父と母が続けている市民オペラの発表会。 Hと子ども達を連れて観に行く。
ロビーで子どもを見ながら、Hと交代で鑑賞。 「歌劇団結成から6年、満を持して取り組みます」と、 パンフレットには指導者の言。
そう、満を持しての「魔笛」である。 そして私達も今回初めて、本番の舞台を見に行くのである。
九官鳥が首を絞められたような声で歌う父に、 頼むからやめてくれ!と心の中で懇願した6年前。 何も今さらその年で歌など始めなくても、と心底思った。
けれどもどんなに仕事で疲れても毎回欠かさずに練習に通い、 団の理事にまで引き受け、今や舞台も6回目になる。
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他人が観れば恥ずかしい学芸会である。サムイ、と言われるかもしれない。
還暦もとうに過ぎたジジババが、厚化粧をして、ヒラヒラのドレスを着て、 日頃耳にするプロの歌声とは程遠い声で、パミーナだのタミーノだのとやっているのだから。
なのにどうしてか、舞台で両手を広げて王子になりきっている父は、 今や、九官鳥ではなく立派なテノール歌手である。
パパゲーノと二重唱を歌う母はお姫様になりきっていて、 確かにそういえば、私が小さかった頃にはこんな娘の片鱗を残していた。
涙なくしては観られないのである。 この人達が自分の両親でよかった。
2009年09月23日(水) 2006年09月23日(土) 2004年09月23日(木) 気づいてしまう日
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