終の棲家を探すため、不動産検索サイト巡りが日課の1つになっている。 一寸高いけれど、この中古マンションなんてどうよと主人に訊いたら、 「そこからだと山が見えないんだよね」 所謂何々富士という類の、昔はその土地で信仰の対象になっていたような大きな山の事である。 主人はこの山が好きで、以前そこに住んでいた時も、山を見ながら通勤するのがお気に入りだったのだ。 「山が好き」と言うと普通は登る事だと思うが、彼にとっては勿論、山とは見るものであり、登りたいとは全く思っていない。 「それに、マンションに2千万以上も出したくないなあ」 だそうで。 幾ら田舎でも、2千万を切るマンションは中古しかない。 新築なんてとても無理と言う事ね……。
じゃあこれはどうだ!と次に私が出したのは、売り地である。 少し前に見に行った所の近くで立地は良し、今度は道路挟んだ西側に建物は無い様子で、見晴らしも悪くない筈なのに、広さの割りに良心的な価格設定。 どんなんだろうね、とグーグル地図を開いたら、表通りでもないのに今ではストリート・ビューが出来るらしい。おお、これは便利! わくわくしながらぐるりと振り返ると、道路を挟んだ向こうにあったのは、
墓地。
ああ、それでお手頃価格なのか……と納得が行ったのだった。 霊感の強い人間が住むには向かない場所なので、諦めた。
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