就寝時、布団の中で主人と話をしていた。 この週末は2日とも仕事で潰れたが、次の週末は買い物に行けるのかとか、その次の週末の連休は確実に休めるのかとか、そういう事だったと思うが、私が話している途中で彼は急にプイと向こうを向き、そのまま固まってしまった。 「……何よ一体、人の話の途中でそっぽ向くなんて、随分と失礼じゃないの」 と少々気分を害して咎めると、彼はこう言った。 「今、何か聞こえた」 「どこで?」 風呂場の水が滴り落ちる音だったら、水道の栓を確認して来なければならないと思ったが、そうではないらしい。 「耳元で」 と言うではないか。 嫌な予感がした。 えーとえーと、それはもしかして。
「確かに聞こえた。『きいてきいて』って、子供の声だった」
いやああああぁぁぁやめてえええええぇぇぇ 「前に聞いた時は、この近所には色々とうろうろしているけれど、家の中には居ないって言ったじゃないのっ。何で家の中に居るのよっ」 「そんな事言われても……」 実体が無いのだから、目張りをしたところでお構い無しに這入って来るのだろうが、ヤスデとは別次元の怖さである。 「このままじゃ怖くて眠れないから、お香焚いてよっ。伽羅でも沈香でも何でもいいから!」 と言って、ナントカというお香を焚いて貰った。 「私は信じるけれどさ、声が聞こえるなんて他の人に言ったら、キ印扱いされるわよ。そんな事が知れたら絶対に精神科の受診を勧められるから、私の実家には黙っててあげるわね」 すっかり目が覚めてしまったので、ぷりぷりしながらそう私が言うと、返す刀でこう来たもんだ。
「僕も、シオンがADHDだって事は黙っててあげるよ!」
くそう、そう来たかー! 「『知らなかったの、お姉ちゃんだけだって〜』ってドビーちゃん(妹)は言うだろうな。お義母さんは『シンタさん(仮名)ごめんなさいねえ』で、お義父さんは『うん、まあそうだな』って言いそう。どう? こんな感じでしょ?」 い、言いそう……!
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