視界の片隅がやけに明るいと思ったら、 窓から月が、ぽっかり出ていた。 煌々と輝くというのはこういうことだ、と言わんばかりに。
アンデルセンの「絵のない絵本」は、 確か、月が語り手だったな、と思い出す。 一連の物語の中の、道化師が最愛の人と死別する話は、 切ないながらも甘美な余韻があって、 その昔、妙に内向的にしみじみと味わったものである。
ああいう直球勝負の自分はもういないけれど、 花火みたいにわずかな時間でも、 そういう時期が人生の中にあってよかったと思う。
そういえば当時、 ドビュッシーの「月の光」もすごく好きだった。
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