ゆったり望郷の湯につかってきた。頭痛も治った。帰りに、トマト園でトマトを買い、ずいぶん前に何で行ったのか覚えがないが、ふと迷い込んだひっそりした農村を思い出し思い出し、訪ねてみた。
もっと早く思いつけばよかったと思うくらい感性がつまった場所だった。まだこんな場所があったのかと思うくらいひなびた村落。
古い建物は廃墟に近いくらい古く、一方で何軒も新築している。そのうち一軒の屋根を見て魂が消えた。なんと金色(おそらく銅葺きしたばかりでぴかぴかなのだろう)。そういう人間くさいところが無かったら、ゴーストタウンと思いこんでしまいそうだ。
写真を撮っていると、おばあさんが話しかけてきて、いつまでもいつまでも話しつづけていた。村のことを教えてくれたので、ありがとうございます、と言って私は車の方へ歩き出したのだが、もう50mくらい離れてよく聞き取れなくなっていてもなお、私に向って話しつづけていた。話し相手がいなくてさみしかったのだろうか?
こういう場所が私には何カ所かある。でも、どこだったか思い出せない。つらい。福島県だったか、新潟県だったか……景色はすっと思い浮かぶが、地図の上では見つからない……たぶん永遠に。
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