最近何故か思い出す風景がある。 夏の終わりか秋の初めの、よく晴れた日。 煉瓦色の広い駐車場の中に、他の車は殆ど無い。 車から降りて、林を抜けて、海を見た。 両側には土地がせり出していて、海は狭かった。
あれはどこだったのか。 気になって、主人に訊いてみた。 「ああ、あそこか。一緒に行ったよね」 主人が口にしたのは、津波の被災地だった。 「そこには泊まらなかったけれど、近くに有名なホテルがあって、駐車場の隣が道の駅だったろ」 主人は道の駅が大好きだ。 じゃあ道の駅に寄る序でに、林に立ち寄ったのか。 駐車場から海に向かって右手に道の駅があったかと訊くと、確かそうだと答えが返って来た。
防風林の木は、全て流されたという。 知り合いも、そこで流された。
私達が見たあの景色は、もう無いのだ。 そう思うと、なんかしょんぼりした。
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