そう、それは大晦日にさかのぼる。
夕方に宅急便がやってきた。 お歳暮というのかお年始というのか、 クール宅急便が二つ。
舌切り雀じゃないが、 一つは1キロ弱の箱。 一つは・・・抱えるのに一苦労のずっしりとした箱だった。
いぢわる爺さんじゃないが、 あたしが速攻で開けたのは、いうまでもなくズッシリとした箱のほうである。
むむ?
それは、 とんでもない量の「はまぐり」だった。
きゃつらは小さな音を出して、 自分らがまだ生きていることを主張していた。
・・・どうしよう。
大きめのボールに出してみた。 あふれた。
あふれた奴らを大きな中華鍋に入れた。 きれいに入った。
塩水を入れた。 そして料理人の父に電話した。
「ねーねー、はまぐりってどーやって活かしとくと?」 「ん?塩水に入れて涼しいところに置けばいいよ」 「涼しいとこってたとえばどこ?」 「玄関」 「え・・・」
かくしてこの大量のはまぐりは、 大晦日から我が家の玄関で、 年を越したのだった。
おかげで玄関は、 彼らのピュッピュピュッピュと吐き出した潮で、水浸しである。
正月料理は「おせち」と「雑煮」なので、 彼らはのんびりと玄関で時を過ごしていた。
そして今日、二日。 お年始のお客様がやってくる日。
ボウルに入った方の第一陣が、 ついに酒蒸しにされることとなった。
アデュー、はまぐり。 あなたたちとの日々は忘れないよ。
かくして大きな皿に盛られた大量のはまぐりの酒蒸しの出来上がりぃ〜〜。
・・・さて、次のはまぐりはいつ料理されることだろうか。
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