リンゴの産地として有名な、県北部の三水村というところへ。 観光パンフレットなどではこの界隈を「北信濃」とか言うらしい。
山の形がやさしい。アルプスの切り立った山の周辺とは 地質が異なるのである。
地質の差は地形の差を生じ、土壌の差を生じ、地形と土壌の差は その上に存在する植物の差を生じさせる。 植物の違いは、生息する動物の差を生じさせる。
こういうものが総合されて、自然の景観が異なってくる訳である。 気候風土とは、本当に面白きものである。
細い細い道が幹線道路になってる上に、まともな案内板がないので、 行きつ戻りつしながら運転する。
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ここの農村風景が美しい訳を、もう一つ発見。 道が地形になじんでいる。
別にわざわざそうしている訳ではなく、察するに道路改修の当てがないだけだと思う。 整備されていない、旧来の道を舗装しただけの道路は、 アップダウンのある地形にのっぺりと張り付いている。 横断面、縦断面をとったらすごい図面になるだろう。
切土盛土の造成がされていない道とは、こんなにも風景に溶け込み、 心が落ち着くものであるかと、ハンドルをとりながら見とれた。
地形を改変した結果生じる、道路ののり面というのは本当にやっかいで、 立派な道路ができ利便性が高まることの代償として、 構造物としての存在感をみせつける。 この影響を如何に少なくするかが、道路屋さんの技術的課題なのである。
アップダウンの多いのっぺり道の運転を楽しみながら、 そういえば東山魁夷の作品で、このような道を描いたのがあったことを思い出した。 日本画家の巨匠が人生になぞらえて描いたその道は、本当に素朴な野道であった。のり面は当然、ない。
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