1月23日、ボクシング元ライト級・スーパーフェザー級2階級王者・畑山隆則が引退を発表した。 畑山といえば思い出すのはスーパーフェザー級2度目の防衛戦・坂本博之戦(00.10)。壮絶な打ち合いの末、畑山がKO勝ちしたが、互いの気迫・意地・プライドが真っ向からぶつかり合う、見応えのあるファイトだった。 スポーツにおいて、良きライバルの存在は貴重だ。相対する度に血がたぎり、武者震いにも似た昂揚感を100%闘争心という名のエネルギーに変えて全力をぶつけ合える相手。さりながら、互いに畏敬の念を抱き、見る者にもそれが伝わってくる。真の好敵手とはそんな存在だ。 だが、その存在は諸刃の剣。激しい光を放ち一瞬で燃え尽きるマグネシウムのように、死力を尽くした戦いは時に彼らを真っ白な灰へと変える。畑山も坂本戦の後、ギラギラした瞳の輝きが失われたように私には見えた。半ば燃えカス状態で臨んだ3度目の防衛戦での敗戦は当然の帰結だったともいえよう。 1月5日。坂本再起。1回KO勝ち。その直後、彼はリベンジの相手を失った。魂の炎が消えなければよいのだが・・・。
熱き血潮に触れも見で・・・(1/28)
ライバルに恵まれ、燃え尽きることのできた畑山は幸せだと私は思う。一瞬でも華々しい閃光を放ち、それが人々の脳裏に鮮烈な記憶となって焼きついているのだから。それは、死闘に敗れた坂本についても言える。 だが、どんなに強くとも、心底燃える事ができないまま引退の時を迎えた男は幸せだったのだろうか。世界ミニマム級チャンピオン・新井田豊・・・14勝3分無敗のまま、ただ1度の防衛戦すら行なわずにリングを去った23歳。表向きの理由は腰痛だが、本当は寂しかったのではないだろうか。抜きん出たその才能ゆえに、彼とまともに対峙できる相手のいない事が。彼の血潮を熱くたぎらせる、良きライバルがいたらあるいは・・・。 真剣勝負の醍醐味を知らず、灰になるまで完全燃焼することもなく行った彼は、後年それを悔いずにいられるだろうか。
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