吐くから嫌い
あたしだから嫌い
あたしは嫌い
弱虫ごっこと強がりごっこを
繰り返して泣き真似をする
あたしが嫌い
死ねばよかった


2004年05月25日(火)  逃げ水

誰も私を見て居ないから 私は安心して此処に立って居ても良い
通りすぎる人の背中を 目で追いながら
立ち止まる一人は私だけだよ
 
誰かに気付いてほしくて ドアをノックしてた
いつか忘れてしまうなら それでも良いようなそんな気がして
それで全てを決め付けようと 思って居た
…全部嘘
 
並べられたものの中に 真実の背景はない
「真実」という言葉ですら 何処までか真実なのか
誰も 感じた事もなく「真実」といわれれば信じている
足りないのは 何?
疑いを抱く心が付き纏っている
悲しみを抱く回路が消えそうになって まだもがいているけれど
いつか消えてしまう事を私は知っている
 
寂しい人の流れ
私は今日も立ち止まって道往く人を眺めてた
新緑のあおが 右眼に痛くても 誰も立ち止まらない道を
ずっと 見ていた


2004年05月24日(月)  彼は死んだ

続けてほしいと 止めないで居てと
果てなく言葉のパレード 続く
 
約束の春を待たずに死んでしまった彼に一度だけでも逢えたらいいのに
 
茹だり始めた五月の夜が ぐらぐら揺れて消えていく
背中がないから掴みたいのだと くどい言葉が煩いだけだ
もう言葉のパレード やめてもいいかと尋ねて見ても
見えない予想図が 果てし無く大嫌い
 
約束の春はもう過ぎてしまったのに どうしてもうここには居ないの
 
嘘を吐く事を宣言してからつく嘘は 嘘じゃない
寂しい気持ちが溢れて溢れて 沸騰してしまうなら
熱を追い出さなくてはならない
この熱を 傷口から噴出させなくてはもう パレードが続かない
 
約束の春にまだ あたしは待っているのに
どれだけまっても 約束その春は訪れずに居る
 
どれだけ泣いても もう居ない
約束の春をまたずに彼は死んでしまった


2004年05月18日(火)  しゃぼんだま

「何もないけど全部ある」
あたしはそれを望んだ
弾き返される事は大方予想できていたから
期待はもっていなかったけれど 手に入りそうだと思った
 
跳ね返され 望んだものが始めて弾けた
ずっと繋がっていた二つは 二つの欠片となり離れた
泣きながらあの時切った手首に 嫉妬した
泣きながらあの時知った痛みに 嫉妬した
繋がりも欲望でさえも 泡になる
ずっと 深く沈んで消える
 
「何かあればまた…」
期待を強く持っていた
手放しで歩道橋を目隠しで桟橋を渡れそうだったから
誰にも感謝しなかったけれど 生きて行けると知っていた
 
就き帰され 繋いだ手が始めて離れた
望みに押し潰されそうだった事実が 現実となり昇る
笑い顔も泣き顔も似ていた二人は 跳ばされた
しゃぼんだまに託し始めていた願いは 飛んだ
蔑みも憎しみでさえも 泡になる
裏を返せばほら 待っていてくれるなら


2004年05月17日(月)  相対性の闇

このままでなくてもこのままでも
雨降る夜の会話 忘れることないという
逃げ出したいだけで捕まえてた
腕に噛みついた
血の味がしたけど君の顔が苦痛で歪んだけど
あたしはもうずっと顔が冷たくて鼻の奥がツンとなってて
良くわからなかった
 
泣くなよと宥める声が優しくて
泣いて
笑えという声が嬉しくて
笑った
 
逢いに会いに愛に形なんか求められなかった
壊れる事を知っていたから
あやふやで良かった
 
ぜんぶ知ってたから
うそもほんともきれいもきたないも
知っていたから


2004年05月09日(日)  思い込み衝動

耳朶を打つのは雨音
細すぎる手首・腕
不足しすぎているものが多すぎて
躓いても 立ち止まっても 振り返ってもしらんぷり
私のことを見ている人がいて
何かをノートに書き込んでいる
私は欠点を見破られたようで 悲しくなる
 
後ろめたさも隠すような事情も持たないのに
私は罪を裁かれるかのように
顔を伏せている
 
集中しているようで
その力の破片すらもう捨てている
挙動不振に見回した景色は今動き始めた
 
汗と煙草と雨の匂いがする
いつかも嗅いだことのある匂いだと
知っていてもしらんぷり
意識が断絶している
望んだわけではないのに
すでに遠く すべては離れ始めていたのだ


2004年05月05日(水)  感覚器

無理矢理 歩けない身体を引き摺って歩いていくよりも
倒れこんだまま 好きなだけ倒れたままで力を温存しよう
曇り空に雪崩れ込んだ小さな雲の欠片を
拾い集めて息吹を捧げてみよう
 
あたしのすべてが ゼロになるまで
 
あの時 どうして歩けたのだろう
蹲る事もなく 涙を流す事もなく闇へと向かって
空を見上げながら 何も感じないようにしていた
そしてそのまま 右手で囁いた
 
あたしの中身も ゼロになるまで
 
ひとつひとつの「信じる」が点と線で繋がって居て
散った花びらのように とわに美しく
 
あたしと何かを併せても ゼロのままで生きていく
 
あたしのすべてがゼロになる
瞬間を この眼で耳で身体で感覚全てで 受け止めていたい


2004年05月01日(土)  階段の下

温いシャワーを浴びせ掛けられる
もう二時間以上メールは途切れたままで 放置されたままのあたしがいる
 
指を小さく動かして何か必死に伝えたかったのに
それがなんだったのか今ではもうわからないよ
 
先を越されたわけではなく 先に行きすぎたわけでもないし
置いてけぼりにされたわけでもなく 逃げ出したわけでもないのに
気がつけば遠く離れてしまった あたしだけ残っていて
どんな声も 届かなくなってしまったから
打ちひしがれる前 思いつく限りの罵詈雑言で
相手をずっとずっとずーっと遠くへ追いやってしまえ
 
記憶喪失なんかじゃない
あたしのなかに記憶は確かなものとして存在しているのだから
 
手放しで目をつぶって螺旋階段を降りたら
誰か下で待っていてくれるだろうか
目を開くと あたしの前にはあたしが居るのではないのだろうか
 
現実と違う答えを導きたくて あやふやで
正確さを持たない答えを あたしは呟いてた


kei ☆メール ☆少女カタルシス



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