木曽谷ほど雨の似合う土地はないと思っている。 あいにく晴れていたけれど、今日はそこへ仕事ででかけた。
塩尻の広々とした桔梗ヶ原から徐々に狭い木曽谷へ入って行くシークエンスは、いつ通っても不思議な期待感を抱かせる。大好きな泉鏡花の「眉かくしの霊」の舞台と思うと、一層ミステリアスな気分になる。
分水嶺になっている鳥居峠というのは本当に不思議で、トンネルの入り口では北に向って流れている川が、トンネルを越えると南が下流方向になっている。 よいしょと峠を越えるわけでなくトンネルをただ抜けるだけなので、太平洋側と日本海側を分けているという実感が乏しい。しかし山の中の暗闇を通過していても、道路わきの分水嶺と書かれた表示を境に、まるで鏡の向こうにいる自分に移り変わったような気分になる。
世界の分かれ目とか、こちらではない向こう側というのは、いつでも私を想像の世界に駆り立てるのだ。
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仕事を終わり、HとAに、朴の木の葉でくるんだ「朴葉まき」なる郷土の季節菓子を買って帰宅。複葉の状態のまま葉に餅をくるんだ、なんだか面白い和菓子なんである。
2004年06月23日(水) 疲弊
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