つたないことば past|will
「シノの中にも何かいんのな」 空色の瞳は目の前に佇む、子供にしては大柄な少年を臆する事もなく見つめる。 大柄の少年は何の事だ、と低く放つ。 「だってオマエ、体ン中に蟲いるんだろ?オレも」 空色の瞳の少年はポンと軽く腹を叩く。 「ここにいるんだってば」 シノは何が、と言おうとしたけどやめた。 この少年の事情など知った事ではないが、それは紛れもなく重くて、 自分がこの少年と一緒に背負うのは無理だと確信した。 その、酷く悲しげな笑顔で。 まだ10年をちょっと過ぎたばかりしか生きてはいないが、それでもこんな 特殊な一族の中に生まれたからには、世の中の汚くて醜い欲望やどうにも ならない現実が数え切れないほどある事をシノは知っている。 自分が今、子供だからと言うのも関係ない事も知っている。 中忍試験の第3試験で、日向ネジがヒナタに突き付けた「変わらない現実」も そのひとつだ。 ヒナタは変われなかったわけじゃない。 しかし敗北という結果が完全に変われなかったという現実だ。 シノにも自分はこの一族の運命から逃れられない「変わらない現実」がある。 だけどそれは産まれた時から義務だと思っていたし、それに不満もない。 自分の体を蟲に貸し与え、その分手足になって戦ってもらう。 何の不満もない。 そう思っていた。 (以下略)
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