快賊日記「funnyface」

2001年09月05日(水) 海上戦闘異常なし

死の象徴を染め抜いた海賊旗「ジョリーロジャー」を翻し、
今日も奴らは海を行く。
社会と法のすべてを軽蔑し、死を嘲弄して来た男達にとって
縛り首の恐怖も歯止めにならない。
「そうだ。愉快に短く暮らすってぇのが俺のモットーだ」と豪語する
彼等にとって、やがて来る死は恐怖の対象にならない。
たとえそれが死刑という最悪の形だとしても。
彼等にとっては平凡こそが、憎むべき敵であり恐怖でもあるのだから。
そりゃもしかしたら死の直前はビビるかも…でもそれはまた別の話。
今はほら、目の前に獲物がいる。「そろそろ戦いをおっぱじめようか?」
「いつか来る死の恐怖は先にお前が食らっておけよ。」
耳をろうする轟音と火薬の臭い。大砲の発射を合図に戦闘開始。
狙いを定めたマスケット銃が舵手を倒し、船は衝突。
大勢の海賊どもが武器を手に手に獲物の船になだれ込む。
戦おうとする者はいない。勇敢にも立ち向かえば、手練れのカトラスに
喉を切り裂かれるだけだ。彼等の強さは嘘じゃない。
世間の常識を捨てた時から、海の厳しさを知った時から、
彼等は甘えて生きて行く事は出来なくなった。
それが自分の求めた夢への代償だから。
だからこそ彼等は強さを誇張する。ことさらに。
ジョリーロジャーはただの旗じゃない。目印でもない。
敵への威嚇だ。獲物に近づき旗を掲げて降伏を促す。
赤の無地は全員の死を意味していた。半月刀の旗は容易に死を
想像させ、砂時計は死までの時間が迫ってるという脅し。
そうやってまた一つ夢を手にして行く。人々の恐怖と引き替えに。
「まぁ、そう言うな。俺もいつかは同じ運命だ」
さて今日の酒はどんな味がするだろう。きっと極上だ。
だから止められない海賊は。明日もやつらはせっせと船を漕ぎ
戦いにでる。真っ青な空の真下の海の上。


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