マイケル・ムーア監督の初作品「ロジャー&ミー」を観る。 GMの工場が閉鎖され多くの失業者を生み出した監督自身の故郷のドキュメンタリー。 GMが全世界だった人生や家庭が、根底から崩れていく。 それなのに、馬鹿明るい慰問パレードが街を行きかい、音楽ホールでは 慰問のタレントによるショーが繰り広げられる。 失業者は、これらに興じているうちにさらに気力や財力や家を奪われ、 緩慢な死に向っている。
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広い国土をもつというのも、考え物だ。 日本ならば同じ距離で台湾や中国やベトナムなどの異国を意識することができても、 アメリカのような広大な国土では、せいぜい東海岸から西海岸に到達するだけだ。まだアメリカなのだ。
住んでいる人達はそういう自覚があるのか知らないが。 アラスカとフロリダは別天地と思い込みバカンスに出かけても、そこはどのみちアメリカなのだ。
アメリカ人はアメリカから逃れられない。 どこまでいってもべったりとついて回る。アメリカの資本が。 同じ広告、同じ商品、同じ言葉、同じ文化、同じ価値観。選択の余地はない。
常に何かを消費し、サービスを受けることから逃れられない。 知らず知らずのうちに、自分の自立心も命も、大資本に吸い取られていく。 こういう、笑いながら死ぬような運命から、死ぬまで逃れられない。
この映画を観ていて、この国のそういう恐ろしさを感じた。
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