時々お香を焚く。 昼間に居間で焚いてリラックスするのも良いなあと思っているのだが、食事する場所でもあるため、食べる時にお香の匂いがするのは嫌だと主人が言うので、大抵焚くのは寝室だ。 今日は風呂から上がったら、お香の匂いがした。主人が焚いてくれたらしい。 あっ、そう言えば。 一昨日私も焚いたんだっけ。 しかし今思い返すと、入浴前に焚いたのに、あの後お香の匂いを嗅いだ覚えが無い。
何故だ?
居間に入って、主人に訊いてみた。 「ねえ、お香焚いてくれたの? 私も一昨日焚いた筈なんだけれど、」 「今日焚いたお香がそれだよ」 ヤレヤレという口調で主人が言う。 「まーたちゃんと火を着けないでおいたんでしょ。端っこがちょこっと黒く焦げただけで、燃えてなかったよ。シオンってば、やってくれるよねー」 「違う! 違うよ! ちゃんと火が着いたの確認したもん! それからふって火を消して、大丈夫だなー匂いもするよなと見てからお風呂に入ったんだもん!」 と抗議したところで、事実火は消えていた訳だが。 「ハッ、まさか貴方、私がお風呂に入るのを見計らって、わざと消したんじゃ……」 「態々そんな事するかー!」 そうだよね、幾ら何でもそんな妻を陥れるような事はしないよなあ。 くそー、でも悔しい。
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