「ずっと前から好きでした」 「でも貴方は何も言ってくださらなかった」 「シャイなのです」 「嘘はこんなにお上手なのに」
「勝てない戦いはしたくなかったのです」 「何を持って勝ち負けを決めるのですか」 「古来から心臓を取られた方が負けです」 「貴方の心臓を欲しがるとでもお思い?」 「私の心臓を欲してほしいと思いました」
「だから、始めから勝負はついていたのです」 「そうね、私も悪趣味な方は嫌いではないわ」
「そう、私も、悪趣味な人が好きなのです」 「ひどい御方ね。他にほめる場所はなくて」 「何も。全てが奇跡のひとに何を言えば?」
「本当にひどい御方だこと」 「だから諦めよと?」 「諦めるなら最初から私の前に立たないでくださいな」 「諦められなかったんです。残念ながら」
「残念と言われたのは初めてです」 「怒りましたか?」 「怒りました」
「明日また会いに来てよろしいでしょうか」 「居留守を使いますのでご自由に」 「有難うございます」
ではまた明日。
決して
結ばれないと知っていたら 君を好きにならなかっただろうか?
手を伸ばせば 届く場所にいた君を 愛さずにいられただろうか?
恋も愛もない
ただただ欲したこの想いは 神よりもわがままで 誰よりも純粋だったと
認めてしまえば
忘れるより身を滅ぼすことを 選ぶのは
息をするより容易かった
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