仕入れておいたシャンパンで、Hと乾杯する。 私とHの間にあるいくつかの記念日の、今日はその一つだ。 ありがたいことにAはさっさと眠ってしまった。
日本が国際的に評価されないのは外務省の鹿鳴館外交のせいだ、とか、 佐渡へ仕事に行ったS君は何しているだろうね、とか、 とりとめのない話をしつつ、ふと、結婚して何年になるだろうかね、と、 そういう話題になった。
確か5年だね、と言うと、Hは その間に俺2回も山に失敗したな、とつぶやいた。 この男は、こんな会話の中でさえ、振り返ることは自分の山なんである。
次はきっとのぼれるよ、と一応言ったけれど、 何だか真っ当すぎるフォローで自分らしくないなと思い、 高尾山にね、と付け足したのだった。
|