遅くなった晩御飯の用意に、慌てて着手する。 無我夢中の手作業の傍ら、ラジオを聴く。旧暦の話をしていた。
*
月の満ち欠けを基本とした旧暦は、日本では「旧」などと いささか不名誉な冠が付いているが、太陰暦、つまり 月の満ち欠けに基づくサイクルを、太陽暦に組み込んだ太陰太陽暦と呼ばれるもので、 日本をはじめ四季のあるアジアの地域では、季節の変化に応じた 大変適した暦なのらしい。
沖縄や中国、台湾などでは、今でも旧暦が日常的に意識され、 節目の行事も旧暦ベースで行われている。
旧暦の仕組みは難解である。江戸時代に6回も改訂されている。 「閏(うるう)月」というイレギュラーな月が追加されるため、 1年が13ヶ月あったり、365日に満たない年があったりする。 今年は、2月が2回来るという解釈になっているそうだ。
難解な計算方法のため、一般人には新年に暦が発行されるまで、 来年の節目が定かでなかった。 「来年の話をすると鬼が笑う」という諺は、これに起因するらしい。
*
季節感と暦が整合して、自然のリズムと共に生活することは、 確かに心地よかろうと思う。 身体にピッタリと馴染む服を着て暮らすような感じかもしれない。 農作業などに従事する人にとっては、快適以上の意味もある。
ちなみに今日11月11日は、旧暦では長月、つまり9月の29日で、 秋の一番最後の日にあたるそうだ。 明日からは、ついに、冬である。
|