実家の両親と妹が福島の温泉宿に招待されているという話が、愈々現実味を帯びて来た。 私はブレずに、やめときなよーというスタンスなのだが、何故か火の粉がこっちにも。 「是非、上のお嬢さんも一緒に!」 と言われたそうで。 幾ら好意でも無料でも高級温泉宿でも、福島は勘弁して欲しい。 行って観光も食べて応援も個人の自由。だったら断固拒否するのも私の自由だろう。 従って私の返事はNOである。 仲介役の妹が、 「ええー、お姉ちゃんも一緒に行こうよう。何て言って断ればいいの……」 と困っていたので、 「『セシウムさん』とまで言わなくてもいいから、正直に言えばいいじゃん。うちの姉は神経質なので、福島に行って福島産の食べ物を食べたくないと言っていますって。大体4号機が危ないって言われている中、何があるかわからんのに、わざわざ福島原発に近付くなんて狂気の沙汰だぜ」 と言ってやった。 「4号機ねー、そうだよね。お母さんも、こないだの竜巻が福島じゃなくて良かったわねえって」 原発の脅威は地震と津波だけではない。先日の竜巻だって、福島で発生していたかも知れないのだ。そしてこれからも、未だに危機を脱していない4号機の近くでそれが起こらないという保障は全く無い。 いつ何が起こるかわからないし、君子危うきに近寄らずというではないか。 だから我々凡人は殊更危うきに近寄るべきではないのだ。 「そういう訳で、私は行かないからな!」 私がそう声高らかに宣言すると、妹は 「わかったよ。お義兄さんのお仕事が忙しくて無理って事にしとくよ」 と受話器の向こうでしょぼしょぼ言っていた。 どうしても嘘吐かなきゃならんのかね、そこは。
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