moonshine  エミ




2002年04月09日(火)  『月光』 恋うる心 その悲しさと美しさ

 みなさんも、お風呂の中で歌を歌いますか?

 そう、私は、自他共に認める『ハード・バスルーム・シンガー』です。
 次から次に、思いつくままに歌い続けます。ふと我に返ると、かなり熱唱しているときもあります。
 
 今日は本当に久々の歌を思い出しました。
 もう、10年ほど前に発表されたものです。
 私はこの歌が本当に好きで、でも、こんなにも好きになったのは、6,7年前からだと思います。この歌がピカピカに新しかった頃より、私自身が、すこうし大人になってからのことです。

 なんたって、歌詞がいいのです。
 もちろん、曲も良い。歌っている人も大好きです。
 でも、あの静かな、派手さや涙腺を狙ったところのない抑えた曲に、この詞が乗っていなかったら、私はこんなにも好きにはならなかったでしょう。

 2番から、終わりまでの歌詞を書きます。
 この日記では時々、著作権を無視した引用が見られますが、許してください(←誰に言ってるのだ?)。

『何かを期待することで 時にすれ違うけれど
 無心に与え合い続けることは 
 夢の道端に咲く花のようだ
 誰にできることなのだろう

 ひとつの思いだけを貫こうとすればするほど
 愛とは程遠い力に 激しく揺さぶられる

 
 波のうねりのような 正直なわがままを
 もっとぶつけてくれ  
 ごまかしはしない あなたを抱きしめよう

 
 とぎれた薄い雲が 目の前をまた横切れば
 密かにも大きな決心が 今夜もぼやけてゆく
 
 闇の中から柔らかに月は照らし続ける
 少しずつずれながらも 手探りで寄り添い歩く心を』

 
 私がこの詞に感動せずにはいられないのは、決して長くはない1曲の中で、人が恋する心、その暗さ、悲しさをきちんと描ききっているところです。
 
 無償の愛の尊さに憧れながらも、「誰にできることなのだろう」とその難さを嘆く。
 激しく思う心にも酔いきれず、「愛とは程遠い力」、己のエゴに気づいてしまっている。
 それでも、「わがままをもっとぶつけてくれ」と、相手のエゴを受け止めようとしている。
 
 夜の空には薄い雲。
 強くは無いけれども光を投げかけ続ける月。
 そして、闇の中、決して重なりはしないけれども、「手探りで寄り添い歩く心」。
 
 恋すること、その悲しさ。だからこそこんなに美しいのでしょう。
「歩く心“を”」
 という助詞で終わっているところが、なんとも切ない、完結しない余韻を残します。

 『月光』
 といえば、今は鬼束ちひろだったり、
 偉大なるベートーベンだったりするのでしょうが、
 私にとって「月光」といえば、この歌。
 みなさん、ご存知ですか?

 シングルカットもされていないし、コンサートで歌われるようなメジャーな曲でもなく、「これ、大好き!」ていう声はほとんど聞いたことがないのですが、
 ゆうに200曲くらいはあると思われる彼の詞の中でも、これは本当に完成度が高く、普遍の感情を叙情的にうたった傑作だと思っています。
 私の心の中での、永遠のマスターピース。
 
 月の光のない夜ですが。
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