小淵沢にて、在宅ホスピス医N先生の講演会。Tちゃんと聴きに行く。
「ようやく15年間続けてきたことが、国に認められる時代になりました」とN先生。 がん対策基本法がこの6月に成立して、これまで市民権を得ていなかった「緩和ケア」は、治療の早い段階から開始できるように、医師向けのマニュアル作成や、在宅緩和ケア支援センターの設立などが決まったのである。
「15年間続けてきたこと」について、N先生はいつも冗談半分だ。 「「ホスピス医です」といっても「ホステスですか?」と聞かれるほど知られていませんでしたよ」なんて言って、そのご苦労を聴衆の笑いに変えてしまう。
けれども、その裏に「終末期に命を病院から本人の手にとり戻す」ための、大変な戦いがあったことは確かだ。 従来の医療の常識から批判され、また従来の医療の常識を批判した。
だから、法律制定を喜ぶ一方で、ホスピスの本質が揺らがないかについても 「制度がどうなっても、どんな最期を迎えたいかということは、自分自身で決定しなくてはいけませんよ」と言及している。
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命の始まりと終わりの取扱いは、尊重しすぎてしすぎるということはない。 その瞬間は、人間の尊厳そのものである。
そして、他者の「その時」を尊重することは、自分の尊厳を保つことでもある。 最も重要な共感であり、社会秩序の、元始である。 私達の誰一人として、工業製品の生産廃棄ラインみたいなところで現れたり消えたりしちゃいけない。
だから、誕生期と臨終期における医療とのかかわり方については、 双方一緒に考えるべきだ、というのが、私の持論なんである。
N先生はその私の考えを知っているから、帰り際の挨拶では、 「今は生まれ際の方が大変、そっちも頑張って」と励まされる。
2005年09月17日(土) 2004年09月17日(金) 気配
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