天上天下唯我独尊

2011年05月12日(木) 記憶の景色

最近何故か思い出す風景がある。
夏の終わりか秋の初めの、よく晴れた日。
煉瓦色の広い駐車場の中に、他の車は殆ど無い。
車から降りて、林を抜けて、海を見た。
両側には土地がせり出していて、海は狭かった。

あれはどこだったのか。
気になって、主人に訊いてみた。
「ああ、あそこか。一緒に行ったよね」
主人が口にしたのは、津波の被災地だった。
「そこには泊まらなかったけれど、近くに有名なホテルがあって、駐車場の隣が道の駅だったろ」
主人は道の駅が大好きだ。
じゃあ道の駅に寄る序でに、林に立ち寄ったのか。
駐車場から海に向かって右手に道の駅があったかと訊くと、確かそうだと答えが返って来た。

防風林の木は、全て流されたという。
知り合いも、そこで流された。

私達が見たあの景色は、もう無いのだ。
そう思うと、なんかしょんぼりした。


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