| 2002年10月23日(水) |
白日の下、全てをサラケダセ。 |
小さい頃、蟻を見ると無性に気分が悪くなる事があった。 それは多分、それ以前の記憶が残っているから。 小さな田舎町は未だ舗装されてない砂利道がたくさん あって、そこにはいろんな生物が所狭しと生きている。 水溜りに溺れてる蟻をみつけたのは偶然。 そのままやり過ごせば忘れてしまう些細な出来事。 どうせなら楽に死なせてやろう…子供のそれは実は無慈悲。 よかれと思い、押し付けた指。しかし思ったより強い生命力に 簡単に負けたその指は、むなしくその行動を繰り返す。 始めは無邪気な優しさ。そして思い通りにならない怒り。 さらには間違いに気付いた恐怖。 今思えば、その水溜りから救ってやる事が一番の優しさ だったのだろう事が思いつかず、苦しまずにさせてやろうと した行為がさらには小さい命を苦しませた遠い記憶。 そのせいか、今では虫一匹殺せない。夏に悩ませる蚊でさえ 逃がして一緒にいる人間に怒鳴られる始末。 あんなにも些細な出来事でさえ、今の自分という人間を 作り上げているのだと思うと少し自分に愛着がわく。 人は自分の傷に目を背けて生きて行く事は出来ない。 何かを作り出す仕事をしている人間程、それが大切になっていく ように思える。たくさんの自分の心の裏側に閉じ込めた傷を 何度も残忍に掘り起こしてみる。 まるで真昼の太陽にさらすように向き合ってみる。 さらけ出されたそれは、その分大きく痛みを残すのは覚悟の上。 全てをさらけ出すというのはきっとそういう事で。 自分は役者だから、舞台の上でだけそうするのだろうと思う。
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