little by little
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翌日、新宿を後にしてふたりで国立へ向かった。 友人の仏前参りのために。
友人が愛したであろう街は、 まだ三月の初めだというのに、 一本だけ、桜が咲いていた。
彼は後に、其の日のことを、 「友人が二人の再会を祝福してくれているようだった。」と言った。
ねぇ。 でも知らないでしょ。 友人は、わたしが恋人と付き合ってること、 安心してたんだよ。 「現実と仲良くしてる雉葉を見れて嬉しい。」って。
ずっと彼とわたしのことを応援してくれていた友人は、 昨年末、自ら此の世を去った。 元AV女優さんの訃報の一日前のハナシだった。 たくさん思うところもあったけど、 出てくる言葉は「バカ」ばかりで。 可愛い彼女や、優しいご家族や、仲間たちを遺して、 彼は向こう側へ旅立った。
泣かない、つもりだった。 泣かないと、思ってた。
だけど友人のご両親のお話を伺いながら、 涙は止まらなかった。
友人の家を後にして、駅に向かう道すがらも、 ぐずぐず泣いてばかりで。 傍から見れば彼がわたしを泣かせているようにも見えただろうな。
だけど、友人とのことがなければ、 わたしたちがまたこうして同じ時間を過ごすことはなかったよね。 「友人の置き土産」というのがふたり共通の認識。
不謹慎、だね。 わたしはやっぱり、幸せになる気はないみたいだよ。
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