白月亭通信別記
老い先短い残照の日々、
おりふしの所懐を、
とりとめもなく書き留めて…

2003年04月30日(水) 山家の夜

 山中雨に行き暮れてとある山家に一夜の宿りを求めたところ快く軒下を貸してもらうことになったが夢を結ぶまでに囲炉裏で濡れた衣を乾かしながら主人と世間話をしたが亭主はノートパソコンでインターネットをたしなむ当世風の趣味人であった。旅に当たっての心残りはエンピツに作成しているこの日記が消滅することだった。出発以来すでに一月がたつ今もう「白月亭通信別記」の名は消えているものと覚悟していたが主人のパソコンによるとまだこの日記は残っていた。そして日記のためにわかに帰心が募ったが一方ではまだ旅心も定まっていないのでしばらく放浪を続けることにした。(H山中にて)



2003年04月06日(日) 旅へ

A君。
考えるところがあって旅にでることにしました。
戦争のことも忘れ、文明のことも忘れ、我も忘れ、ひたすら自然の懐に抱かれて残りすくない日々をさすらってみようという決意からです。
一宿一飯の恵みを得られれば幸い、さなくば草を枕にして傘で夜露をしのぐこともあろうかと思いますが老いの命を支えるにいくばくの掛かりかある。無一物にちかい身は人にねらわるるおそれもなし。東に桜を訪ね西に新緑を求めるといえば風流の道にかなうでしょうか。
足の向くまま気の向くままゆくえ定めぬ旅なれば帰着の日も定かならず、もし幸いにして再会かなわば過ぎ越し旅の思い出を苞にせばやと小さな手帳も旅荷物に加えました。
では行ってまいります。



2003年04月04日(金)

 恥ずかしいことに帯状疱疹なる病気のことを知らなかった。昔は丹と呼ばれ恐れられた病気だったことも。治療をいい加減にするとその予後に頑固な神経痛が伴い苦しむことになるということを知っておればそれなりの対応ができたはずだが、軽く見たためにその神経痛に苦しんでいる。比較的初期に医者にかかったのだが医者の処置もおざなりだったのではないのかと恨んでもいまとなっては仕方がない。きょうは名医という評判を聞いて1時間もかけて車を飛ばしたがその名医は74歳とかでロレツも回らないほどのご高齢であった。



2003年04月03日(木) 落花狼藉

 雨が降り止まない。おかげで満開の桜も散り急いで木の下は落花狼藉たり。「月に群雲花に風」というけれど桜の季節にはよく雨が降って「桜雨」ともよばれますと気象予報士が天気予報の中で説明していた。豊かで美しい日本語のひとつ。


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