気まぐれ日記
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昨日の早朝、車で仕事場へ向かっていた。朝5時前の道路は暗かった。が、そこに猫が寝そべってる! 引いてまう! ごっ! が、バックミラー(サイドミラー)で確認したら、猫が横切る姿が見えた。 前のナンバーのふちに毛が付いていた……もしかして、禿げ作っただけ?その後、猫は車の下をくぐっていたのか? ともかく、猫は生きているらしい。よかった……。
ルイファーナの家は本当に広かった。部屋を持ったことのないオーフにも十分な部屋を与えられる。 「洗濯とかは自分でやれよ。それと飯は作るから」 「どうも」 部屋を確保したところで、何をやるかはまだ決めていない。 「仕事? 俺は管理職だからわからないなあ」 ルイファーナは夕食を作りながら、答える。 「できれば、誰でも出来る仕事がいい。俺のできることなんか、限られているから」 ルイファーナが眉間にしわを寄せた。オーフの卑屈によるものなのか、本当に悩んでいるものなのか、まではわからないが。 「……なら、召喚職なんかどうだ?」 「召喚職?」 そんな職は聞いたことなかった。オーフの時代にはなかった。 「今、人手不足らしい。バイトでもいいからつれて来いって」 もしかして、それで俺を住まわせるってか? オーフはそう思った。 「いやだったらいいんだけど」 「わかった。やる。ここに住まわせてもらうんだ。ありがたくその仕事頂戴する」 「無理しなくてもいいんだ。誰にでも出来るけど、大変だ」 召喚職は、人間から呼び出されるための悪魔の集まりだという。人間と契約して人間の願いを聞き入れる。悪魔は、願いを聞き入れる代わりに人間に要求できる。ただし人間の命は要求できない。 「何を要求すればいいんだ?」 「ほんとにあんたは何も知らないんだ」 もしかして、この悪魔は記憶喪失にでもなっているんじゃないかとルイファーナは思った。 「例えば、幸せとか涙とか……いろいろあるよ」 「お金とかも?」 「いいけど、人間の世界のお金なんかどうするんだ?」 「そっか……」 「ともかく、こまかい話は明日。ご飯にしよ」 ルイファーナと一緒に夕食の準備をした。オーフは言われたとおりやることしか出来なかった。
エラーを起こして、今日書いた文、すべて消えてしまいました。(泣) また、書かなければならないのか?
オーフの章
オーフは見覚えのある場所にいた。扉を開けて一瞬だけ気が遠くなったことは覚えている。目を開けたらそこは自分の世界だった。 ただ、ここが昔なのか未来なのか、はたまたパラレルワールドというふざけたところかもしれない。 ぼんやりと周りを見渡してみる。のどかな公園の一角だった。 これからどーしよ……。 彼は途方にくれていた。覚悟はしていたつもりだが、実際こうなると、あのゼデューですら、いて欲しくなる。 ああ、こりゃ、言いすぎだな。 ぼんやりと歩きながらそんなことを考えていたため、前から走ってくるものに気づかなかった。 どんっ! 「……ごめん、大丈夫?」 その女の悪魔はしりもちをついた。少し衝撃が強かったのか、よたよたと立ち上がる。 「いや、こっちもぼけっとしていたから……リュレイミアちゃん!?」 「はあ?」 確かに顔はルイそっくりだった。しかし、その悪魔の髪はルイの栗色ではなく真っ黒な長い髪で後ろに束ねていた。 「いや、人違い……いや悪魔違いだった。すまん」 「俺にそっくりな悪魔がいるんだ。お目にかかりたいね」 悪魔は、くすくすと笑った。オーフもそれにつられた。 「俺は、ルイファーナ。あんたは? 初めて見る顔だけど」 「る、るいるいルイファーナ!?」 オーフは、驚いて聞き返した。 ルイファーナは、現悪魔界の総統で、ルイの祖母にあたる。その顔は、確かに総統の顔だった。その総統が幼いのであれば、ここは過去だ。 「何驚いてる?」 「ああ、いや……。俺は、オーフ」 「そう、オーフか」 今の総統は男言葉ではないが、昔の総統はそれを使い慣れているようだった。 「で、オーフ。あんた、ここで何をしているんだ?」 「俺は……その」 まさか、未来から来ましたとはいえない。時を犯していいのは奇跡だけだ。本来なら時女神でもこれは許されない。 「帰る場所、ないんだ」 「帰る場所がない?」 ルイファーナが不審そうな目を向ける。オーフは、まずいことを言ったと思った。だが、今帰る場所がないのは確かだ。 「じゃあ、うちにおいで」 「な、なんで、そうなるんだ」 「どういう事情かは知れないけど、うちは広いから好きな部屋を使ってくれ。気が済むまでいてくれても構わない」 オーフは、心からありがたいと思った。途方にくれているところへルイファーナの優しい言葉に感謝した。
毎日、これをつけるのが大変です。ええ、大変ですとも。
ドアは人数分並んでいる。 「これって、一人ずつ入れってこと?」 と、ルイ。その返事はなく、ただ黙ってドアを見つめている。 「私はこのドアに入ります」 フレクアが自分の前にあるドアを指した。 「ドアがここに入りなさいって言っているみたいなんです」 フレクアはそう言って、そのドアの前に立った。 「フレクアちゃんも?」 ブロードはなんとなく選んだドアを見た。入れと言っているようだった。 見ると、他の面々もドアの前に立っている。 霊感や超能力ではなく、ドア自体が語っているようだった。 「不思議なものだな。皆、違うドアを選んでいる」 ヘネシーは周りを見渡す。イーリスはちょうど向かいのドアの前に立っていた。 全員が顔を見合わせる。手をドアノブにかけて回す。そしてゆっくりと開けた。 「じゃあ、皆さん。お気をつけて」 カルストラの声が聞こえる。その声と共に、全員がほぼ同時に入っていった。
人気のあるゲームなのですが、やってないので最近中古屋にて購入してやってます。面白いですね……つーか、キャラが可愛すぎ! ハヤトがキノに見えてしょうがないんですが、どうしようもないですね。(苦笑)
魔王が消えて、同時に四人もその場から消えた。気づいたのは、殺風景な部屋だった。 「別の空間みたいだな」 何もない、円柱の部屋で天井はひどく高いため見えない。ドアが彼らを囲うように並んでいる。寒くもなく暑くもない、ただ、不気味な部屋だった。 「この扉に入ることで、時間の障害が受けられます。危険はないと思いますが……命の保証はちょっと無理かも」 と、カルストラの声が聞こえる。 「な、なんだとお〜」 「それと、彼らも時間障害を受けてくれる方々です」 その場が急ににぎやかになった。 「わあ、久しぶり。フレクア」 「ルイお姉ちゃんだー! 叔父様、久しぶりです」 フレクアがそこに現れた。それと、男が二人ついてくる。 「リュレイミアちゃーん」 「きゃあああっ!」 ルイに抱きついてきたオーフはフレクアの剣によって撃沈する。 「あ、ありがと。フレクアちゃん」 「この悪魔、ずっとお姉ちゃんを探していたの」 「ふうん。見たことはあるけど……忘れたわ」 とたん、オーフは復活してルイの両手を握った。 「いいんだよ、リュレイミアちゃん。だって、ちゃんと自己紹介してないもの」 「あ、そう……。で、あなたは?」 「俺、オーフ。リュレイミアちゃんと……あの、その」 「わるいけど、私。あなたと馴れ合うつもりないのよね」 オーフの手を振り解いて、ルイはもう一人の男の方を見た。バルクと挨拶を交わしている。 「ゼデュー、こちらが私の叔父です」 「あ、フレクアさんにはお世話になっています」 ゼデューは丁寧にお辞儀をする。 「あ、これは丁寧に……って、フレクア、お前が世話になってんじゃねーのか?」 「いいえ、私が世話しているようなものですわ」 「そーかあ?」 バルクは半信半疑のようである。そして、さらにその場はにぎやかになった。 「まさか、こんなことになるとは……。なんだ、お前たちもか」 「げ、色ボケ中年」 「出た、万年ナンパ男」 ブロードとフレクアが同時に言った。グオンはそれらを無視し、ルイとフレクアに向かって挨拶する。 「お久しぶりですね、フレクア王女」 「ひいっ、え、と。グ、グオンもお元気そうで……」 「それから、リュレイミア嬢。お変わりありませんね」 「まあね」 フレクアが引きつっているのに対して、ルイは軽く返してさっさと隣にいるのイーリスとヘネシーに挨拶する。 「あなたたちも、時間の傷害を受けるの?」 「……面白そうだから」 イーリスがぽつりと言う。 「だそうだ。私も興味がある」 「お姉さま、お久しぶりです」 フレクアに気づいたヘネシーが少し微笑む。 「フレクアか、元気だったか?」 「ええ」 「楽しくやっているようだな」 「うん」 フレクアとヘネシーが話しているのを見て、ルイは少しうらやましく思った。 カルストラの声がする。それぞれ、好きな扉に入り、障害を受けてください、と。 「それから、ブロードさん、ティママンから伝言です」 「なんだあいつ、もう出てきたのか? なんだよ」 「さまーみろ!って」 ブロードは、今度はもっと頑丈な空間を作って閉じ込めようと思った。
書きはじめってことで、日曜でも続き書きます。(ネタがないから)
翌日、酒場を訪れた。そこは異様な風景が広がっていた。 「な、なんじゃ、こりゃ!」 昨日の騒動がそのまま固まっていた。誰かが誰かを押しのけ、踏みつけ、我先に争う様子。悲鳴を上げているようなウェイトレスのおばさん。騒動に目を丸くした店主。それらが、一つの作品のように固まっている。 「時間が流れていない」 ルイがきっぱりと言った。 「こんなこと……。時妖精とか時女神にしか出来ないんだけど……それにしてもこんな長くは止めていないわ」 「じゃあ、どうなっておるのだ?」 「とにかく、戻して……」 「それ、無理」 と、店の奥から声がした。三人が顔を見合わせた。 「よ、おひさ」 「ブロードじゃねえか」 「久しぶりだのう」 「元気そうね」 短い言葉で挨拶を済ませ、すぐに本題に入る。 「で、無理って言うのは?」 「おいおい、せっかくの再会なのに、そっけねえの」 「そういう場合じゃないでしょ?」 ブロードはしぶしぶと説明する。説明と言うほどではない。彼も原因まではわからないからだ。 「ここまで来る時に、妖精に好かれたんだ」 彼には妖精を魅了させる能力がある。すべての妖精がそうなると言うわけではないが、彼を好いた妖精が彼に着いてくるという。そんな能力を持つものを、妖精使いという。 「時妖精だったんだ。これが。イプル」 呼ばれて出てきたのは、少女の姿をした妖精だった。きちんとした着物のような服を着ているて、おかっぱ頭をしている。 「あら、かわいい」 「お呼びですか? マスター」 「皆に挨拶してくれ」 「はーい、イプルです。よろしくお願いします」 「じゃ、また、呼ぶから」 「うん、じゃあねマスター」 イプルが消えていく。 「つまり、時妖精では戻せないことなのだな」 「そういうこった」 「だから、ここは女神じゃねえと無理なのか?」 「でも、女神だったらこんなのすぐ直すと思うんだけど……」 それが、されない理由はすぐに分かった。そこに、説明するものが現れたからだ。 「お久しぶりです。皆さん」 「やっぱり、おめえがこういうそう異常取締り係なんだろ? そのわりに遅いじゃねえか」 魔王はブロードの言うことを無視して、続ける。 「時女神が誘拐されました。そのため、時間による異常が発生しています。運命神と話し合った結果、その時間の被害をすべてあなた方にぶつけることにしました」 魔王はこの言いづらいことを早口で言った。 「どういうことだ、魔王?」 ブロードが抗議する。無理もない。被害は自分たちにかかるのだから。 「あなた方が適任だと、言うことです。ここはもう影響があるのでどうしようもないですけど」 「具体的に何が起こるのだ? 時間が止まるほかに?」 と、アニム。 「時間の進行、逆行、またはパラレルワールドに飛ばされるとか。いろいろあります」 「わかった。して、報酬は?」 「考えておきます。悪いようにしません」 「おしっ」 「いいのかよ、アニム? それほど財布の中身がまずいのか?」 「まずい」 バルクの問いにアニムは即答した。 「了承ありがとうございます。それにしても、あなたたちは運がいいです。この中にいたら一緒に止まっていましたね」 「止まってたほうが良かったかもな」 と、バルクは止まった騒動の様子を横目で見る。 「それと、あなた方のほかにもその被害を受けてくれる方々がいます。僕たちはなるべく早く、時女神を助けますので」 と、言って魔王は消えた。
2004年09月25日(土) |
今日も元気に行ってみよう |
メールチェックしたら怪しげなダイレクトメールなんで、削除削除。あなた様のプロフィールがヒットしましたって何さ?(笑) ウォンテッダーは、これからですよ。
宿屋で一息ついて三人は、ぼんやりとした。 「酷い奴らばかりだったな」 「あの分だと、魔族は逃げる。だから、誰も賞金など手にできんだろ」 「そうね。欲張りすぎなのよ、あの人たちは」 ルイも疲れた声で言った。 「あーあ、腹減った。ここの食堂でもいいから何か食おう」 「そうね。まだやってるし」 この宿の食堂は地下にある。あまりうるさくなると泊り客が眠れないと訴えるので、地下に食堂を置くか、一階に置き朝のみ営業しているかであるが、多くのウォンテッダーたちは安さを求めているのでそうした配慮のある 宿には泊まることはない。 しかし、泊まれる宿がここしかないというならば、話は別である。 「珍しくはねえが……」 「地下を掘るにはそれだけ金をかけたことになる。それだけ料金がかかるものだが……」 この宿の料金は普通だった。そして、この町で唯一の宿屋である。 適当なものを注文して、料理が来るのを待つ。 「これから、どこに行こうか?」 アニムが聞いた。いつものことながら、この三人の行き先はまだ決まってない。たまたまこの町に行き着いたのである。 「そうね、ケーキのおいしいとこ」 「酒のうまいとこだ」 「おぬしらは慰安旅行でもしとるのか? それに、懐も考えることだ。非常に淋しいのだ」 「……マジで?」 「本当だ」 「じゃあ、お仕事を一番に考えなきゃいけないのね」 「その通り」 「やっぱり金二百枚……」 「どうせ奴は逃げておると思うし」 「やっちゃいましょ!」 こうして、料理が来る前に三人のやることが決まった。
2004年09月24日(金) |
空と海と大地と……? |
海と空と大地とだっけ? 今日山田にいったら予約受け付けていたよ。 でも、発売日が延期するのが、本家ドラクエなんですけど……。どうでしょう? でも、ホントにぎりぎりまで発売日明かさなかったみたいだから……(二ヶ月前だし)……サブタイ長い(笑)
ウォンテッダーたちは静かに席についている。それは傍から見れば葬式の後の飲み会のようだった。 「湿っぽいのは苦手」 ルイが小声でつぶやいた。 「しかし、これで現れるのか?」 「さあてのう。しかし、妙な話だ」 「なんでだ?」 「占い師は祝杯をあげることで悪霊が退散すると言ったが、悪霊は祝杯をあげろと言う。祝杯をあげることで悪霊は現れたのだ。では、その占い師とはなんだったのだ?」 「……陰謀?」 「そうなるよな?」 ルイとバルクは妙な顔つきをする、そして、騙されたことに気づいた。 「それにしても、祝杯好きの悪霊とはのう」 アニムは立ち上がった。同時にバルクも。 「バルク」 「ああ、わかったよ」 「これは、悪霊などではなく……」 「おう、三流魔族の感覚だ」 「そして、混乱させるのが得意なのだ」 「どういうこと?」 と、ルイ。彼女はあまりわかっていないようだった。 「どう考えても変なのに、変だと感じさせないってやつだ」 バルクがうれしそうに言う。久々の大物だった。 「三流魔族ならどんなに安くとも金二百枚は確実だろう?」 「ああ、酒場一軒を混乱に陥れたんだ。そのうちどっかの一国が混乱に落とすだろうよ」 そのとき、声がした。おどろおろどしい声が。 「三流言うなー!」 「出たな、三流!」 バルクが身構えたとき、後ろから蹴られた。 「何しやがる!」 「うわぁ!」 「金二百枚、確保すんぞ!」 「ううぉお! 渡してなるもんかあ!」 「むぎゅ!」 「きゃあああ!」 「俺が先だ!」 金二百枚に目のくらんだウォンテッダーたちはいっせいに声の方へ向かっていった。そして、酒場は大混乱になり、バルクとアニムとルイは、四つんばいになってその混乱から逃れた。 「バルク、ルイ」 「ああ、金二百枚は……」 「諦めるのね」 「小生はもう、嫌だ」 「安心しろ、俺もだ」 「畑泥棒退治の方がいいわね」 三人は、酒場を出て、宿屋に向かった。
どのくらい続くのか、わかりません。 もともとここに書くのは本編にしたくなかったんですけど……今、書いているのはここだけですから、結局本編なってしまったわ。 でも、今回の話は、あくまで……。ごめんなさい。断言できるほど自信ないです。
そもそも、なんでこんなばかげたことをやっているかと言うと。 この酒場には、悪い霊が憑いていると、とある占い師が言った。そして、にぎやかに祝杯をあげることでそれは退散すると……。そんなわけで店主は、ウォンテッダー歓迎の札を立ててウォンテッダーたちに祝杯をあげてもらおうとすることになった。 最初のうちは酒で行っていた。しかし、ある時恐ろしげな声が鳴り響いた。 「もっとだ。もっと人を集めろ。もっと祝杯をあげろ……」 経費は店もちだったので、お客から金を出さない限り、何度も使いまわした小瓶に水を入れて、何度も祝杯をあげることになった。 そんなこと、露も知らずバルクたちはこの酒場に入り巻き込まれたのだ。 「ところでよ、アニム。何か感じるか?」 休憩中、バルクはアニムに尋ねた。 「いや。何も。さっきから変だとは思っていたが……。だが、小生には霊感はないから、なんとも言えん」 占いを副業とするアニムはきっぱりといった。それで占いに大事なことは何か、とバルクが尋ねたことがある。そうしたら、少しの感とはったりだ、とアニムは答えた。 「そうか。俺も霊感はねえが、剣は何も言わないしな。たいしたことはねえはずなんだ」 「では、持ちかけてみるか」 アニムはにやりと笑った。アニムは、よっこいしょと立ち上がった。バルクでもあまり使わない言葉だった。多分、アニムのは口真似であるが。 「店主。小生も占いをやるのでな。少し見たのだが……どうやら大した霊ではなさそうだ。一つ、賭けに乗ってみぬか?」 アニムは商売用水水晶を店主に向けた。 「お客さん、何をかけるんですか?」 「お主の言う悪霊とやらを怒らせて姿を現せるのだ。そして、成仏でも消滅でもする。ここいいるのは全員ウォンテッダーだ。腰抜けは少ないだろ?」 アニムの言葉に店主はうなずいた。酒場にいたウォンテッダーたちもそろそろこの馬鹿げた儀式を終わらせたいと思っているころだった。 「なんだ、やっぱり大したのじゃないのね」 バルクから話を聞いたルイもうれしそうに承知する。 「終わったら、今度こそ本当の祝杯をあげよ」
「ウォンテッダー」を始めます。また。今回は、合流ってことで。 パロが好きなんで、自作でパロというのもなんだけど、「本編」として扱いたくない話のつもりです。
ブロードは、つまらなそうにため息をついた。彼のクセかもしれない。 「あーあ、つまんねーの」 修行と称し、ティママンは彼を(立派な魔族にするため)特訓した。しかし、それに付き合ったのはほんの数ヶ月。飽きてしまった彼は、空間を作りそこにティママンを閉じ込めてしまった。 彼は、すでに立派な魔族だった。(いろんな意味で) 「そいうえば、あいつら、どうしているかなあ……」
「かんぱーい!」 とある酒場で、全員が小瓶を掲げて叫んだ。周りと小瓶同士を打ち付け合ってそれを一気に飲み干した。 そして、その場にいた全員が、ため息をついた。その中のテーブルに、彼らは座っていた。 「馬鹿らしいのう……」 最初にそうもらしたのはアニムだった。フードを目深にかぶっているため表情は見えないが、その言葉は心の底から本音だった。 「ほんとねえ……」 うんざりとした顔でルイはつぶやく。あまり元気がない。 「まったく、何度これやらせるつもりなんだ」 バルクはイライラとしている。 「はーい、次。がんばってねウォンテッダーの皆さん」 ウェイトレスのおばさんは、新たな小瓶を持ってきてテーブルに置いた。 「それでは、皆さん。お願いします」 店主が言った。 皆、無理やり笑顔を作って小瓶を持ち上げた。 「かんぱーい!」 小瓶を打ち鳴らして一気に飲み干した。そして、ため息。 「せめて、酒ならな……」 バルクが小瓶を床にたたきつけようとしたが、やめた。掃除するのは結局自分だからだ。中身は、ただの水である。 ルイが無言で立ち上がった。 「どこへ?」 「……見りゃわかるわ」 アニムは尋ねてから気づいた。彼女は店の奥のほうへ入っていった。かれこれ、十回は同じことを続けている。当然行くべきところは分かった。彼女のほかにも、後を追うように店の奥にあるトイレに向かっている同業者がいる。 「俺は、外いってくる」 「お主は……」 バルクだけでなく、何人かが出口に向かっている。 「俺は宿屋の便所を借りるんだよ」 「あ、その手もあったのう」 また、水の入った小瓶がテーブルに置かれる。 「休憩十分後に再会します。よろしくお願いします」 店主は泣きそうな声で言った。
2004年09月21日(火) |
また、あいつらのことが書きたくなった |
そんなフレーズが頭に浮かんだのは、つい先週のこと。 それと、新しいことが書きたいと思ったら、アホな探偵とアホな組織のアホなハードボイルドだったので、すぐ頭の中で削除しかかったけどもったいないので、とっておく。(そのうちやるかもしれない) そんなわけで、明日をお楽しみに。
妹が、めでたく退学しました。(短大を)そんなわけで、妹は「高卒」です。「高卒」が悪いわけじゃないんだけど、母がせめてしてやりたいと思っていたことは「短大卒」というステータスを持たせることだったので嘆いています。姉である私も、一人暮らしの楽しみを知って欲しかったんですが……。
そんな妹とこのあいだコンビニに行ったとき、「愛と勇気のラブストーリー」というキャッチフレーズの漫画を見つけて、不思議に思ってました。 どんなラブストーリーなんでしょ? 愛のラブストーリーって、ラブストーリーは愛の話じゃないんか? そして、勇気はなんのためについている?ああ、でも、某RPGのキャッチフレーズは「愛と勇気のRPG」だったんだよな、これが。
世界何故、日本名の車はないのか? と、言うことを妹と話をしたことがある。 例えば「山吹」「黄金」「藍」「桃」「紅」とか、色にちなんだものとか、「桜」「椿」「百合」などの花の名前とか。女性向けの車も受けているのだから、このぐらい作ってもいいじゃないかと……。 やっぱり、外国名のほうがいいんだろうか? 日本は誇れる車を作っているのだから日本名の車もあっていいじゃないか、と思うんだけど、変?
ああ、ほんと今日は雑談だなあ。
何故かは、下の会話文をお読みください。
夏目 「そんなわけで、終わりました。フェアリードール」 セリナ「でも、十真様はてんで活躍なさってないところが、いいところ……なんですか?」 夏目 「主人公は活躍させないのが鉄則らしいから、自分が主人公らしい。多分ね」 セリナ「でも、今回活躍した人って誰でしょうか?」 夏目 「……女王?」 セリナ「新キャラが三人も出たのに、何事もありませんでしたね」 夏目 「そういえば、そうだ。俺もすっかり忘れてたよ。所詮、一ヶ月半で何か書こうとすればこういうことになるんだね」 セリナ「せっかく、尾崎のダメ社長が忠告したにもかかわらず、問題起こしたのは美紗さんの会社だったし」 夏目 「先を越された上に、女王があんなことしたから手を出せなくなった、てことかな」 セリナ「ちゃんと本編で言わなきゃ、通じませんよ」 夏目 「それ、俺に言ってもダメ」 セリナ「そうでした。これで、十真様も安心して暮らせますね」 夏目 「だと、いいんだけど……。俺のとこ、月初めに必ず井上さんが来て、月末には天藤さんが来て、不定期に梶元さんが来て、美紗さんも何故かついて来て、ごくごくまれに森先生がくるんだよ。そのうち、何か問題持ってくる、絶対」 セリナ「十真様、絶対なんて言葉使っちゃいけませんよ。絶対と言う言葉はありえないってくらいですから」 夏目 「どこで覚えてくるの? そんなの」 セリナ「いろいろなところから、です」 夏目 「とにかく、この話は手を広げすぎたわけでもないのにまとめきれず、無理やり終わらせたものなんだ」 セリナ「読んでくださったみなさーん、一ヵ月半ありがとうございました。そして、ごめんなさい」 夏目 「セリナに言わせるな!」 完
フェアリードール、長かったなあ。去年よりは短いと思うけど……。
「それで、妖精の女王がドールを暴走させたわけ?」 信じられないといった顔をして、梶元はコーヒーを手に取った。アイスからホットになっている。 「そういうこと、らしい。俺は寝てたからよく覚えてない」 梶元が、恐る恐るカップに口をつける。普通のインスタントコーヒーだったので、安心してカップを置いた。 「ドールになつかれたって聞いたけど?」 「ああ、まあ、そうなんだ。で、お袋が気に入っちゃって、家事を全部教え込んでいるよ」 「お手伝いさんになりつつあるんだ」 「それが、セリナちゃんと同じで、失敗することがあるんだ。この間、塩と砂糖間違えていたんだぜ」 「ふうん」 夏目は、少し笑った。セリナも同じことをたまにやる。 「月一でメンテやった方がいいよ」 と、製作者の一番の悩みの種を教えた。 「でも、スティック社つぶれただろ。どこでやってくれんだよ」 「それなら、井上さんが引き受けてくれるってさ」 会社がなくなり、美紗は井上の会社に入りたいと頼んできたので紹介した。井上は、上に聞かないと分からないと答えたが社長の山田は喜んで美紗を受け入れた。スティック社のドールデザインが気に入っているからという理由らしいが、同じ女性であるから、ということもあるらしい。更には、スティック社員の一部もスタッフに入れたいと逆に申し込んだ。 それによって、スティック社のドールのメンテナンスも井上の会社で引き受けることになったという。 寛大な会社だよな、と夏目は思う。セリナについてのことも、井村についてのことも。 チャイムが鳴る。 「はい、どちら様ですか?」 「セリナさん、私、美紗です」 夏目はふと思う。セリナが来てからうちに人が来るようになった、と。 「いらっしゃい、美紗さん」 「こんにちは、セリナさん。夏目さんいる?」 「ええ、ここにいますよ」 「どこに?」 セリナの横にいる夏目を見ても美紗は分からなかった。 「ああ、本当に何も聞いてないんだ。美紗さん」 美紗が、ものすごく驚く様子を梶元は大いに笑った。 「だって、女の人の姿しか見てないから……ぜんぜん分からなかった」 ソファーを勧められて美紗が座る。 「ずっと、元に戻らなかったからね……」 たぶん、女王が出てきたくてうずうずしていたのかもしれない。女王が出てくるには女の姿の方が都合が良いのかもしれない、と夏目は思う。 「なあ、夏目。この姉ちゃん、紹介してくれ」 「美紗さん。元スティック社のデザイナーだよ。梶元さんところに来たドールも多分、美紗さんがデザインしたものだよ」 「ほとんどのドールをデザインしたから……。今度、あなたのうちへ見に行ってもいいかしら」 「もちろんです。美人は大歓迎です」 「ありがと」 梶元のお世辞を笑顔で受け取る。 「あの、美紗さん。これ、どうぞ」 セリナが美紗にコーヒーを勧めた。 「あら、気を使わせちゃったわね。ありがとう」 数秒後、美紗の妙な悲鳴があがった。 終わり
セリナのこと、すっかり忘れてました。
ロビーはがらんとしていた。すべてのドールが、ビルを出て行った。 美紗は急いで、最上階に戻った。 「なんてこと……」 社長が座り込んでいた。夏目をなじっていたが、当の本人は眠ったままだ。 「自業自得って、こういうことなのね」 母の腕を押さえると、力なく下ろす。 「十真様、やっと見つけた」 エレベータが開いたかと思うと、そこからセリナが現れた。うれしそうに夏目に駆け寄った。 「セリナ……?」 夏目は目を覚ます。あまり状況は把握し切れていない。 「夏目さん、大丈夫?」 「美紗さん?……頭が痛い」 「今、森君が着てくれると思うけれど」 「? 先生が?」 セリナが横で頭をさすってくれる。痛いといったからだ。 「あの、美紗さん。何が、あったんですか? ドールがたくさん出て行きましたけど……」 「あなたたちの女王様は、かなりおてんばだったのね」 「?」 美紗はため息をついた。あらかた話を聞いた夏目とセリナは驚いた。 「じゃあ、この会社のドールは……」 「もう、一体も残ってないそうよ」 「みんな、どこへいっちゃったんでしょう?」 「そうね、わからないわ」
この、スティック社のドール脱走騒動は、大きくニュースに取り上げられた。社長はどこへ出ても平謝りだったが、原因だけは不明に終わった。説明できるものはいないだろう。そして、日に日に事件への関心は薄れていった。たまに、ゴミ捨て場で数体が発見された、うちに来て自分のドールとなった、などの情報が流される。ただ、スティック社は解散となった。
美紗は、「美沙」にしたかった。本家と同じって言うのはなんだから、と。でも、本家を「美沙」と思っていたので、同じ「美紗」になりました。 今日の「金スマ」にて、特集やっていたから。
「私が望むのはエネルギーよ、女王様。わが社のすべてのドールに妖精を入れて頂戴」 と、社長は言った。美紗が、信じられないと言う顔をしている。 「そんなことでいいの?」 女王は笑った。あくまでもその笑顔は上品だった。 「分かりました。幸いここは妖精たちが多いし、すぐにできるわ」 「そう、それは運がいいわ」 「お約束はできますか?」 「分かりました。その方の安全は確保しましょう」 「では、あなたが、望むままに」 その言葉の後に、女王が引っ込んだように見えた。少なくとも美紗には。夏目がゆっくりと横に倒れる。 「夏目さん!」 美紗が彼女を受け止めた。眠っているようだ。 「お母様、女王との約束、守ってくださいね」 「ええ、また必要になるまでね」 「そんな……」 そのとき、館内放送が響いた。 『社長! 大変です! ドールが……うわあ!』 何が起こったのかわからず美紗が母の顔を見た。母も、何が起こったのか把握しきれず、うろたえている。 「何があったっていうの?」 社長は、部屋を飛び出した。廊下には、たくさんのドールがひしめき合っている。 すべて、同じ顔をのドールが! 「お母様、これはどういうこと?」 ドールは、同じ顔のものは作られない。似ているものは確かにあるが、「双子」などという設定がない限り、全く同じ顔のものは作られない。それが、各社の暗黙のルールである。 「ごめんなさい、美紗……」 「やっぱり、こんなことしていたのね」 そのドールたちが、社長を見て笑い、同じ方向へ去っていく。 「あなたたち、どこへ行くの?」 ドールはくすくすと笑って、エレベーターに乗っていく。美紗はエレベーターに一緒に乗り込み、一階まで下がった。 一階もドールでいっぱいだった。ロビーで受付嬢が、恐怖で顔を引きつらせている。みんな、出口に向かっている。 「さようなら」 「さようなら」 「さようなら」 「さようなら……」 玄関を出たドールたちは、一様にそう言って、出て行った。 すべてのドールが去るまで、美紗には長い時間だったが、実際は短い時間だった。
いろいろ、と。 母方の祖母が入院して(腰が痛いため)それで今日お見舞いに言ったけれど、つい昨日、お見舞いに来たばあちゃんの友達が、桃とみかんと梅干を持ってきてくれたらしい。冷蔵庫にしまっていたら嫁(伯父さんの嫁)が、いるかい? と聞いて、(今は)いらないと答えたら、持って帰ってしまった。それで、伯母たちが驚き、呆れて、怒ってました。 まあ、今日はそれだけじゃなかったんだけど、ね。
美紗は電話を探す。みつからない。昔、携帯電話などというものがあったが、今では廃れている。 やっと見つけて電話をかける。 「もしもし、森先生をお願いします。え、外出中? じゃあ、伝えてください……」 部屋に戻る。夏目は起きていない。美紗は、なんだか悔しくて、ただただ黙っていた。 「あら、美紗。何をしているの?」 その声の主に美紗はばっと振り向いた。きっと見つめる。 「社長……いえ、お母様。何を考えていらっしゃるの?」 美紗の母は歳の割に若かった。だから今でも仕事を続けている。業界では珍しいことだった。 「美紗には関係のないことよ」 「いいえ、関係あるわ。彼女は私のお友達ですもの!」 「まあ、あなたのお友達? そのお友達のことをどこまで知っている の?」 夏目も同じことを聞いていたことを彼女は思い出すが、気にしなかった。 「彼女を帰してあげて。できれば、お医者様にみせてから……」 「目覚めさせる必要はないわ。もう起きているでしょう?」 美紗は、振り返った。夏目がゆっくりと起き上がっていた。 「夏目さん……」 でも、違う。 すぐに、否定する。それは、夏目じゃない。もし、自分が分かるとすれば、今の彼女は女王だった。 「やっと、出られたわ」 夏目はすくっと立ち上がった。胸を張り堂々としている。 「あなたが、美紗さんね」 夏目の顔で、そういわれるのは違和感があったが、彼女はこくんとうなずいた。 「ごめんなさい。あなたの願いは聞けない。わたしにも、どうして人間が見えることが出来るのかわからないの」 「夏目さ……いえ、女王、どうして、出てきたの?」 「それは……、夏目さんにこれ以上は迷惑かけられないから。できれば、この身体から出て行ってあげたい」 「でも、それもできないのね」 女王は、しゃちょうの近くまでゆっくりと歩いた。 「私はどうすればよろしいかしら? できれば、あなたの願いをかなえたなら、この身体の持ち主を無事に帰して欲しいのですが……」
うちが、いいですね。やっぱり。
「話だけだぞって釘を刺されたわ。脱出には力にはなれない。ごめんなさい」 美紗は、ぺこりと頭を下げた。 「美紗さんが悪いわけじゃないでしょ」 「それもそうね」 夏目は、ベッドに腰をかけた。やわらかく良く沈む。こういうベッドには寝ないほうがいい。 「何か、されなかった?」 「おもてなしは受けているよ。つれてこられた時は乱暴だったけど」 「そう、良かった。他に乱暴なことはされてないようね」 「良くない。セリナのことは心配だし……おとなしく捕まってきたのは悔しい」 美紗は夏目の隣に座った。 「美紗さん、森先生から俺のことどれくらい聞いてますか?」 夏目の急な質問に美紗は、聞き返しかけた。 「どのくらい? ……ほとんど聞いてないわ。彼は医者だから患者のことはあまり話さない。けれど、最近になってよくあなたの話がでるわ。と、言ってもドールのことだけど」 「セリナのこと?」 「たぶん、私が一番興味あると思うことを話していると思うわ」 「……そう」 夏目は、異様なものを感じて急速に眠りに落ちた。 「夏目さん?」 美紗が不思議に思ったらすぐにそれを異常と判断する。 「夏目さん! 夏目さん!」 揺さぶったが目を覚まさない。更に眠りが深くなっている気がする。 「やっと、おとなしくなったようだな」 男が入ってきた。美紗が夏目をかばうように立ち上がった。 「すまないが、社長命令だ。そこをどいてくれ」 「社長命令ですって? 彼女をどうするつもり?」 「さあな。ちょっとやそっとじゃ起きないようにしろと言われただけだからな。朝飯にたっぷりと薬を混ぜただけだ」 「……なんてこと! 彼女は医者にかかっているくらいだから、そんなの飲ませたらどうなるのか、わからないのよ!」 そうだ、森君に連絡しないと……。 「知らねえよ、そんなこと」 「彼女が死んだら、意味ないのよ!」 死んだら、なんて言葉を使うのは嫌だ、と彼女は思った。夏目は死んだように眠っている。 「社長が聞いたら、どう思うかしらね」 「……じゃ、どうしろってんだ?」 「今、やらしいこと考えなかった?」 「何言ってんだ!」 「とにかく、彼女の担当医師を呼ぶわ」 「……まあ、いい勝手にしろ」
三十秒前であせりました。せめて、一分前なら……なんとかなるのに。 明日、帰ったら二日分書きます。多分。 ではでは!
それではでは。
夏目は、ぽつりぽつりとあてがわれた朝食を食べた。朝にしては量が多いので、残すのは目に見えた。だから食べたいものだけを食べ、他のは手をつけなかった。それでも量は多い。 食事が終わると片づけに男が入ってきた。昨夜の男ではないようだ。彼女をじろっと見て一度出てゆく。背筋が寒い。それは、壁一面が窓だからではないようだ。 しばらくすると、その男がまた入ってきた。 「何か?」 「いや、あんたに会いたいっていう、社員がいるんだ?」 「社員?」 と、言うことはここはどこかの会社ってことか……。 「上からは特に命令はない。だから、会わせることにする」 「誰?」 「向こうはあんたを知っているってよ」 男はそれだけ言うと、出て行ってしまった。 ここは、会社。と、するとクイーン社かコンゴウ社? それにしては、丁寧な(?)もてなしだ、と思った。 ノックがした。初めてノックされたと思った。どうぞ、と声をかけると、明るい色のスーツを着た女性が入ってきた。 「夏目さん……やっぱりあなただったのね」 「美紗さん? と、いうことは、ここは」 「そう、こんな形で会社に来ていると思わなかった。そして、ここもクイーンと同じなんだと思ったわ。……スティック社にようこそ」
十分百円のインターネットサービスから。 そんため、今日はお休み。 で、これを機会に裏(でもないが)話。 名前。新キャラが出たのに今まで紹介なかったなんておかしいと思いませんでした? まあ、その辺が「気まぐれ」だから……ね。
梶元……最近読んだ海外ファンタジーの翻訳者。女性の方でした。青春アドベンチャーにてラジオドラマ化した「スピリットリング」です。
井村……井村君江。実は欧州の妖精の話や伝説を書いている方。
美紗……二時間推理ドラマ作品の女王・山村美沙。
時間のためさいなら。
に行きます。 早く寝ます。早番で。つまり、早番をしてから向かいます。汽車(JRを指す)で寝てますよ、きっと。
目を覚ました。カーテンの隙間から光がこぼれている。天気はいいらしい。そして、それを浴びている草木や妖精たちがいる。もちろん、幻だが。ただ、ここは妖精たちが多く感じる。他人の家に行ったとき、時々見え隠れしている妖精はいるが、ここは、周りを見るだけで十は確認できた。 夏目は起きてカーテンを開ける。そこは、ビルの最上階らしい。小さなビルの屋上を見下ろしている。ずっと下を走っている車は蟻のようにせわしなく動いている。 彼女はめまいを感じた。開閉式ではないが全体ガラス張りの窓はそこに何もないような感覚にさせた。夏目は、そこにへなへなと座り込んだ。 「こんな高いところ……苦手だ」 自分が高所恐怖症であるかもしれないことを初めて知った。ともかく、はいずりながらその窓から離れ、ようやく立ち上がることができた。
「十真さま〜」 セリナが充電から目覚め(表現的にはあっていそうだ)、置き手紙を見て愕然とした。夏目がいないのだから当たり前である。 彼女はすぐに井上に連絡した。そして、森にも。梶元の家の番号は知らないので、かけようがなかった。それから自分の機能を使い探す。 夏目の跡を追跡したが、遮断された。 「邪魔された?」 彼女は外に出ようとした。井上が来ることを思い出し思いとどまった。森は仕事だ。それでも終わったら手伝うことを約束した。 彼女は、涙を流した。ドールには一応涙を流す機能があるが主人がいるからこその機能であって、マスターがいなければ作動しない。半分は妖精であるセリナだからこそ、出来た。
今まで、仕事やってました。停電がなかったら出来た仕事だと思う。同じ境遇の人、多いんだろうなあ。
「で、俺に何か?」 「あなたを連れて行くことが仕事です」 「わかった。行くよ。ちょっと着替えてくるから」 夏目は後ろを向いた。部屋に向かおうとする。 「ベランダから逃げませんね」 「あいにく、ここは二階だし体力にも自信ない。逃げようと思わない」 「それは良かった」 充電中のセリナは動かない。座って眠っているような状態だ。セリナが動けたところでこの状況はどうにもならないだろう。彼女は置き手紙を書くことにした。それをテーブルに置く。 最近、夜は冷えるので彼女はフリースを羽織った。男物なので彼女の腰下のほとんどを覆う。 「いいよ、どこにでも」 「何か、たくらんでいるのですか?」 「あきらめた。それだけ」 本当は、諦めてなどいない。でも、彼女はあえてそう言っておいた。
夏目は、これ以上ないという豪華な部屋に案内された。そこがどこなのか暗かったので良く分からなかったが、何か要望があるかと聞かれ、眠いと答えたらこの部屋に案内された。眠気を促すようなベッドがあり、そこに転がってみたが、いざ眠るとなると落ち着かない。手ごろな硬さのソファーで眠ろうとした。 「よく、眠れるな。あの女」 「ああ、全く。自分がどういう状況におかれているのか……」 廊下から声がする。 見張りだろうか? 悪かったな、図太い神経で……。 だんだん聞こえなくなった。眠りに落ちる証拠だ。
もう、やっと復帰しました。 自分の仕事もままならなかったし、大変でした。 電気ある生活が戻ってきて良かった。
「わったしの勝ち!」 美幸が最後のカードを捨てる。日がとっぷりと暮れていた。もう、何試合したかセリナ以外覚えていない。 「すごい、美幸さん。今までずっと無敗です」 「昔からババ抜きで負けたことないのよね」 「変なところで運がいいんだな」 と、梶元。彼は連敗中だった。 「さて、私はそろそろおいとまします。夏目さん、おやつご馳走様」 美幸が立ち上がり、梶元も立ち上がる。 「俺も明日バイトあるし、帰るよ」 二人を玄関まで見送って、夏目はため息をついた。 「静かだね、セリナ」 「そうですね。二人がいるとにぎやかで楽しいです」 「そうだねえ。さ、夕食の準備でもしよう」 簡単なもので済まそうと彼女は言った。 その夜、夏目は寝ようとして時、チャイムがなった。 「どちらさま?」 「警察ですが」 「……何か?」 「夜分遅く申し訳ありません」 警察ほど、用心しなければならないものはない。警察と偽って強盗に入られたというケースはかなり多い。 「先ほど、お隣で強盗に入られました」 「隣で?」 そんなような物音は聞いていない。 「いえ、そんな物音は聞いてませんが」 「そうですか? では……」 警察と証する男は鍵を開けて入ってこようとするので、すかさずチェーンをかける。 「署までご同行願います」 「ずいぶんと強引なんですね。普通、ドアスコープ越しで手帳をみせるもんじゃないの?」 「昔のドラマによくありましたね」 「あんた、クイーンの人?」 「いいえ、私は……」 よく聞こえなかった。チェーンを切られ男が中に入ってくる。 「隣には人が住んでいないの知っていた?」 「いえ、知りませんでした。うかつでしたね。でも、こうして中に入れました」
今朝、職場にて……。電気は復旧していませんでした。再び、迫り来る闇(夜)。明日の朝までつかないことを想定し、パンを買いに行った。帰っても、職場は真っ暗だった。 台風18号。それは、破壊力抜群の台風だった。なんか名前ついてもいいかもしれない。
「では、これでいいですね」 「はい、よろしくお願いします」 美幸との打ち合わせを終わらせると、セリナと梶元はまだまだカードに熱中していた。セリナはともかく梶元はカードとにらめっこしている。 「さ、梶元さん、引いてください」 セリナが手札を差し出す。 「これだ!」 が、それは意図したカードではないようで苦い顔をする。 「では、今度は私の番です」 セリナが梶元のカードを引いて、二枚のカードを場に捨てた。スペードの6とダイヤの6。 「むむ。セリナちゃん、また?」 「はい、今度は梶元さんの番です」 美幸がくすくすっと笑った。 「二人で……ババ抜き?」 クスクス笑いが大笑いになった。 「あっはっははは」 「何がおかしい、天藤!」 「だって、だって……」 「私が、ババ抜きしか知らないから」 と、セリナは言った。つまり、 「そう、俺がそれしか知らないから」 夏目がそれしか知らなかったのだ。 そして、数分後、セリナが勝利する。 「二人でやっても、どっちかがババを持っているから面白くないでしょ」 美幸は、今いる四人でやることを提案した。 「天藤、お前仕事は?」 「あ、いいのいいの。今日はもうまっすぐ帰るだけだから」 そんなわけで四人でのババ抜きが始まった。
でんきがなかった。……なんて、信じられない!
今日職場に10時ごろ到着。台風通過中で、強風のなかを運転。市内あちこちで電線が切れて信号機が止まっていた。さらに、強風により曲がっていたため向きがおかしい。小屋が倒れたのと海が大荒れのため通行止め。職場へ向かうのにかなり困難な道のりをたどった。 そして、職場は停電。水、井戸からくみ上げ式なので止まり、直接タンクからパイプで引き出す。電気コンロのためガスコンロを引っ張り出して使用。ご飯、機械がやってくれるため使用不可。(ふと、炊飯器を思いついたけど、それもやっぱり不可)冷蔵庫・冷凍庫、むろん止まる(中は少し涼しいが)消毒機・食器洗浄機、無理。 職員が飲み水やトイレ用の水を取りに来る。食事は無論ろくに作れない。刻々と迫り来る闇(夜)、いつまでも来ない電気。懐中電灯がほのかに照らす厨房の一部。
めど、まだ立たず。ニュースでは、明日いっぱいかかるのでは? とのこと……。
家(町の中はほぼ治っていた)に帰るまで、電気が恋しくてたまらなかった。こうやって、明るいところでパソで打ち込みできるだけ、幸せと感じる日だわ。
つーか、初めてだわ、こんな日。
あ、今日は、こんだけ書いたんで、休業。(ごめん)
ドラえもん雑誌「ぼくドラえもん」の付録DVDを見た。創刊号と13号の。 テレビでは一度しか放映していない素朴な足首の細いドラえもんがですます調で話す「勉強部屋の釣ぼり」。お座敷釣堀の話なんですけど、微妙なところでドラえもんの目がずれていて、(わざとなのか、間違ったのかは不明)妙におかしかったです。 そして、「映画予告」二十五年分見たよ。あれは映画館で見れる予告なんでしょうか(確認中)だそうです。一番かっこよかったのは「パラレル西遊記」なんですが……原作はない。(私、真のドラファンではないんじゃないか?)当時のアニメフィルムコミックはあるんですけど……。 13号付録の「のび太の未来ノート」。(ドラえもん世界では)ありえない設定に戸惑うけど、出来はかなり良いです。内容も、メッセージ性の高い濃い内容なので。(こちらはイベント用のため、テレビ放映もしていない) 時間の関係で続きは見てないんですが、今度また見てみます。
「ただいま」 夏目は玄関の靴を見て、美幸が来ていることを知った。そして、もう一つ見慣れない靴を見て、誰かが来ていることを知る。セリナがあげるので知っている人だろう。 「十真様、お帰りなさい」 「ただいま」 「まあ、夏目さん。レディバージョン」 美幸には最近事情を話している。驚くどころか彼女は喜んでしまってるあたり、彼女らしい。 「天藤さん、その言い方やめて」 「あら、ごめんなさい。梶元くんとお知り合いだったんですね?」 「知り合いなんだね」 「ああ、高校ときんな」 と、梶元。セリナからアイスコーヒーを渡されて飲み、吐き出した。 「わ、きたない!」 「これ、お前用じゃん」 と、夏目に渡す。 「ありがと、のどか湧いてたんだ。セリナ、わざと?」 「いいえ」 「……いいんか、それで?」 美幸は梶元を笑って、それから、仕事なので失礼、と言って隣の部屋を指した。 「なんだよ、それ」 「部外者には見せられませんの。さ、夏目さん。打ち合わせ始めましょ」 「セリナ、悪いけど相手してあげて」 「はい」 夏目と美幸は隣の部屋に消えて、セリナと梶元がリビングに残った。 「セリナちゃん、なんの相手してくれるの?」 「はい、もちろん、カードのお相手です」 戸棚の引き出しから古めかしい小さな箱を取り出した。色も黄ばんでいる。 「そりゃ、トランプか?」 「十真様のお祖父様が使用していたそうですよ」 トランプを手にとって見る。つるつるとしているが、加工された紙製だった。 「すげえ、紙だ。この箱も……。奇術師でもなけりゃ手にはいらねえ代物だぜ」 「十真様もこれを見つけたときに言っていました。あやうく捨てるところでした」 「まったく、あいつは博物館みたいなやつだな」 そういいながら、梶元はそのトランプを手にとってしばらくその感触を楽しんだ。
休みは何か予定を立てないと、何もできないんだなあ、と。 それでも今日は野沢のソフトクリームを食べたので、良しとしよう。
夏目は留守だった。セリナちゃんによれば、もうすぐ戻るということ。そして、先客がいた。 「あら、もしかして、梶元くん?」 「なんで天藤がここにいるんだあ?」 「あなたこそ……」
「お知り合いだったんですか?」 セリナが美幸にアイスコーヒーを差し出した。 「ええ、高校の時のね。ありがと、セリナさん」 「梶元さんは少し待っていてくださいね」 「おう」 「まさか、ここであなたに会えるとは思いませんでした」 「俺もだよ。夏目に何の用だ?」 「打ち合わせ、です」 「打ち合わせ?」 「あら知らないの? 夏目さん、作家さんなんですよ」 梶元は、感心した。バイトだけではなく、こういった商売をしていることに驚いた。 「でも、今時作家なんて、もうからねえだろ」 「ええ、そうよ。私のお給料も微々たる物だけど……でも、儲かるとか売れるとかじゃないんですよ。作家さんは皆そうです」 「そんなもんかあ? まあ、いいや」 「ところで、あなたは?」 「俺は、元バイト仲間だったんだ」 「へえ、働きたくないって言っていたあなたがねえ……」 「なんだよ、俺だって、欲しいものがありゃ、バイトくらいする」 「へえ、何が欲しいんですかあ?」 美幸がそう質問したとき、夏目は帰ってきた。
しかし、またまた内職。
先週一週間のうち、一日のみ(しかも行事のため自分の仕事はほとんど出来ず)で、そのほかの日は厨房。 さらに、カロリー摂取量の見直ししろ(早急に)、だよ。
間違ってない? 「おやつ分のカロリー摂取量を引いて全体の総摂取カロリーを出せ」 大馬鹿もいいところだよ。 毎日ジュース飲ませるって、何? あんたはそうかもしれないけれど、ここの利用者はほとんどを毎日ごろごろすごしているだけだよ。それと一緒にしたらどんどん太っていくにきまってるじゃない。 若い利用者はいいとしても、お年寄りには通じないよ。若い利用者の中だって太っていく人もいるし。
全く、人をなんだと思ってんの?
あーあ、また、愚痴っちゃったよ……。
絵本の絵を展示した催しが地元の美術館で行われていて、明日までなんで見てきました。 酒井駒子さんの「赤い蝋燭と人魚」がとても気に入ってしまい、本屋で探すことになりそう。
「じゃ、お昼前には帰るからね」 「はい。気をつけてくださいね」 「ん、じゃあ、留守番頼んだよ」 夏目は買い物に出た。当分の食材、消耗品をそろえる。それでも一人でなんとか持ち切れそうだった。 セリナはあれで、よく目立つ。連れ歩いていると視線が刺さってくる。だからあまり連れ歩きたくない。女であるときは特にそうだった。 必要なものをそろえて、店を出る。思ったよりずっと早く買い物は終わった。
そうだ、夏目のとこに行こう。 本は意外に面白い。借りた二冊目の本もすぐに読み終えてしまった。本の虫とはよく言ったものだ。もっとも、本が少ない今、そんな言葉はなくなってしまったが。 本の中毒。言うならば、これだろうか。なんでもいいから、紙に書かれた字が読みたい。 また、本人の都合をつけず、夏目のアパートに向かった。
いっちゃいましょう。
天藤美幸は午後に来る予定だ。夏目が起きたのは十時過ぎ。セリナは朝食の用意をしてくれていた。 「卵、どうしますか?」 「ゆで卵」 「はい」 夏目はパンをトースターに入れて目盛りをあわせると、顔を洗いにいった。数分で戻ってくるとちょうどいい具合に焼けて、焼き終了音が鳴った。 取り出してセリナが出しておいたマーガリンを塗る。 「セリナ、今日は先に買い物いくよ。卵もないし、パンもこれで最後。天藤さんが来るのにお菓子もない。けど、セリナには掃除を頼むよ」 「はい」 「ごめんね。今度は連れて行くから」 「いいんですよ。十真様」 「ダッシュで帰ってくるから」 「無理しないでください」 「いや、急がないと天藤さんが来るから……」 めったに鳴らない電話が鳴った。 「天藤さんかな?」 出ると、森だった。昨日電話した記録が向こうの電話に残っていたらしく、今かけてきたのだ。 「何か用があったのかい?」 「ああ、美紗さんの服を借りたままだったから」 「そういえば、そうだね。わかった。彼女に伝えておくよ」 忙しいのか、それだけで電話は切られた。夏目も気にせず、朝食の続きをした。 「セリナ、そろそろゆで卵……」 「はい、それが……」 破裂してしまったゆで卵を彼女はお皿に載せていた。 「お塩、とってくれる?」 「はい」 夏目は、少しずつ(熱いので)殻を取ってそれを食べた。
いい加減に話を作っている割に(いい加減に作っているから?)長い「フェアリードール」そろそろ別なものが書きたいです。(やっぱり飽きっぽい)でも、これ、いつから書いているっけ?
夏目は着替えてからしばらくして森に連絡した。。しかし、留守だった。車を運転していたので酒は飲んでいない。もしかして仕事かもしれない。とりあえず美紗の服をハンガーにかけて置きしわがつかないようにした。 「素敵なお洋服ですね」 「セリナもこんなの着たい?」 「はい。この間アヤカさんが着ていたような落ち着いたのが着てみたいです」 「そうか。じゃあ、今度買い物をしたときにでも見てみよ」 「そんなことでお金使っちゃダメですよ」 「だから、見るだけだよ。セリナには悪いけど」 「それで、いいんです。十真さまと一緒に見るだけで」 「……ごめんね。世の中のドールは着飾っているのに」 「そんなの気にしないでください。さ、今日はもう遅いですから、寝ましょ」 「うん、そうだね」 セリナは充電状態になり、夏目は執筆作業をはじめる。締め切りはまだ先だがバイトもまだやっていないし、女であるときのほうがはかどる。そしてセリナが充電中は人間でいう就寝状態なので静かなのだ。その間が一番はかどる。セリナは一時間置きに何か必要なものはないか聞いてくるのだ。どんなに言ってもそれはやめない。それが妖精であるセリナの性格なのかもしれない。だから、夏目は夜中に執筆するようになった。 「打ち合わせは……明日?」 カレンダーを見て思い出した。天藤と会う約束をしていたことをすっかり忘れていた。 打ち合わせといっても、美並が描く漫画をチェックするだけである。直接会うことはないので、天藤にはその連絡係を無償で頼んでいる。当の本人は喜んでこの仕事も行っている。 「おかし、買って置くんだった」
2004年09月01日(水) |
で、「スナーク狩り」とは…… |
ルイス・キャロルの作品だったんですね。(宮部みゆきの作品にもあるので。それに確か説明があったような……)最後の一行が、ナゾ過ぎすぎてよくわからないという話。でも、アリスの話も、アナグラム、暗号、言葉遊びの世界なんですよね。なら、その最後の一行もなんとかとけるのではないか……、と。解けなかった。つーか、まず読めよってね。(スナーク狩りを)
「見えるのですか?」 と、夏目。これで、三人目。 「ええ。それで、森先生のところに駆け込んじゃったわ」 「それで、説明したんだ。君のこともね。美紗さんには隠し事は通用しないからね」 「なんでもない、と言うんですもの。でも、なんでもないはずはないはずじゃない? だから問い詰めたの。そうしたら、あなたの名前が出たのです」 「だから、俺を誘ったの?」 「ええ、この素敵な世界を共有できるのはいいことなのだけど、何とかしてもらいたいの。私には、邪魔なものでしかない。だから……」 「俺の中にいる女王に頼め、と」 セリナが残念そうに言う。 「そう、とってもいい景色なのに」 「ええ、とてもいい景色なのだけど私には、きれい過ぎる。見えないほうが幸せってこと、あるじゃない?」 「でも、俺にはどうやって女王と話していいのか分からないんだ」 「できたとき、ついででいいからお願いしたいわ。私からはそれだけ」 「……わかりました。出来るとは限らないけれど、頼んでみます」 「よかったわ。お話が出来て。では、遠慮なく召し上がってくださいな。今日は尾崎君のおごりなのだから」 「僕は、僕で言っておきたいことがあるんだけど」 今度は尾崎が話し始める。 「うちの会社とコンゴウがお前を狙っている。せいぜい気をつけることだ。以上」 「それは、どうも」 「尾崎君、どうして夏目さんを狙うの?」 「そりゃあ、妖精の女王を取り戻したいからさ」 「女王はものじゃありません。だから、取り戻すのは不可能です」 「それでも、どうにかなるものなんだよ。そういうものを作ったっていう話さ。僕は蚊帳の外にいるからね」 「わかった、気をつける」 夏目は勧めながらも、あまり箸をつけなかった。食べなれないものばかりだ。だが、森のもったいないという呟きを聞き、ほどんどを食べた。 「美紗さんは、どんなドールを作っているんですか?」 食事の合間、セリナが尋ねた。 「いろんなドールを作っています。でも、私がやるのはデザインだけ。それでも、人の集まるところでスケッチして、何百人という人の顔を組み替えてドールの顔を作る。それにあわせた性格……個性を考えるの」 美紗は仕事のことをうれしそうに話した。 「だけど、世界が見えてからというもの、妖精ばかりが見えちゃって人間の顔が作れなくなったの。だって妖精たちの顔の方がいい顔なんですもの」 「それで、見えなくしてほしいんだ」 と、夏目。森から日本酒を勧められて、猪口に一杯だけもらう。 食事が終わると、自動的に帰る準備をする。森に送ってもらい、部屋に入ってから気づいた。 「あ、服……」 美紗のスーツをそのまま着て帰って来てしまった。
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