週末の2日間、不安定なAの衝撃吸収マットに徹したが、最後に油断した。
こういう、家の中がざわついているような時には、 大人も子どもも早寝早起きを旨としなければいけないのだが、 つい佐藤優氏の「自壊する帝国」を読み始めたら止まらなくなった。
しかも悪いことに、美味しそうなロシア料理やなんかと一緒に ウオトカを飲む場面がしばしば登場するので、 つい、−ウオトカも極上のキャビアも家にはなかったけれど−、 傍らにジンを置いて、のめり込むことになった。
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ソ連は目に見える宗主国も植民地ももたない帝国である、というのが、 ソビエト連邦を理解するための重要な出発点として、繰り返し書かれている。 そうした視点から著者は、ソ連共産党中央委員会の「絶大な権限をもつが絶対に責任を負わない」という本質を内につかみ、 人脈を構築し、帝国の自壊という瞬間に立ち会う。
あらゆるエピソードには、 盗聴、情報操作、陰謀という管理社会のしくみにくわえて、 二重権力、実態の空洞化という、このシステムが自壊してゆく様子が登場する。
こういうものは、私は「何か近未来的なものの足音」と誤解していたが、 つい最近まで過去に明確に存在し、現在でも不明確に存在する。 不思議なのは、なぜ、自壊した帝国の亡霊の足音が、わが国できこえるのかということである。
呼び寄せている霊媒者は一体誰なのか。
佐藤氏の仕事は、小説仕立てには極めて向いている。 国家という生き物の氏素性、性格、信仰、こういうものを詳らかにしていくのは、インテリジェンスを刺激する作業であるし、関係する人間を如実にあらわす。氏の仕事ぶりからは、表層的なものを追っていても、他国というのは何も本質をみせてくれないことがよくわかる。心理カウンセラーのごとく相手の深層に同調するセンスと教養が必要だ。
というわけで、内容は面白く読んだ。 ただし、くれぐれも、子どもとの付き合いに疲弊した夜には、おすすめしない。 週のはじめにひどい朝を迎えたくなければ、早く寝ることだ。
2004年08月28日(土) 勝って嬉しい花いちもんめ
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