白月亭通信別記
老い先短い残照の日々、
おりふしの所懐を、
とりとめもなく書き留めて…

2003年05月30日(金) 対話と圧力

 日米首脳会談で合意した北朝鮮に対する「対話と圧力」が外務省文書では「圧力」がけずられていた問題について拉致家族会からの抗議をうけて小泉首相はあらためて「問題ない」と発言したと今朝の新聞にあるが、この発言を発表した山崎幹事長が「公表する内容はまず事前に打ち合わせするもので、(公表せずに)落とす部分がある。外務省に落ち度はない」(朝日)と補足した説明は何度読み返してもよくわからない。結局「圧力」は世論をなだめるポーズであるようだ。万景峰号の寄港拒否など経済制裁を北に課す考えはないということだ。



2003年05月28日(水) Boots on the ground

 マスクをかけて登院した保守新党の二階幹事長、記者に「院内感染」とひやかされて「不謹慎な冗談をいうな」と怒っていたが、岩手地震について「自信をなくしちゃいけない」というオヤジギャグを飛ばした小泉さんも叱って欲しいものだ。その小泉さん、こんどはブッシュに「Boots on the Ground」と要求されて自衛隊をイラクに派遣するための新法制定を決意。小泉憲法では自衛隊はもうとっくに軍隊になっている。



2003年05月25日(日) 松井重症

 雨の日曜日。雨読も行楽もままならずしかたなしに大リーグ中継で時を過ごす。松井クンの重症に心を痛める。ニューヨークタイムスも手のひらを返したようにバッシング記事を書き、スタンドでもブーイング。「打球が上がらない? うーん、そうですね。まあ、しようがないでしょう。自分なりには精いっぱい対応してるつもりなんですけど、まだなかなかうまくいかないですね」(サンケイスポーツ)という松井選手のコメントも痛々しい。



2003年05月22日(木) 星野監督

 阪神が強い。連夜の逆転勝ちに狂喜乱舞するファンで甲子園が揺れている。その中でひとり苦虫を噛み潰しているのが星野監督だ。選手が思い通りに動かないといっては不機嫌な表情を見せ、審判の判定に激怒して執拗な抗議を続けたり。テレビカメラもまたよくこの表情を大写しするから否が応でも星野監督のイメージは「怒り」を増幅させる。激戦を制してベンチに引き上げる選手たちを迎える表情にはさすがに笑みがあるがどことなくかげりのある笑いである。星野監督のあの暗さはどこから来ているのだろう。



2003年05月21日(水) ネバー・ギブ・アップ

 暴力団から秘書給与の肩代わりをさせていた松浪健四郎議員、政倫審でスポーツマンらしく責任をとって辞任すべきではないかと言われ「ネバー・ギブ・アップ精神もスポーツマンシップ」とぬけぬけと放言したが暴力団とズブズブの関係もあらたに出てきて進退窮まった。



2003年05月19日(月) 矢バト

 今月5日、東京都大田区の多摩川河川敷で見つかった首に矢が刺さったハトが17日、川崎市中原区の民間団体「野生動物ボランティアセンター」(馬場国敏所長)に保護された。(以上読売新聞の記事から)
 ボウガンの矢がささったハトの写真を見るのはつらかった。ああいう映像を実写で見せるテレビ局のセンスがわからない。死体を見せる以上に残酷であると思う。



2003年05月18日(日) 鬼のいぬ間

 昔は家庭でゴミを燃やしたり落ち葉をたてたりするのはごく自然な行為だったが最近はダイオキシンだの煙害だのと環境保護の観念が行き届いて焚き火も簡単にはいかなくなった。市役所の環境課はゴミは家庭で処理して欲しいけれど個人の焼却を公式に推奨できないので「家庭でゴミを燃やすときは隣家から苦情が出ないように留守の時にやってください」などと指導するので隣が行楽のために一家出かけた鬼のいぬ間に生垣の剪定屑を燃やした。生木生葉でモウモウと白煙がでたが文句もいわれず無事作業終了。



2003年05月16日(金) ながら族

 巨人阪神戦も見たい。N響定演も聴きたいでどうしたかというとFMで定演をテレビで音を消して野球という「ながら」作戦。伊良部ラスの息詰まる投手戦とN響の怪演でどっちも満足。まだ十分勝ち目のあった阪神が救援にポッと出の新人を起用して結果的に打たれたのは開幕以来負けなしの巨人戦に対する星野監督の余裕か。



2003年05月12日(月) 縦書きソフト

 朝日新聞の土曜付録(Be)が紹介した縦書きソフトのQTViewをダウンロードして青空文庫に収録の島崎藤村の「旧主人」を読む。青空文庫を読むための縦書きソフトはかつてT-Timeを使ったことがあるが、これはプラグインとしてアップル系のQuick Timeを使うのでWMPとの折り合いが悪くいろいろ障害が出たのでT-Timeのインストールをしていなかった。QTViewはフリーソフトだがルビ付テキストなども読めるので「旧主人」もスラスラ読めた。



2003年05月11日(日) リハビリ

 「髪はボサボサ、髭はボウボウ。放浪の旅などと気取ったって浮浪者同然じゃないの。あなたはいいのだろうけれどあなたを見る人は不快になるわよ。だいたいいまどき巡礼の旅といったって現実逃避もいいとこよ。世間に顔を背けて生きようというのが男らしくないのよ」。伸び放題の髪を切ってもらいながらカミさんの小言を黙って聞いている。一ヶ月の旅が終わって久しぶりに我が家に帰ったがまただ生活感覚が戻ってこない。現実生活にもどるためにはすこしリハビリが必要だ。



2003年05月09日(金) 狐狸の家

 留守宅の安否を電話で問い合わせ。「大変よ。早く帰って来てよ。畑や芝生は草ボウボウだし庭木や生垣も茂るだけ茂って狐狸の棲む家っていう感じよ。私一人じゃ何にもできない」。久しぶりに晴れたので道沿いの清流に下りて汗と埃に汚れた旅衣や下着を洗濯、乾くまで水浴びをしたり岩陰で昼寝をしたりして過ごした夜の出来事。続けるべきか帰るべきか。いまだ旅の目的など何も果たしえていないのでここで中止すれば一ヶ月の放浪が何の役にも立たなくなってしまうだけに難しい選択をカミさんがつきつけてきた。



2003年05月07日(水) 咳をしても一人

 地位も名誉も出世も家族もなげうって小豆島の小寺の堂守として病躯の生活を支えながら独自のを句境を開いた尾崎放哉のすさまじいまでの孤絶の生き方にも心引かれるものがある。代表作「咳をしても一人」。師の荻原井泉水は「この放哉の孤独の魂は、彼の体内に内攻するだけでなく,人界を離れて遥かなる大空に向かって放電した」と書いている。



2003年05月04日(日) 温泉宿

 旅をしていると温泉に泊まることが多い。温泉宿といっても一泊が2千円か3千円のいわば木賃宿の類。湯治客などが自炊をしながら長逗留するような宿だ。だから自炊客からおもいがけないご馳走にあずかりながら互いに身の上ばなしで夜が更けることもある。昨夜泊まったH荘は部屋を案内してくれた女中さん(女性従業員というべきか)が親切な上なかなかの美人で昔観た映画「若い人」の島崎雪子を思い出させた。奔放な江波恵子とは逆のイメージでこんな鄙びた温泉宿で働く彼女に何か悲しげなものを感じたが身の上を聞くことはしなかった。



2003年05月02日(金) 青い山

 種田山頭火の代表作「分け入っても分け入っても青い山」の句は大正15年4月に始まった「行乞流転の旅」で九州山中での作となっているが宮崎県では同県の秘境青い岳(あおいだけ)で詠まれたということになっている。青い岳は宮崎市から国道269号線を都城に向かって南下するとその中間地点にある。いまこの道をドライブすると全山が盛り上がったような新緑で車に迫ってくるような気分を味あうことができるはずだ。しかし5月になって日本全国どこでも新緑にあふれていてどこを通っても「青い山」であることに変わりはない。(追記:山頭火の句には宮崎県高千穂町での作という説もあり同町には句碑も建立されている)


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