祝杯をあげよう。迷いもあるだろう。憎しみもあるだろう。 哀しみ・痛み・怒り。数え上げればきりはなく。 ただとめどなく溢れる涙をどうする事も出来ないだろう。 神さえ見捨てたこの世界。教えを請う人もなくば、 習うべく教訓も存在などしない。ただ刻まれた敗北。 しかし今はこの杯をかがげてくれ。何もないその両手で。 いくつもの命をささげた、この大地。 痛ましいほどに焦げた体をすり寄せた、この緑。 その青を失ってしまった大空も…いつしか過去になる。 呆然と開かれたままの瞳に映るのはただの闇だとして。 たとえばそうだとしても。今は幸せを謡うのだ。 高らかに。その潰れた声を震わせて。 そうして心に誓えばいい。永遠にこの過ちを繰り返さないと 全ての心が誓えばいい。 それでも絶望は、過去にするにはまだ生々しく 夢見る明日もないだろう。まして光の射す未来など。 誰もが迷い子のまま、立ち上がる勇気も思い出せない程に。 だからこそ、祝杯をあげるのだ。今この時を忘れない為に。 この盃を受けてくれ。どうぞなみなみつがせておくれ。 花に嵐のたとえもあえるぞ。今日こそがこの国の始まりだ。 戦争は今、終わった。
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