ほっこり日記
ふー



 千と千尋考

テレビでしていたのでみた。久しぶり。この映画は二回見た。

音楽が印象的で、そのころのことを思い出す。
白が自分の名前をとり戻すシーンは何回見ても鳥肌が立つ。

人は、そうして忘れていたことを、ただ思い出すために
旅に出るのかもしれない。

先日公開されたハウルよりも、世界が豊かだと思う。
ハウルは、ハウルとソフィーはいいけれど、世界観が貧弱だ。
酷評されるのも、千と千尋よりもその背景となる世界の
ファンタジーが弱いからだろう。
骨太な揺さぶりは圧倒的だ。

千と千尋のとき、試写会と同時に行なわれていた講演では、
とてもはしゃいでいた宮崎監督が、あまり出てこないのも
こうして比べてしまうとなんだか分かる気がする。

ハウルの上映中だというのにテレビ放映された今回は、まるで
評判の悪かったDVDの販売戦略なのかと勘繰ってしまう私は
人が悪いのかもしれない。

それにしても他の人々の存在感の大きさといい、千と千尋は、
永く日本アニメの秀作としてその名を刻むであろう。

琥珀と千尋がそれぞれの世界に帰るために別れるというのも、
ハウルどソフィーがハッピーエンドなことに比べると、より
感動を深くしているかもしれない。

私の人生において
「王子さまと王女様は、いつまでも仲良く幸せに暮らしました」
などというハッピーエンドは、ないのだから。

「いくつもの別れと涙をふり返ることなく、ただ生きてきました」
のだから。素敵な人との別れもあったし、そうじゃないこともあったし。
銭婆がいうように、一度あったことは忘れない、ただ思い出せないだけ。

そう、その記憶そのものというより、そのときの感情が蘇る。
別れるのだ、離れるのだ、ただ、そうするのだ、という。
その臨場感を逃さず、絵にした。

巨匠と言えど、あの境地とレベルは超えられないのだろう。
丁寧さと緻密さは超えられても、あの、ぐいぐいとひっぱっていく
あのパワーは、もう二度と結集しないのかもしれない。
それほどの仕事を、した宮崎以下スタッフを称えたい。








2004年12月10日(金)
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