実は今回の旅行、出立前はなかなかテンションが上がらなかった。 荷造りするのも出掛けるのも面倒臭くて、近隣の高級温泉旅館にすれば良かったなあと、ずっとグズグズしていた。 勿論、折角主人が休みを取って予約してくれた旅行なので、彼にはそんな事は言わなかったが。 でも、出掛けてみれば楽しかった。帰って来てからガイドブックを見て、嗚呼あそこもここも行けば良かったと思うぐらい。 普通に考えれば、ガイドブックは出かける前にテンションを高めるために見るべきものだろうが、開く気力すら湧かなかったのだ。
帰って来てから、旅行中に主人の希望で撮り溜めた、NHKの「BS洋楽グラフィティー80's」を鑑賞している。 ロックで育っただけあって、イントロを聴いただけで、誰々の何て曲だと言い当てる。 そればかりか、一緒に口ずさんだりしているし。 「流石にもう歳だなあ、高音が出ないや。昔は歌えたのに」 と、ぼやく主人。 「いや、充分凄いよ。よくご存知ねえ。流石、元ロック少年」 私がそう絶賛すると、主人が謙遜して言った。 「いやいや、シオンの方が凄いよ。『クリミナル・マインド』とか観ていても、名前を聞いただけで、いつどこで何人殺したシリアル・キラーだってわかるじゃん。僕なんて全然知らないもん、殺人鬼の名前なんて。凄いよシオン。流石、元連続殺人犯!」
殺った事なんて無いよ!!
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