去年の黄金週間はどこにも行けず、近隣をドライブして終了だった訳だが、今年は少し足を伸ばして隣県の観光スポットまで行って来た。 県を跨ぐ移動は慎むようにと言われていたのだが、当県の県庁所在地に行くより近いし、知る人ぞ知る的なニッチな所なので観光客でごった返すような事も無い。 実際、我々夫婦以外には数組しかいなかった。 そんな所で土産物を購入し、幼馴染に送ろうと思って早幾日、もう5月も終わろうとしている。 賞味期限はまだまだ余裕だが、ゴールデン・ウィークの土産なのに5月中に送らないってどんだけぐうたら……と自分に呆れつつ、幼馴染に電話してみた。 東京暮らしで万一武漢肺炎に罹って入院とか隔離中とかだと困るので、送る前に一応確認しとこうと思ったのだが、思った以上に元気だった。 一先ず、彼女も家族も息災なようで安心した。 だが緊急事態宣言発令下の東京は、色々と面倒らしい。 先日は高校生の子供の外部試験の送迎で新宿に行ったが、腹が減ったのに疫病が蔓延してそうな居酒屋ぐらいしか開いておらず、仕方無くバスタ新宿のベンチでコンビニのパンを食べたと聞いて、こちらとの温度差に驚愕した。 東京は凄い事になってんのな……。 ご主人はずっと在宅勤務だそうで、毎日料理しなきゃならないのが面倒だと彼女は言い、おすすめ料理は無いかと私に訊いて来た。 「いやそれ私に訊くか? 私もあなたと同じで料理嫌いなんだけど!」 「だからだよ! 料理嫌いなシオンちゃんならわかってくれると思って」 「あーそうね……鯖キャベツとかどうよ。前にテレビで見たんだけど、鯖缶とキャベツを炒めるの。簡単で美味しいよ」 「何それ知らない。水煮? それとも味噌煮?」 「どっちでもいいと思うよ。味が足りなかったら、後で何か足しちゃえ。あと、梅しそ味もいけるよ」 「えっ何それ……梅しそ味の鯖缶なんて聞いた事無い」 という事で、土産の他にも梅しそ味の鯖缶を送る事にした。 「そういや術後の経過はどうなの?」 幼馴染は去年、筋腫のために子宮摘出手術を受けたのだ。 ホルモンバランスの変化とか大丈夫なのかな……と心配していたのだが、意外や意外、彼女の声はとても晴れやかだった。 「それがねえ、物凄く快適! 子宮取って良かった!!」 何でも生理痛が酷く、出血も半端じゃなく多く、兎に角月経が辛くて辛くて大変だったのだそうだ。 そこまで大変なら、そりゃ取っちゃった方が楽だよな……。 「生理の無い生活ってほんと素晴らしい! 人生変わったよ! これならもっと早くに決断しとけば良かったー!!」 「う、うん。でも声のトーンが、ヤバい宗教に嵌まった人みたいになってるから気を付けて……」 電話越しにでも、声がキラキラと輝いているのがわかった。 取り敢えず、彼女が幸せで良かった。
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