母がつけていたテレビをふと見た。 象が踏んでも壊れない筆箱のことを放送していた。 これを見ると私は実にモヤモヤする。 モヤモヤというより気が遠くなる感じにすらなる。
低学年の頃にこの筆箱を母が私にくれた。 どうも兄貴のお下がりっぽいが、私はそれでも嬉しかった。 学校へ持って行くと下校時になってクラスの男子が「お前の筆箱象が踏んでも壊れないやつやん」みたいなことを言いだした。 「うん」と言うと男子は私の筆箱を取り上げて床に置き、試そうぜとばかりに踏み始める。
こいつら一体何をやっているんだと???な私をよそに、男子は筆箱をかわるがわる踏む。 二人で乗ったり三人で乗ったりする。
私にはこの先の想像がついた。
やがて調子に乗った数人が筆箱の上で飛び始めた。 バキャッと音がして筆箱は割れた。
クラスの男子は瞬時に凍り付きヤベえといった空気になる。 女子はドン引きしている。
私は怒りと虚しさがドロドロと渦巻いた状態で、木っ端微塵な筆箱を回収し無言で帰った。 別に自分が欲しくて買ってもらったわけでもないので執着はなかったが、踏み壊されたあの瞬間の屈辱は今でも忘れ得ない。
親に言うと数日後別の筆箱を買ってくれた。 それから私が何をしたかというと、 男子の筆箱をボールペンで突き刺してまわったくらいかな。
顔刺さなかっただけありがたく思って欲しい。
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