| moonshine エミ |
| 2003年04月20日(日) 『GO! GO! L.A.』 クレイジー・ロスをキュートに批判 | ||||
| 夜更けに映画を見るのってけっこう好き しん氏と住んでたころ、テレビっ子の彼はいつも深夜までつけっぱなし ときどき一緒に深夜のB・C級映画を見て突っ込みまくったり、 時に名作に行き当たってぼろぼろ泣いたり、 もちろんビデオを借りて見ることもありました。 感じる心がなかなかシャープで、感じた心を割と大事にとっておく。 そんなしん氏と映画を見るのはとても楽しかった。 5年も仲良しの彼が遠くへ行ったからって、 「アナタがいないと、あたしダメなの。。。」 なんてことには実際ならないもんですが、 相棒の不在がけっこうポッカリ大きく感じられるのはこんなときかも。 しんちゃん相手に遅くまで起きて一緒に見て、 映画の感想をあれこれ言いながらちょっと酒とか飲んで、 あっそんなとこ見てなかった、ちくしょーコイツやるなー なんて心地よい悔しさを感じたりしたいのだ。 しかし一人で見る夜よ(七五調。) 土曜の夜に見たのは『GO! GO! L.A.』 これは何で借りたかというと、ヴィンセント・ギャロが出てるから。 そう、ミニシアターのカリスマ!(って最低級にダサい表現だ!) 前の夏に彼が監督・主演した『バッファロー'66』を見て、 それがサイコー!と思えるほどでもなかったのに、なぜかその後も気になる。 彼が出てるから違う作品も見てみよう、なんて、思わせるなんて、 わたし、そんなに映画大好きッ子でもないのに、すごいことだよねー、ギャロめ! (でも、あくまで助演のギャロを、主役より名が売れてるからって、 まるで主演のように宣伝する広告会社?には苦笑) さて。 この映画ったら、とってもキュートなの。 ストーリーはとっても簡単、 スコットランドで葬儀屋を営みながら地味〜な生活を送る青年リチャードは、 ある日お葬式の途中で出会った、女優の卵バーバラに一目ぼれ、 彼女が暮らすロサンゼルスまで追いかけて生活を始めます。 故郷とは180度ちがう、派手な街ロスに戸惑うリチャードのぎくしゃくぶり、 バーバラとのすったもんだの恋模様、そして彼らを取り巻くロスッ子たち。 イギリス・フランス・フィンランド合作のこの作品の底を流れてるのは どうもハリウッドに対する批判精神らしく、 主人公リチャードとヒロインの間を邪魔する男・パターソンは薄っぺらーいスリルだけを売りにしたような いかにも「ハリウッドの悪いとこ!」を集めたような映画を撮ろうとする監督の卵だし、 忙しい忙しいと連発する、これまた派手で見栄えのする企画ばかりに熱心な映画プロデューサーも出てくるし。 主人公のリチャードは、ロスに出て行ったとたんに自分のペースを崩し、 田舎モノ扱いされるうちにストーカーまがいになる ヒロインのバーバラは、 スコットランドで登場したときはあんなにも美しく魅力的で、 奔放な男性遍歴の母親を反面教師にしてるような、根はマジメな女の子なのに、 映画でいい役が欲しいばかりに、パターソンのような中身スカスカ男との関係を断ち切れない 要するにロスは、実直な人たちをクレイジーにさせる街なのね。 確かに、制作側のハリウッドに対する嫌悪とか軽蔑とかを感じさせもするんだけど、 でも! やっぱりハリウッドを魅力的な街として、描いてるんだよ それは、ギャロが演じる風変わりだけど頼りになるモスとか、 その彼女になるケラケラ笑ってばかりのジュリーとかの ロスッ子の描き方もそうだし、 猥雑でギラギラ・混沌としている一方で、 海とか空とか、ロスの乾いた美しさも随所で描く。 劇中でギャロと共演するファンキーバンドも超クールだし! ロスは、ハリウッドは、 大きな街、刺激的で、くだらない、それも楽しい、 楽しいことをやればいい、 でも、見失わないで、自分の場所をいつか自分で見つけて、 それがロスでなくてもいいじゃない。 ラスト、故郷に戻ったリチャードを追いかけてきたバーバラが言うセリフ 「イギリスでも、映画は作ってるんでしょ」 この一言が映画の肝でもあるだろうね サラッと見てると、そのセリフが唐突に感じられたんだけど 楽しくてパッパラなそれまでをもう一回なぞってみると、なるほど、って感じ。 映画の主題はそんなに奇抜なものでもないんだけど、 権威批判的なイヤミや卑屈さ、ナルシスを感じさせないで 軽く楽しくキュートに見せたのが新鮮 リチャードのぜんまい人形みたいなイギリス英語のしゃべり方と ギャロのラッパーみたいなヒップホップ英語が対照的で面白いし ジョニー・デップの意味深な出演のしかたは消化しきれなかったけど 考えなくても面白い映画でしたよ。うん。 |
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