俺の大切な友人の一人が仲間内のホームページを作ってくれていて、そこの伝言板では日夜ばかトークが繰り広げられている。 今日、実に久しぶりに充実した休日を過ごした俺は、画像もアップできるその伝言板上に『のづ随想録特別編』として、写真つきでその模様を紹介した。 ばしばしとテキトーに書いたわりには、内容そのものは気に入っている。で、その仲間内以外にも読んでいただきたい――ココを読んでいる“仲間内以外”の人数というのは、じつはかなり少数なのだが――ということで、その内容をここに公開する。 画像がないのはご勘弁いただきたい。「ならば、その仲間内のホームページとやらのURLを教えろ。そこまで読みにいくから」という根性のある人もあるかもしれないが、それもご勘弁を。
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滋賀出張生活は続く。 今日、日曜日は久しぶりに休日らしい休日を過ごした。数日前、表紙の“まるごと近江グルメ”というコピーに魅せられて買った『まっぷる滋賀』を片手に、グルメドライブに飛び出した。言ってみれば“ひとりグルメ番組レポーター”である。
準備は万端。土曜日は毎度のごとく休日出勤だったが、早めに仕事を切り上げ、事務所を出たのが七時前。そのまま『野洲・ほほえみの湯』なるスーパー銭湯でまったりした後、食事を済ませ帰宅。一週間分の洗濯をやっつけ、NHK『爆笑オンエアバトル』でひとしきり笑い、じっくり『まっぷる滋賀』で予習を行った。ぶっちゃけ、観光にはほとんど興味はない。テーマは、そう、“ひとりグルメ番組レポーター”。 目指す店の開店時間に合わせ、出発時刻を朝9時に設定。明日は喰うぞお……。
目が覚めたら、11時。――言葉も出ない。 おまけに雪まで降ってんじゃねえかよ……。 普段なら、この“雪が降っている”という事実だけで外出する気が失せてしまうのだが、今日は違うぞ。 とにかく、慌てて身支度を整え、俺は会社の営業車に飛び乗った。目指すは滋賀県長浜市。
『鳥喜多』 親子丼(大盛り) 650円
高速を走らせること約1時間。営業車として使っている車はレンタカーなので、CDも聞けてしまうという超高級車だ。浜田省吾、Babe(覚えてないよねえ)、ユニコーンのベスト盤、1981〜1983年CD選書ベスト(これには名曲『子供達を責めないで』が収録されている)という、かなり偏ったCD4枚をBGMに、俺は目当ての『鳥喜多』に辿り着いた。 この店は親子丼がとにかく有名らしい。鶏肉好きの俺はまず『まっぷる』のこの情報に食いついたわけで。 なるほど、『まっぷる』に書いてあるとおり、15人位の行列が出来ている。30分ほど並んでようやく店内に入ることが出来た。芸能人のサイン色紙がいくつか並んでいるところをみると、『まっぷる』の情報も大げさではないようだ。テーブルが8つほどの小さな店、壁の品書きを見れば、有名な親子丼のほかにもメニューはたくさんあって、いわば一般の蕎麦屋がどういう経緯か親子丼が有名になってしまった、とも思ったが、やはり屋号から考えるとまさにこの店の看板商品なのだろう。 で、出てきた親子丼が、これ。
見て分かるように、とろとろの半熟卵の中央に新鮮卵の黄身がずどんと鎮座しておられる。これを優しく崩してさしあげて、全体に絡ませながらほふほふと頂く。なかなかイケる。 しかし、高速道路を1時間走り、高速道路料金2200円を払い、さらに駅前駐車場代300円を払ってまで食べる親子丼かといわれてしまうと、これが「?」だ。 今後、俺はこの『鳥喜多』よりも旨い親子丼を探して、この「?」を追求してみたい。
『あゆの店 きむら』 鮎雑炊 800円
『鳥喜多』を出て、さてどうしたものか、と空を仰ぐ。 『鳥喜多』の裏手に長浜市の観光名所でもある『黒壁スクエア』なるところがあるのだ。観光にその重きを置いていない今回ではあるが、まあ、話の(つまりコレを書く)ネタにでもなれば――と、その観光エリアを散策してみることにした。 歩き出して30秒ほどのところで、その店を発見した。店頭には『鮎雑炊』の文字が。 事前学習の中でもチェックしていなかった店だったが、この「鮎+雑炊」というタッグにずがんと打たれた。だって、どっちも好きなんだもん。 大盛り親子丼を食べ終わってものの数分後に、俺は『あゆの店 きむら』で件の鮎雑炊を元気よく注文していた。これ、この次々とナンカを食べてゆくさまが“ひとりグルメ番組レポーター”。 で、出てきた鮎雑炊がこれ。
『まっぷる』にも掲載されていたが、滋賀のご当地グルメといったら“近江牛”“鮒寿司”“鴨”そして“鮎”だそうだ。“近江牛”はいずれタイ米……いや大枚はたいてでも旨いのを食ってやろうと思っているが、この“鮎”は完全ノーマーク。そのシーズンを大きくはずしているとはいえ、トライするに十分なアイテムである。 頂いた鮎雑炊、上品なお出汁に炊かれたご飯の上に焼き鮎の身がちりばめられている。あつあつのお出汁と一緒にごはんと鮎の身を口に運ぶと、鮎の身の優しい甘みと焦がした皮の香ばしさが口中から鼻腔を一気に駆け抜ける。実に旨い。一粒も残さずに頂きました。
満足感に満ちて店を出た俺は、『黒壁スクエア』のことなどすっかり忘れ、駅前駐車場に舞い戻ったのでした。
『伊吹野そば』 おろしそば 750円
長浜市の市街から伊吹町がそれほど遠くない、ということを改めて『まっぷる』で確認すると、俺は車を東へと走らせた。 何度かネタにもしたことがあるように、俺は“蕎麦”にはちょっとうるさいぞ。薀蓄を語れるほどではないにしろ、旨い蕎麦屋があると聞けばあまり苦にすることなく足を運ぶ性質である。あれこれ調べた(仕事の合間に本屋で立ち読みをした)結果、滋賀では俺のハートをくすぐるような蕎麦屋を発見できなさそうだと思っていたのだが、『まっぷる』を読んで、むむっと思った。 滋賀県伊吹町が蕎麦の発祥の地だという。 ――そうだったかな。俺の曖昧な知識では確か山形県、という記憶があるのだが。まあ「発祥の地」なんて看板はどこにでもあるからな、などと思いながら走っていると、車はすっかり田舎道に入ってゆく。ま、とりあえず「発祥の地」たる伊吹野そばってやつを食ってみようじゃないか、というわけだ。 もうちょっと走ればそこはスキー場、というあたりで店を発見。すぐそこにそびえる伊吹山はまだまだ雪化粧を落としてはいない。吹きすさぶ寒風はまさに真冬のそれであった。 『伊吹野そば』の建物はありがちな日本式ではあるものの、構えがどうもドライブイン風でまず出端をくじかれた。 時間のせいもあったが、店内は2、3組の客がいるだけ。それでも引き戸のところに『本日は大変込み合っておりますので、係の者がご案内するまでお待ちください』などと表示を掛けたままにしている。昼時はどうだったか知らないが、この時間までこんな表示を残しておくなよ……と、ややテンション下がり気味。 注文は、『まっぷる』にもあったオススメのおろしそばにしてみた。まず、これが失敗だった。 で、出てきたおろしそばがこれ。 ――あんまりショックだったんで、デジカメに収めるのも忘れてしまいました。 俺は、初めて訪れる蕎麦屋ではまず間違いなく“せいろそば”を注文することにしている。種(天ぷら、油揚げなどの、蕎麦にのる具のこと)に誤魔化されることなく、蕎麦とつゆがストレートに味わえるからだ。 何を血迷ったか、俺はガイドブックそのままにおろしそばなんてものを注文してしまった。これは大皿に盛られた蕎麦の上につゆをぶっかけるスタイルなので、蕎麦の楽しみの一つでもある“蕎麦湯”を味わうことが出来ない。 一口蕎麦をたぐって、俺のテンションはさらに下がった。 “つなぎ”が多くて、蕎麦の香りがあまりしない。かけつゆもちょっと甘め。少なくとも俺の好みではなかった。 まあ、こういうこともあるよなあ……と俺は黙っておろしそばを食った。 こういうときでもグルメレポーターは「ああ、コシのあるお蕎麦ですねえ」なんてカメラに向かって笑顔を浮かべなければならないのだろうなあ。
一時間半かけて帰宅。途中、マンションの近所の本屋で立ち読みをしていたら、ちょっとだけ胃が痛み出した。そりゃそうだわな。数時間で三食もたいらげたんだから。 それでも、楽しい休日だった。 どんなに遅くても4月上旬には出張生活が終わることになりそうなので、これからは休日のスケジュールをしっかり立てて、滋賀ライフを楽しもうと思う。
で、“ひとりグルメ番組レポーター”が夕食に選んだのはこれ。
明日も頑張ろう。
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