東行庵の軒下で

1995年11月11日(土) ‘95 PROGRESS tour

針を、刺してしまった。
「肝炎」という語句が頭に浮かんだのは、ワクチンを接種するのって痛いよなぁ・・などとのんきなことを考えていたときだった。
「劇症肝炎」
ワクチンを打った後も、このコトバがクモの糸のように絡みついた。「死」というものがこんなに身近に感じられたことは無かった。

コンサートの前の日に大打撃を受け、「あと何回コンサートに参加できるのだろう・・」と、{暗黒街の住人}顔負けの暗さで足を運んだ福岡サンパレス。
「Liberty Bell」で、始まったProgress tour。
頭の中で、春に見た厚生年金会館でのステージを、思い出した。宮殿を思わせるような柱と、血のように鮮やかな赤のカーテン。前回と素材は変わってないのに、ステージが広く見えた。そして、二人だったキーボードが、一人になっていた。

 部屋に居るときに聞く、昔のアルフィーの曲も、ライブで聴くと新鮮に感じる。もちろんアレンジは、随分とプログレス(?)しているが、「ナツメロには、なりたくない』という強い思いが、そこにはあるのだろう。
音楽は、演奏が終わればそこで消えてしまうが、誰かがまた演奏し始めれば、命を吹き返すことが出来るし、成長させることだって出来る。

それにしても・・・メモリアルチケットに登場しているあのモアイは、いったい何を意味しているのだろう。ステージ上には何ら、モアイに関するものはない。
・・ちがーう、それはモアイじゃないの、桜井さんだってば!!

太平洋の孤島、イースター島にある1000体をこすモアイ達。島の祖先神のモアイは、支配階級ハナウ・エエぺのシンボルであった。しかし、被支配階級の民族との争いに敗れ、支配のシンボルであったモアイは破壊されてしまったらしい。
だがこれは、推測の域を出ない。モアイの調査は、まだ本格的には行われていないのである。

 900年代から現在にいたるまでの悠久の時間を、モアイは見つめ続けてきた。
1000年にわたる、人類のProgress。信じて進んできた歴史の中に、幾度の戦争と、幾度の前進があったのだろう?こうしている今、現在、ワタシは前進しているのだろうか?グルグル同じところを、回っているだけなのだろうか。

アルフィーのステージは変わらぬ思いを抱きながら、一歩一歩、前進している。
卒業・・という形になった、キーボードの「彼」も、そうなのだろう。

平凡な生活に、どっぷりと漬からせてくれていた、看護婦という仕事が、「そんなことで、今、人生終わっても悔い無いんかっ!!」と、ワタシの尻を蹴っ飛ばした気がした。

前進するための、大きな蹴りだった。



















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