500文字のスポーツコラム(平日更新)
密かにスポーツライターを目指す「でんちゅ」の500字コラムです。

2002年09月26日(木) 薬やめますか。それとも・・・

 日本モーグル界期待の男子選手2人が、大麻取締法違反(所持)で捕まった。今後、彼らが再び国を代表して海外を転戦する事は十中八九ない。一言で言えば「終わり」である。
 折りしも大リーグでは、筋力増強剤の蔓延が問題になっている。先の冬季五輪では、赤血球数を増すエリスロポエチンやダーベポエチンといった薬の使用でメダルを剥奪された選手がいた。過日亡くなった「褐色の弾丸」ボブ・ヘイズは東京五輪100mで金メダルを獲ったあとNFLで活躍、更なる栄光を手にしたが、薬とアルコールにおぼれ晩年は不遇だったという。そしてコカインやアルコールで度々問題を起こすマラドーナにも、今後指導者の口はかからないだろう。
 それにしても、一流選手たちがなぜこうも簡単に誘惑に負けてしまうのか。競技力を高めたい、薬の力を借りて緊張から逃れたいなど動機は様々だろうが、それで得られるものは所詮泡沫のようなものだ。反面、もし発覚したら、その咎はこれから先の人生の全局面に付きまとう。せっかくの天賦の才をこんな事で無為にしてしまうのは、才能に恵まれなかった私から見ると余りにももったいなく思える。


ホンモノの価値(9/26)

 14日、パリで行われた陸上の国際グランプリファイナル男子100mで、ティム・モンゴメリ(米)が9秒78の世界新記録を叩き出した。これは、ベン・ジョンソンの「幻の記録」9秒79をも上回る。人類は薬なしでも進歩できる。その事をこの記録は教えてくれる。
 スポーツ選手の目指すもの。一つは名誉、もう一つは富。薬の力を借りればこれらを得られるかも知れない。だがそれは、まがい物を売るような行為だ。ファンは、自分と同じ生体機能を持つアスリートたちの素晴らしいパフォーマンスに拍手を贈る。それは人類の可能性を示すもので、薬の可能性を示すものではない。
 今の世の中、スポーツの世界だけにキレイ事を求めるのはムリがあるという人もいる。でもプロスポーツとは、ホンモノを見せて対価を得る職業だ。彼らの存在価値の本質は、その清廉さにこそ存するのであって、その前提を守れないアスリートは賞賛に値しない。


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