天上天下唯我独尊

2012年05月14日(月) リラックマがやって来た

リラッくじをやってみた。
500円で外れ無しの籤を引いて、景品を貰うというものである。
コンビニでも時々似たようなものを見掛けるが、今までやった事が無かった。
何故挑戦したかというと、今回は景品が残り僅かになっていたからである。
足拭きマットが売り切れて、1等の縫い包みが1体と、弁当箱とペアグラスがそれぞれ幾つかの、3種類だけだったのだ。
これならいける、と思った。
目的は弁当箱だが、外れてペアグラスだとしても、日常的に使えるからいいや。
売り場の前で逡巡して、そう決意するに至るまで数分かかった。傍目には精神を患った怪しい女としか映らなかっただろう。
勇気を振り絞って、売り子のおばさんに声をかけて500円硬貨を渡し、祈る思いで引いた籤は何と!

「おめでとうございます〜! 縫い包みですよ〜」

おばさんと仲間の売り子さん達は、祝福の言葉をかけてくれたが、
「違う……私が欲しかったのはこれじゃない……」
と愕然とする私。
こんな要らんところで籤運使い果たすってどうなの。どうせ1等なら、ジャンボ宝くじの方が良かったよ。
「あのう、これ、他の景品に交換する訳には……」
と私が訊くと、おばさん吃驚顔。
「あらー、これじゃないのが良かったの?」
「ええ、お弁当箱が欲しかったんです……」
「じゃあもう1回引いてみたら?」
なるほど、その手があったか!
いやいやいや、次の1回で弁当箱が当たる確証は無い。最悪ペアグラスを全部引き当てた後の弁当箱になる訳だから、その場合の総額は……
と冷静になって考えると、これ以上注ぎ込むのは如何なものかと思ったので、
「いえ、いいです……」
と、おばちゃんが大きな買い物袋に入れてくれたリラックマを持って、とぼとぼと売り場を後にしたのだった。

家族連れのギャラリーでもいれば、欲しいという人に500円で売り渡せたけれど、月曜日のショッピング・センターには閑古鳥が鳴いていたので、それも出来ず。
仕方なく連れ帰ったリラックマだったが、どうしようね、これ……。
リラックマは大好きなのよ。ただ、こんなに大きい縫い包みを、子供もいない家庭に置いてどうするのかと。
困り果てて部屋の隅に放置して夕食の支度をしていたら、玄関の鍵を開ける音がした。主人の帰宅である。
透明な袋に入ったままのリラックマを引っ掴んで、そのまま廊下にヘッド・スライディングを決めてみた。
先頭にリラックマを立てて、リラックマの手を振って、おかえりなさーいと人形劇をやってみたら、何かがリラックマに飛んで来た。
玄関の鍵であった。
「酷い! リラックマになんて事するの!」
と私が怒ると、
「的当てかと思った〜」
だと。あんまりだ。
夕食を摂りながら経緯を話して、これどうしようかね、と主人に相談すると、えっ別に家に置いておけば?だそうで。
うん、だからさ。邪魔だから。職場の若い女の子とか、最近子供が生まれた人とか、欲しい人がいないか引き取り先を探して来て欲しいと頼んだのに。
風呂上がりの私に、先に寝るね〜と言って来た主人の腕には、リラックマが……!
いつの間にか透明な袋から出しちゃっているし!
「一寸、何勝手に開けてんのよ! オッサン臭くなったら、他所にあげられなくなっちゃうじゃない!」
と私が叱ると、主人は
「えー? 折角縁あってうちに来たんだから、うちの子にしようよ。ね?」
とリラックマと一緒になって首を傾げて来た。
可愛いんですけど……! 何その絶妙な角度!

私は本当は弁当箱が欲しかったのだ。リラックマの弁当箱なら、毎朝の苦痛な弁当作りも少しはテンションが上がるかと。
リラックマの可愛いお弁当箱なんて主人は嫌がるだろうから、彼にむかついた日の翌朝にこれを持たせてやろうウヒヒヒヒなどと目論んでいたのに。
そうか! 弁当箱に外れたのは主人の呪いか!


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