天上天下唯我独尊

2014年07月29日(火) 現代のタマル達

旧約聖書に、タマルという女性が出て来る。
彼女の夫は子供を残す前に死んでしまったので、その弟と性交渉するように言われるが、子供が生まれても自分の子ではなく兄の子とされるのを嫌った弟は、言い付けに従わずに精液を地に漏らしたため、神の怒りに触れて死んでしまった。(余談だが、自慰行為をオナニーと呼ぶのは、この弟の名前「オナン」が語源だという)
じゃあそのまた弟を……という話になるが、末弟はまだちっこいので、暫く実家に帰ってなさいと言われたタマル。
しかし二度ある事は三度あるを恐れた義父が、末弟を自分と交わらせたくないのを感じ取ったタマル。このままでは神の血統を残せない。
なんと売春婦の振りをして義父に近付き、性交渉の末に妊娠。
当時、夫のいない女が身籠るのは御法度、石打ちの刑じゃ!となった時、タマルはすかさず証拠を出す。
DNA鑑定など無い時代なので、義父と寝た時に証拠になる物を貰っていたのだ。
儂の子じゃ……と義父に認めさせ、タマルは無事に神の血統の子供を産んだのであった。

さて、現代日本。
諏訪マタニティクリニックが、不妊治療と称して、妻の卵子に夫の父親の精子で受精させるという手法を取り、これまで79組が出産、118人の子供が生まれていたという報道があった。
(夫婦以外の人間から提供された精子や卵子で子供を作るのを「治療」と言ってしまう事には激しく違和感を覚える。それってチートじゃん)
全くの赤の他人から精子提供を受けるよりは、という気持ちはわかる。
最近は、差別や偏見の助長を恐れると言うよりそっち方面のクレームを避けるためなのか、改変されたものが多いが、アガサ・クリスティ作品の中では、犯罪者の子供はやっぱり犯罪者という話が多い。
そして私もクリスティ同様、DNAの呪いを信じている。
よくわからない馬の骨の遺伝子を組み込むよりは、夫に最も近い人間の精子で子供を作るのが安心だという気持はわからなくもない。
しかし、夫の父親の精子って、それって妻から見たら義父の精子じゃん。
気持ち悪くね?
夫から見れば、遺伝子的に自分の子供ではなく父の子、つまり自分とは腹違いの弟という事になる。
これに同意する夫も妻も義父も、頭がどうかしているとしか思えない。
更に義母がいる場合、義母はどう思うのだろう。
自分の遺伝子が入っていない、夫の子供を、息子の嫁が産むんだよ?
手塚治虫の「奇子」の世界じゃん。
(尤もあれは、長男の嫁の美貌に目が眩んだ父親が、財産を盾に関係を迫り、子供を産ませるというお話だったが)
直接性交渉する訳ではないとしても、遺伝子的聾桟敷に置かれる義母の立場はどうなのよと思ってしまった。

義父の子供とかフツーにムリですわーと言っていたら、主人がしょぼーんとして言った。
「でも、そこまでしても子供が欲しい人もいるんでしょ」
しょぼーんとするって事はあれか、お前も父親の精子でいいから子供が欲しいって事なのかい?
勿論私はお断りだ、そんなん提案されたら、躊躇無く離婚するよ!


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