連日続く雨。 雨が降るたびに、Hと背後の山の様子を心配する。
数年前の火災で丸裸になった山の、土中に残る根の土壌緊縛力は ぼちぼち期限切れになるはずだ。 治山工事や植林が急ピッチで入っているようだが、 失った森林の機能は、一朝一夕には回復しない。
土砂崩壊というのは、要因がある。そして予兆もある。履歴もある。 要因と予兆と履歴を観察すれば、多くの場合、回避することができる。
過去の災害履歴や地形地質の特徴などから、慣習的に利用を回避してきたような 斜面地や崖地の周辺へも土地利用が広がったこの時分では、 時々崖の上なんかに 「あんなところによく家や道路をつくるなあ」という様子が見かけられる。
人々は、まあ死ぬことはないだろうと思いながら暮らすのだろう。 土壌が侵食され、斜面に亀裂がはしり、小規模な崩落が起きても、 一旦決めた生活をできるだけ維持したいので、 そうした異変をにわかに認めるわけにはいかないのだ。
サマワにいる自衛隊はまるでそんな感じだね、と、 激しい雨音をBGMにコーヒーを飲みながら、Hと話した。
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