昨日帰宅。 依然発熱。が仕事。能率が全然あがらない。
昨日車中で読んだ、「星の牧場」という本。
戦争で記憶を失い、山の牧場へ帰ってきた、「モミイチ」という男の物語。 戦地で失ってしまった持ち馬「ツキスミ」への思慕が痛々しい。 そして美しく幻想的な自然の情景が、このファンタジーの特色である。
モミやツガ、コケモモやなんかが出てくるから、おそらく 舞台は標高2000m以上の亜高山帯から高山帯にあたる場所であろう。 ジプシーとして登場する「山の衆」は、 まあサンカの類を表現しているのであろう。 ジプシーたちは森で、社会から距離をおいた生活をしている。
一人のジプシーの男の言葉。 「おれが、そもそもジプシーになったのも、
人間のさびしさをまぎらわそうとするためであった。
ひととはなれて山のなかをさまよっていることは、そりゃさびしいさ。
しかし、人間てものは、人間と人間といっしょにくらしていても
さびしいもんだから、しょうがねえなあ。
(中略)
おれがオーボエなんてけいこしはじめたのも、
いや、おれだけじゃねえ。ジプシーたちがみんなそろって
笛をふいたりラッパをふいたりするのは、
みんなちからいっぱいためいきをついているみたいなものなのだ。」
*
物語の後半で、 熱でうなされたモミイチが、愛馬ツキスミを想う場面。
「どこだ どこだ おーい ツキスミ ツキスミ
ツキスミ かわいよな あいたいよ
なあツキスミ 寒いか かあいそうよな。
雨はつらいよな、こらえてよな。ツキスミ おれはあいたいよ
ツキスミどこだ ツキスミつらいよな いつもいつも
いっしょにいたいよな。
モミイチは高熱にあえぎながら、なみだをながしていた。
ツキスミ ツキスミ と口ばしって、なみだがとまらなかった。」
幻聴が聞こえるほど、頭がおかしくなるほど、 誰かを失って悲しいという思いを、私はまだしたことがない。
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