衛澤のどーでもよさげ。
2005年10月12日(水) 天ぷら。

二、三週間に一度くらいは顔を見せておかないと、実家の母がやたらと心配してくれる。これから当分は作業が詰まって立ち寄ることもできなさそうだし、日用品の買い出しのついでに実家に寄ることにした。

ぼくが顔を出した時間は夕方、母は台所で天ぷらを揚げていた。
母は加齢のため骨が弱くなり脚が痛むし喘息持ちだし、ぼくは時折持病のために寝込んで動けなくなることがあるしで、会えばお互い「調子はどうよ?」と訊ね合うことになる。そんなことからはじまり、身の周りの変化や見聞きしたニュースなどについて話しながら、ぼくは天ぷらを揚げる母の姿を見ていた。

揚げものがそろそろ終わるかという頃、母は揚げたてのきびなごの天ぷらを二尾だけ、ぼくにくれた。きびなごは小さな魚だけど身が真っ白できれいで、食べるとほくほくとして旨かった。
「旨いな。きびなごは身がきれいな。食べさせて貰えてよかった。旨いもの喰うとうれしいな」
そんなことを、多分ぼくはたどたどしく言った。すると母は、
「そうか、うれしいか」
と笑った。
「うれしいな。うれしいことが沢山あると倖せな」

そう答えたとき、ぼくは確かにとても倖せだった。


【今日のミステリ】
午後の時間が深くなるに連れ、喉が締まって苦しくなってくる。自分の身体だが、どうにもならない。


エンピツユニオン


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