2001年11月20日(火) |
ドッチラケの野球W杯 |
概して日本のスポーツファンは国際試合となると大いに燃える。W杯サッカーしかりオリンピックしかり。しかし台湾で行なわれた野球のW杯の、何と盛り上がりに欠けた事か。シドニー五輪に続いてメダル無しに終わったからではない。大会前もそして期間中でさえも、先に行なわれたサッカーのイタリア戦とは比較にならない程白けた雰囲気だった。 テレビの生中継が少なかった事もあろう。また、日本国内の開催ではなかったからかも知れない。しかし最大の理由は、今回の代表が日本の最強チームだと、誰一人思っていなかったからではないだろうか。 今回のW杯を、主催者のIBAF(国際野球連盟)は、そして日本球界はどう位置付けていたのか。そして、代表チームは大会の目標をどこに置いていたのか。 今大会は、これまでの世界アマチュア野球選手権を改称し、ワールドカップとして行なわれる記念すべき第1回大会だった。プロ選手も参加できるようになり、各国ともそのレギュラーシーズンの日程と重ならないのだから、本来であれば最強の選手たちが一堂に会する文字通りの「世界一決定戦」にすべきだった。しかし、野球発祥の地・アメリカの代表チームは2A級・すなわちメジャーの3軍の選手で構成され、我が日本もプロとアマチュアが中途半端に入り混じるチーム編成になっていた。つまりサッカーのW杯のように、ある種「国の威信」をかけて戦うのとは程遠い「やる気のない」大会だったのだ。これでは盛り上がれという方がムリである。 日本代表チームの今回の目標は、シドニーで失ったメダルを取り戻す事と、そのために世界に君臨してきたキューバを打ち破る事だったはずだ。そのキューバは国内最高の選手を集めて代表チームを編成しているというのに、日本はプロアマ対立の名残で未だにいびつな談合編成しかできない。参加したプロもどういう基準で選ばれたのかわからず、中には1軍半の選手もいる。つまり、「日本の野球界を代表するチーム」としての日本代表とは言い難いメンバーなのである。 また大会中、先発はプロで固める事が殆どだったが、それは裏を返せば、選手交代をする都度、確実にレベルの落ちる選手が出てくるという事である。もちろん窮地に陥ったチームを立て直せるスーパーサブのオプションも著しく乏しい。これで世界最高のチームに勝って金メダルが獲れると本気で考えていたとすれば、全くおめでたいとしか言いようがない。そもそもW杯と名称が変わったところで、それだけでは大会のステータスが上がるとも考えられない。もちろん野球そのもののステータスも、である。サッカーやメジャーリーグ人気に押される中、この危機感の無さは深刻を通り越して哀れでさえある。
日本が準決勝でキューバに負けた時、私は悔しかった。しかしその悔しさは、敗れた事による悔しさではなかった。今考えうる最高のメンバーで戦う事のできない日本球界の体制が悔しく、また虚しかったのだ。だから、3位決定戦では私は日本チームの負けを祈った。五輪に続いてプロ混成チームでメダルを逃せば、少しは目を覚まして真剣に勝つための方策を考えてくれるかも知れないと思ったからだ。仮免みたいな銅メダルをもらってヘラヘラと喜ぶより、本気で悔しい思いをして考え方を根本的に変える機会を得る方が、後々の財産になると考えたのである。 …しかし…その考えも甘かったのかも知れない。テレビ中継で解説をしていた堀内恒夫が「いいチームでした」「よく戦いました。紙一重でした」などと上べだけの賞賛に終始したのは論外として、翌日の新聞各紙(一般紙)も攻めや投球のミスについては書きながら、こうした惨めな結果になった根本的な原因に言及した所は無かった。もっと驚いたのは、当事者の阿部捕手が悔しさを口にしながらも「もう一度このメンバーで戦いたい」というピントが激しく外れたコメントを残していた事だ。何度も言うが、本当にこのメンバーでガチンコの世界大会の頂点に立てると思っているのだろうか。 唯一の救いは、全日本を率いた後藤監督だけはどうやら危機感を持っているらしいという事だ。それはこんなコメントから読み取れる。「攻撃ではスピードがあって、鋭い打球が打てる選手がもっと必要になる。国際大会での形が見えた」。一見、何気ないコメントのようだが、頑ななまでにプロをスタメンに並べて戦った上で、これでも通用しないんだよという事を球界全体にアピールしてみせた。かつそれを言葉の上でもなぞったのだと取れなくもない。 このメンバーで戦わざるを得なかった監督自身が発した「危機感を伴ったメッセージ」を、プロアマ問わず真剣に受け止めるべき時が来ている。2002年サッカーW杯でもし日本が躍進を遂げ、対照的に2004年アテネ五輪で野球がジリ貧に終わるようだと、日本でのこの競技の未来は暗澹たるものになるに違いないのだから。
興味深いオリックスのドラフト戦略(11/20)
ドラフト会議が終わった。日南学園の寺原ばかりに注目が集まった感があるが、オリックスの15巡目までの指名にも驚いた。 オリックスは去年、北川投手らドラフト下位の選手を「契約金ゼロの出来高払い」で獲得して話題になったが、今年も現職の中学教諭を含めた多数指名で度肝を抜いた。 でも、これは結構面白い。大量指名するという事はそれだけの人数がクビになるという事だから、2軍選手らにとってこれ以上の刺激はない。いわゆる2軍ズレさせず、常に危機感を持って野球に取り組ませるにはこれ以上ない方法とも言える。また、プロで通用する可能性のあるより多くの選手にチャンスを与える事で、ダイヤの原石を発掘できるかも知れない。 現実にクビを切られる選手についても、社会人野球への復帰の道が開かれた事で、プロでの戦力外=野球生活断念という図式は既に崩れている。 パ・リーグ各球団は資金難にあえいでいる。限られた原資で戦力強化を図るには、このぐらい思い切った手があってもいい。何人が正式契約にこぎつけるか分からないが、来季この「ドラフト団塊の世代」に注目してみたい。
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