仲間となんだかんだ上司の不平不満を言い合っていたら22時になってしまい、帰宅したのが23時近く。ま、これくらいの帰宅時間はザラである。それから風呂に入る。読むべき雑誌を営業車の中に置き忘れてしまったので、『蕎麦屋のしきたり』という文庫本を読みつつ湯船に30分。 「今日の夕食は大変ヘルシーです」 とツマが準備してくれた夕食は実にベジタブルだった。 豚肉とニラの炒め物(ニラたっぷり)、野菜たっぷり豚汁、おから、カボチャの煮物、野菜サラダ。昼食を12時に食べてから何も胃袋に入れていなかったので、必然的に空腹であり、御飯茶わんにはやや多めの白米。 どれも確実に美味しかったのだが、これが実はけっこう量が多く、俺は連続ゲップをしながら今コレを書いている。
夕食、で思い出す話がある。のづ家(ここでいう“のづ家”とは俺の茨城の実家であり、かつ我が家の両方を指す)では伝説と化しているエピソードである。 俺がまだ独身で茨城の実家にいて、池袋の本社に勤務していたころのハナシだ。丁度、ツマとお付き合いをしているころ。 その日は残業でかなり帰宅が遅くなり、恐らく最終電車でへたり込むように実家へ帰ってきた。 たまたままだ起きていた母親が「もっと早く帰ってこれないの」だの「こっちの身にもなれ」だの、やや不満気味に俺の夕食の準備をしてくれた。 母が食卓に並べたのは、御飯、焼き鮭の切り身、みそ汁。実にシンプル。実に質素。 べつに贅沢をしたいわけではないが、あまりにも簡潔なメニューだったので、俺はやや冗談気味に母に不満を申し述べた。 「ねえ、もちょっとナンかないの?」 るさいわねえ……。母には母なりの不満があって、そう呟きながら母は冷蔵庫から出してきた鮭フレークを俺の目の前に置いた。 「……」 『焼き鮭』と『鮭フレーク』をおかずに御飯を食べたことのある人間は、恐らく東関東で俺を含めて5人いないと思う。
ベジタブルな夕食をとりながら、俺とツマはそんな話をして笑っていた。
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